ドアーフのドンガ①
第一惑星を人が住める様にした俺は、転移門を使い、屋敷の部屋に戻った。
そして、ソファーの上でだらけながら、あれこれ考える。
そう言えば、軍艦に関しては問題無い。
俺の婚約祝いとして皇帝陛下から、現在の帝国軍の主力級の造船設備を貰うからだ。
既に設備の移転が始まっていると、バイオレットから報告があった。
でも、民間船はどうだ?
造船設備も無ければ技術者もいない。
現在、土星に物流センターを建設中だ。
惑星を丸ごと物流センターにする。
でも、せっかく物流センターを建設しても、輸送する船が無ければ意味が無いんじゃ無いか?
もし、何処かの貴族から圧力が掛かり、船会社から輸送を拒否されたら物流センターを開設する意味が無い。
特に注意するべきは、ゲルハルトとアドルフの2人だ。
彼奴から、既に嫌がらせをされた。
よし、民間の宇宙船を建造する、造船会社を買収しよう!
それから、自前の船会社を設立するのもありだな!
土星の物流センターがオープンしたら、大量の荷物が集まるハズだ。
フル稼動したら、船が足りなくなるかも知れないし…
でも、総ての荷物を俺が独占するのは駄目だ。
貴族の御用商人達や、貴族達から息の掛かった船会社もある。
だから、彼らにも仕事を回さなければならない。
下手をすると、貴族達を敵に回しかねない。
彼奴らは、すぐに人の足を引っ張ろうとする。
それに、いちいち相手にするのは面倒だ。
貴族達の息が掛かった船会社を使ってやれば、恩にきる貴族もいるだろう。
共存共栄が貴族達と上手く付き合うコツだ。
よし!
民間の造船会社を買い、造船分野に進出しよう!
そして、船会社を設立して、土星の物流センターと、首都星の宇宙港との間をピストン輸送させよう!
「バイオレット!」
俺が呼ぶと、バイオレットはすぐに現れる。
「民間の造船会社を購入したい。そうだな~技術力はあるに、商売としては余り成功していない…みたいな会社があるか?調べてくれるか?」
ここは巨大な帝国だ。
探せば1つや2つはあるだろ。
無ければ、また、考えよう。
「はい!承知しました!」そう言って、バイオレットが部屋から出て行った。
俺は招き猫を取り出す。
「良い出会があります様に!」
そう言って、招き猫の手に触れる。
すると、招き猫の手が、何かを呼び寄せる様に動いた。
★★★★★
数日後、バイオレットがやって来る。
「こちらが買収候補のリストで御座います」そう言って、バイオレットが、俺のタブレットにデータを送信する。
「ギブソンや頭取のポールからの情報を元に、エラに詳しく調査させました!」
俺はタブレットを開き、内容を確認する。
なかなかビンと来る会社が無いな~
うん?
これは…
俺の目に留まったのは、ドアーフが経営する造船会社だった。
社長の名前はドンガ。
騎士爵を賜る貴族だった。
爵位を贈ったのは、3代前の皇帝。
つまり、おれの曾祖父に当たる人物だ。
皇帝から直接爵位を賜った人物か…
俺はエラからの報告を詳しく読む。
…成る程…
ゲルハルト派の新興貴族からの依頼を断り、それが発端となって、圧力が掛かった。
ゲルハルト派の貴族から、目をつけられる事を危惧した船会社が、船の発注をしなくなり、現在、仕事が無いらしい。
船の受注が無く、仕事が無いに、従業員を雇用し続けているそうだ。
社長のドンガは、従業員は家族同様だ!
そう言っているらしい。
ふふふ。
俺はこう言う人間は嫌いじゃ無い。
よし!
ドンガに会ってみるか!
「バイオレット。このドンガと言う騎士爵に会ってみたい。呼んで貰えるか?」
「承知しました!」
★★★★★
暫くすると、バイオレットから報告があった。
「会いたいなら、お前が来い!」だそうだ。
バイオレットが「殺りますか?」と聞いて来た。
俺の答えは当然「殺らない!」だ。
そして、ドンガの希望通り、俺の方から出向く事にした。
ドンガは、帝国首都星から宇宙船で2週間ほど行った所にある、小惑星に居るそうだ。
だから、第一惑星から戦艦ビスマルクを首都星へ呼び寄せた。
首都星からの出国記録が無いのに、ドンガに会ったと知れると、転移門のスキルが知られてしまうかも知れない。
だから仕方なく、首都星の皇室専用港からビスマルクで向かったのだ。
出航後に転移門で屋敷に戻り、屋敷でだらける事も出来るが、船の中でだらけても同じ事に気付いた。
だから、船の中でだらける。
…しかし暇だ。
毎日、ソフィアから通信が入る。
先週は、毎日の様にお茶会に参加していた。
俺の母が主催するお茶会と、エリーゼから誘われて参加したお茶会だ。
今日は、病院へ慰問に行ったとか、明日は炊き出しに行くとか言っている。
よく飽きもせずに行けるものだ。
ソフィアも暇なのかな?
ソフィアには、護衛兼身の回りの世話係としてケイトを付けているから、心配はしていない。
そうこうしていると、やっとドンガの居る小惑星に到着した。
小惑星を改造し、惑星内には巨大な造船ドッグがいくつもあるそうだ。
船が入出航する時以外は、ドッグの出入口が閉じているから、外からは分からない。
ドッグが開き、ビスマルクが入港する。
俺はタラップを降りるが、当然ドンガは居ない。
と言うか…誰も居ない。
どうやら、余り歓迎されていない様だ。
バイオレットが「殺りますか?ここに居る奴らを皆殺しにしますか?」とか聞いて来る。
だから俺の答えは一つ「殺らないよ!」
俺達はタラップを降りて、ドッグを抜ける。
俺はドンガに会う為、通路を進んだ。




