エミリー賞表彰式②
今日は、俺が中心となって設立した、エミリー賞の表彰式の日である。
会場は、首都星の俺の領地内にある、巨大なドーム施設だ。
俺とソフィアの婚約式を行った会場でもある。
数日前から、情報担当のミアが、随分張り切っていた。
今日の受賞式は、テレビ中継されるそうだ。
ほっておくとミアは、俺ばかり目立たせ様とする。
だから「今回の主役は、受賞者達だ!それを間違えるなよ!」と、事前に釘を刺しておいた。
「チェスター様!分かっております!それでは、事前の打ち合わせを行います!」と言い、ステージでは、ここに立てとか、この方向からライトが当たるから、顔の向きはこうだ!とか、いろいろとリハーサルをさせられる。
あいつは、本当に分かってるのだろうか?
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エミリー賞の受賞式が始まった。
司会進行役は、外務長官のマーガレットだ。
受賞者3名がステージの上に登場すると、大きな拍手が沸き起こる。
これも、ミアの指図だろうか?と勘ぐってしまう。
一番の功労者、エミリーの前に、ハルベルト兄上が立ち、首にメダルを掛ける。
次に、兄上の婚約者エリーゼが、エミリーに目録を渡す。
残りの2名には、俺がメダル。
そして、ソフィアが目録を渡す。
帝国からの出席者は、魔法省長官のモーゼル伯爵だ。
つまり、エミリーの父である。
娘が成功を修めた事が余程嬉しかった様で、時よりハンカチを目に当てていた。
帝国大学魔法学教授のクレスト公爵の席は、モーゼル伯爵の隣だ。
子供どうしを婚約させるくらい仲が良い。
クレスト公爵も、実子のヴィルヘルムが表彰された時、嬉しそうに微笑んでいた。
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巨大なドーム内で、パーティーが始まった。
兄上とエリーゼ嬢が、腕を組んで会場内を歩く。
俺とソフィアも同じ様に、腕を組んで兄上達の後ろを歩く。
こうすれば、皆が俺より兄上の方が立場が上だと、分かり易く示す事が出来る。
ふふふ。
俺は目立ちたくない。
こうしておけば、兄上達をスルーして、俺に話掛けて来る奴は居ないだろ。
招待客は、まず、兄上に挨拶に行く。
そして、次に俺のところに来る。
俺は必死に兄上達から、引き離されない様に努力した!
しかし、駄目だった…
皆が必死に特許関係の事を聞いてくる。
無視する分けにも行かない。
そうして、受け答えをしているうちに、どんどん兄上達から距離が離れて行った。
気付いた時には、周りを取り囲まれていた。
それを見た、秘書バイオレットや、執事のクレストンが、客と俺達を引き離すのだった。
なあ、ガブさん。
あいつらは、何だったんだ?
《あれは、大商人達です。彼らの物資を運ぶ輸送船に、魔力動力炉を設置すれば、輸送費が大幅に下がります。また、マスターが建設した土星の物流センターを活用する事で、彼らの経費削減に役立っており、そのお礼を兼ねてマスターと友好関係を築きたいのだと思います》
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兄上が足を止め、軍服を着た集団と話していて、何とか追い付く。
兄上が後ろを振り向く。
そして「チェスター。こっちに来てくれ。紹介したい」
俺は兄上と合流する。
そして、兄上が紹介する。
「こちらが、帝国軍 軍務長官ガイスラー元帥。そして、こちらが、統合作戦本部長カウピッシュ元帥だ」
「お初にお目に掛かります。私はガイスラーと申します」
「私はカウピッシュ。ガイスラー同様に、皇帝陛下より元帥位を賜っております。どうぞお見知り置き下さい」
「初めまして。私は第4皇子のチェスターだ。そしてこちらが、私の婚約者ソフィア嬢だ。よろしく頼む」
そして暫くこの場に留まり、世間話をしていると、カウピッシュ元帥が「ところでチェスター殿下。何か?お困りの事は御座いますか?」と、俺に聞いてきた。
なあ、ガブさん。
彼は何を言いたいんだ?
《魔力動力炉の件だと推測します。帝国は長い間、財政不足の為、軍事費が削減されていました。軍隊では、戦艦等の正面装備や、それ以外に、兵士達の給料や食糧。練度を維持する為、演習を行うのには莫大な燃料が必要です。帝国軍の軍艦に魔力動力炉を設置すれば、燃料を大幅に削減する事が可能です。そこで、マスターに恩を売り、魔力動力炉の導入を少しでも早めたいのだと推測します》
成る程。
そう言う事か…
よし!
それなら「実は、私の私兵軍は年2回、辺境軍と合同軍事演習をされて頂いているのですよ…司令官は…確か、メイヤー大将だったかな?」と、わざとらしく言う。
メイヤー大将は、昔からチェスターを支える、メイヤー伯爵の弟である。
家を継げない彼は、帝国軍に入隊していた。
その事をまるで知らない様に、チェスターが話を進める。
「初めの頃は、私の私兵軍も数が少なく、良い訓練相手になってくれていて、大変助かったんですよ~でも最近は、私の私兵の艦艇が随分と増えましてね~大将指揮下の艦隊では、いささか数的にバランスが悪くなって来たので、新たな訓練相手を探そうか?と思ってるんですよ~」
「そうで御座いましたか…軍の予算も増加傾向。辺境地域へ派遣出来る艦艇も増えて行く事でしような~」
「辺境は、いまだに海賊達の活動も活発。帝国辺境艦隊が増えれば、きっと皆が喜ぶ事でしよう!」
つまり、こう言う事だ。
帝国軍1個艦隊の指揮官は中将。
その上官で4個艦隊を指揮するのが大将。
メイヤー大将は、4個艦隊(6万隻)を指揮している。
4名の大将を指揮する上官は、上級大将だ。
つまり、上級大将は、16個艦隊を指揮する司令官と言う事。
チェスターは遠回しに、メイヤーを“上級大将への昇進させ、指揮下の艦隊数を増やせ”と依頼したのである。
因みに、上級大将より上の階級は元帥である。
この会話の翌年、帝国軍定期異同で、メイヤー大将は、上級大将へ昇進する事になる。
帝国軍上層部が、チェスターへ忖度した結果であった。




