婚約披露パーティーの打ち合わせをする。
季節は夏。
冬になると、首都星に貴族達がやって来る。
皇帝陛下が主催する、晩餐会に参加する為、続々と貴族達が帝国首都星にやって来るのだ。
皇帝陛下から重要事項の発表があったり、帝国に貢献した貴族の表彰が行われたりする。
それが終わると皇帝陛下主催の晩餐会だ。
そして晩餐会が終わると、今度は帝国議会が開かれる。
それらの帝国の行事が終わると、今度は貴族達の社交界がスタートする。
まず、各派閥のパーティーがあり、それが終わると、今度は上位貴族が主催するパーティーだ。
女性達は、パーティーと並行して、昼間はお茶会を開く。
女性達のネットワークを構築し、情報交換や情報の共有。
それと根回しを行うのだ。
貴族家当主には権限がある。
だから、その場で結論を出さないといけない場面もある。
メンツがあるから、後になってから“やっぱり無し”なんて言えない。
そうならない為に、女性達が事前交渉を行ったりする。
貴族家当主は、女性達がお茶に参加している間、帝国と内々の相談をしたり、派閥の会合に出席したりと、この時期の貴族は忙しい。
派閥の重鎮以外は、首都星での社交界シーズンが終わると、自身の領地に戻る。
だから、帝国や他の貴族達との打ち合わせや根回しを、社交界シーズン中に終わらせなければならないのだ。
派閥のパーティーは“俺の派閥はこんなに沢山の貴族が参加してて凄いんだぞー!”と言うのを世間に見せる為のアピールだ。
そして、上位貴族が開催するパーティーも同様。
少しでも多くの貴族を参加させて、自分の家の力をアピールする場だ。
貴族は見栄の世界だからな~
前世で一般人だった俺には、縁遠い世界だ。
今までは未成年を理由に、誘われても不参加だった。
だが今回は、俺とソフィアの婚約が発表される。
だから俺が主催者になり、婚約披露パーティーを開かなくてはならない。
とても面倒だ。
出来る事なら引き込もっていたい。
だが、俺の立場がそれを許さない。
少しでも多くの貴族達を集めて、俺の力を世間に示さなければならないのだ!
実に面倒である。
だが、それをしないと、俺を支えてくれる派閥貴族達が、肩身の狭い思いをさせてしまう。
俺は今まで、西の宮殿に引き込もっていた。
だから、知り合いも数える程しかいない。
本当に集まるのだろうか?
当然、俺は部下達に丸投げである。
外務長官マーガレット。
秘書のバイオレット。
それから、執事のクレストン。
それと、商人のノア。
彼等が中心になって、婚約披露パーティーの準備を進めている。
★★★★★
「チェスター様。それでは婚約披露パーティーの打ち合わせを始めさせて頂きます」
外務長官マーガレットが、今日の司会進行役だ。
いま俺は、俺とソフィアの婚約披露パーティーの参加者名簿を見ている。
…何で?こんなに参加者が多いんだ?
俺は引きこもりで、知り合いなんて、ほとんどいないぞ?
どーなってる?
「マーガレット。何でこんなに参加者が多いんだ?」
「はい。チェスター様。これも全てチェスター様の人徳で御座います!」
…何言ってんだ?
俺はリストの確認をする。
リストには、爵位や出席者の名前。
それから、何処の派閥に属しているか?
下級貴族の場合は、寄親はだれか?
様々な情報が記載されている。
ハルベルト派の貴族の名前がずら~っと記載されていた。
「マーガレット。ハルベルト兄上の派閥から、こんなに大勢参加するのか?」
「はい。ハルベルト様の婚約者エリーゼ様が、出席する様、派閥貴族に働き掛けた様です。恐らくハルベルト様とチェスター様が友好関係だと、アピールしたいのだと思われます」
やはり、裏工作したのは、エリーゼだった。
「それから…何で?中立派の貴族が、こんなに参加するんだ?」
ハルベルト派は、まだ分かる。
しかし、中立派の貴族達が、こんなに大勢参加するのはおかしい。
「チェスター様が、土星に物流センターを建設中ですが、土星の月に出店する売店を中立派にも割り当てております。中立派貴族にも、平等に商売をさせるチェスター様に恩を感じているものと思われます」
そう言えば、ゲルハルトとアドルフ派以外の貴族達にも声を掛けて、各貴族領の特産品を販売する売店を出す様に指示していた。
これだけ多くの中立派貴族が参加するなら、きっと月に作る売店も、活気が出そうだな!
後は、俺の派閥貴族か…
「マーガレット。場所は何処でやるんだ?こんなに出席者がいるなら、かなり大きな会場が必要だろう?」
パーティーには、夫婦同伴で行くのがマナーだ。
まだ結婚していない独身の貴族は、婚約者を連れて行く。
ふふふ。
俺に嫌がらせをしてくる、ゲルハルトとアドルフには、まだ婚約者がいない。
だから、不参加と名簿に記載されていた。
派閥トップのゲルハルトとアドルフが不参加だから、当然、派閥貴族達も不参加だ。
ふふふ。
ざまあみろ!
俺の婚約披露パーティーに、嫌がらせをする奴等がいないから、平穏無事に終わりそうで何よりだな!
「はい、チェスター様。西の宮殿にあるパーティー会場では、いささか物足りないかと…」
この宮殿のパーティー会場は、豪華なんだけど、これだけ大人数だと、いささか手狭に感じてしまう…
そうだ!
首都星に購入した土地の開発は、既に終わっている。
宇宙港も完成済みだし、地下の物流センターの工事も終わり、現在は、アドルフから貰った土地の開発が始まったところだ。
「開発が終わった土地に、巨大なドーム型施設があったよな?」
将来、住民達の暮らしが良くなり、暮らしに余裕が出たらレジャー施設が必要になる。
だから巨大なドーム型施設を作らせた。
スポーツ観戦や、コンサート会場として使える様、設計させたドーム型の多目的施設だ。
「はい。既に完成しておりますが、今のところ、イベント等の予定は入っていないと記憶しております」
「よし!それなら、ドーム型施設で婚約披露パーティーを開こうか?あっ!それから、参加する貴族の領地から特産品を取り寄せて、臨時売店をオープンさせるのはどうかな?」
「ドーム型施設の中に、参加貴族の特産品を調理し、その場で飲食させるんだ。大規模な屋台村のイメージか?それとも、食品展示会かな?どうだ。可能か?」
「成る程!とても良いお考えかと。貴族家当主同士が、自領の特産品を紹介し合う。今までに無い、とても面白い企画かと!」
「1日目は貴族家夫妻を招いて俺とソフィアの婚約披露パーティーをして…よし!2日目は、貴族の子供達を招待してやろう!貴族の子供達は、なかなか家の外に出る事はないからな!きっと良い思い出になるハズだ」
「それから、3日~5日迄の3日間は、一般に解放しよう!せっかく作った施設だから、そのお披露目だな!」
「確かに、各貴族家の領地から特産品を取り寄せるのですから、1日で終わらせてしまうのは勿体無いですね!流石はチェスター様です!」
…こいつらは、すぐに俺をおだてて来る。
「一般向けは入場チケットを販売するか…午前と午後の入れ替え制にして、少しでも多くの人に来てもらおう。ああ、それから、ここで取り扱う商品は、月に建設する売店で販売すると、宣伝を忘れるなよ!」
「首都星から客船を運行して、買い物ツアーを企画しても面白いかも知れないな~」
こんな話をしながら、今日の打ち合わせが終わったのだった。




