エミリー賞表彰式①
ハルベルト兄上達と協議した内容に沿って、財団法人を設立した。
出資比率は、俺が80%。
ハルベルト兄上が10%
そして、エミリーの父、モーゼル伯爵が長官を勤める、帝国魔法省が10%となった。
これは、元々、俺が進めていた話だ。
だから、ハルベルト兄上も、俺の顔を立ててくれて、俺の出資比率が一番高くなった。
それから、国も関与させた方が、エミリー賞の権威が上がると言う話になり、帝国からも資金提供を受ける事となった。
ただ、政治家が関与し、財団設立の目的が歪められたら困る。
そこで、調整した結果、帝国の資金比率が10%となったのだ。
将来、ハルベルト兄上が皇帝に即位した場合、兄上が拠出した10%が国に移る。
だから、それらを考えて調整した。
合計で20%なら問題ない。
魔力動力炉関係の特許は、財団が管理する。
特許料収入の一部は、財団に勤めるスタッフ達の給料や、財団の内部留保金としてプールし、エミリー達に続く受賞者が出た場合の賞金として使用する。
それ以外の特許料収入は、すべて発明した本人達に渡す事になった。
ただ一つ…ドンガに渡す特許料だけは、本人には渡さない事になった。
その理由は、ドンガの妻のリンガが「あの人にお金を渡すと、全部酒代になってしまう!だから、止めてくれ~!」と、異議申し立てがあった為だ。
ドンガが経営する造船所の社長はドンガだが、お金の管理は副社長のリンガが行っている。
そこで、ドンガ本人では無く、造船所の口座へ振り込む事にした。
ドンガは、文句を言っていたが「夫婦で話し合って解決しろ!」と言ってやった。
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「次に、名前を呼ばれた者は前へ出よ!」
玉座に皇帝陛下が座り、その横に寄り添う様に立つ、帝国宰相シュターデンの声が響く。
「エミリー・フォン・ファンタジー男爵」
「クレスト公爵家ヴィルヘルム準男爵」
「ドンガ騎士爵」
エミリーは、事前に父のモーゼル伯爵から、男爵位を譲り受け、男爵家当主となっていた。
その時、新たな家を創設する事になる。
新たに家を創設した場合、当然、家名が必要である。
そこでエミリーは「魔法には、夢や希望が詰まっているの!」と言い、家名を“ファンタジー”としたのであった。
帝国法では、新たに家を創設する場合、現在使われている、同じ家名を名乗る事は許されていなかった。
しかし、役人が調べたところ、ファンタジーと言う家名を使っている貴族は、他にはいない。
役人が「本当にファンタジーでよろしいのですか?」と何度聞いても、エミリーは「そうよ!ファンタジーで登録して下さる?」と言う。
そう言われると、役人もファンタジーで登録する他無い。
こうして、エミリー・フォン・ファンタジー男爵となったのであった。
再び宰相の声が響く。
「エミリー・フォン・ファンタジー男爵。貴殿は、魔法学の発展に大いなる貢献をした。よって、子爵位へ陞爵するものとする!」
「今後も日々精進し、魔法学。付いては帝国へ貢献する事を誓います!」
こうして、エミリーは子爵に陞爵した。
そして、共同研究者のヴィルヘルムとドンガも男爵位を授かった。
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ここは首都星にある、ワグナー公爵家の屋敷。
季節の花が咲き揃い、良く手入れされた庭園で、3人の人物がお茶を飲んでいた。
「エミリー様。受賞、並びに陞爵おめでとう御座います!」
「ソフィア様。エヴァ様。ありがとう御座いますわ!」
そう。
いま、ここに居るのは、ソフィア・エミリー・エヴァの3名であった。
今日は、エミリーのお祝いを兼ねた、お茶会だった。
「それにしても、エミリー様は凄いですわ!既に子爵家ご当主だなんて!」
「そんな事、御座いませんわ!これも総て、チェスター殿下のお力添えの賜物です。私に研究資金だけでは無く、研究施設や助手までご用意して下さったのですから!」
自身の婚約者、チェスターを誉められ、ソフィアが笑みを浮かべる。
「まあ、ソフィア様。お顔がニヤ付いておりますわよ!」
「もう!からかわないで下さい。エヴァ様!」
そして、ソフィアが「そう言えばエヴァ様。婚約が決まったとお聞きしましてよ!?」
そう言われたエヴァが、顔を赤く染める。
「お相手は、どなたですの?」とエミリーが問いただす。
するとエヴァが「シュナイダー伯爵家次男のカール様で御座います」と答えた。
シュナイダー伯爵家は、チェスターの祖母の実家である。
エヴァの父ブラウン侯爵は、中立派から、チェスター派へと派閥替えをした。
そして、ブラウン侯爵は、チェスター派との関係強化を考えた。
しかし、上位貴族の跡取り達は皆、既に婚約者が決まっていた。
そこで、目を付けたのがシュナイダー伯爵家次男のカールであった。
跡継ぎでは無いカールには、婚約者がいなかったのだ。
シュナイダー家は、チェスターの祖母の実家で、チェスターと縁続きである。
そこで、ブラウン侯爵は、シュナイダー家に対して、自身の娘エヴァと、シュナイダー家次男カールとの婚約を打診したのであった。
しかし、カールは伯爵家の跡取りでは無い。
成人すれば、準男爵である。
上位貴族である侯爵家の娘が、下級貴族家に嫁ぐ事は、普通ではあり得ない。
これは、貴族政治が優先された結果であった。
ブラウン侯爵家から婚約の打診を受けたシュナイダー伯爵家は判断に困った。
今さら嫡男を廃嫡にする訳にも行かない。
そこで、ソフィアの父ワグナー公爵に相談した。
相談を受けたワグナー公爵は、跡取りが不慮の事故で命を落とし、分家の中から養子を取ろうか?と、悩んでいたライバック子爵家に、シュナイダー伯爵家次男カールの養子入りを打診した。
ライバック家は、新帝国建国に貢献した家柄である。
歴代皇帝からは、戦争の際“先陣”を任される程の武門の名門として知られる家柄であった。
それゆえ、軍備の質と維持には常に気を配り、兵士達も高い練度を維持していた。
海賊討伐も積極的に参加し、帝国への貢献を認めた先代皇帝が、男爵から子爵へ陞爵させた家であった。
ワグナー公爵と同行した、チェスター配下のマーガレットは、まだ、機密だった魔力動力炉の話を内々にライバック子爵に伝えた。
燃料費が節約出来るだけで無く、軍艦に物理攻撃耐性の魔法を付与すれば、艦の防御力が飛躍的に向上する旨を…
これを聞いたライバック子爵は思案する。
自他共に認める“武の名門”である。
是非とも手に入れたいと考えても不思議では無い。
また、チェスター派が、帝国辺境軍を交えて、合同軍事演習を行っている事も耳にしていた。
戦争時に、ライバック家が先陣を切り、敵艦隊に斬り込んだとしても、他の艦隊と連携が取れていなければ、各個撃破されるだけである。
いち早く最新技術を手に入れ、更に合同軍事演習に参加し、艦隊の連携を深めるには、チェスター派重鎮に恩を売るのが一番である。
こうして、ライバック子爵は、カールを養子として迎える決断をしたのであった。
これは、当然、チェスターの派閥入りを意味していた。
これが、ブラウン侯爵家令嬢エヴァと、シュナイダー伯爵家次男カールとの婚約が決まった経緯である。
これにより、カールはライバック子爵家の養子となり、エヴァはその婚約者となった。
ソフィアはチェスターの婚約者である。
そしてエヴァは、チェスターの祖母の実家シュナイダー伯爵家次男で、ライバック子爵家の養子となったカールの婚約者となった。
エミリーはチェスターの寄子の子爵家当主である。
この3人は、同じチェスター派の上位貴族家の令嬢であり、また、年齢も同じであった。
帝国学園、帝国大学で同級生となるこの3人は、生涯の友となるのであった。




