エミリー賞
エミリー達が、魔力動力炉と言う、画期的な発明をした。
この世界に、無限に存在する“魔力”を燃料として使う、世紀の大発明だ。
何が凄いかと言うと、燃料代が掛からず、しかも公害も発生しない。
何て素晴らしいんだ!!
そこで俺は、エミリーとの約束の“エミリー賞”を創設し、第1回目の受賞者として、エミリーを表彰する事にした。
これには別の意味もある。
特許の件だ。
上位の貴族達が、エミリー達が得る、特許料収入に目を付け、群がって来る事が予想される。
だから俺は、大々的に国民達の前で表彰し、そして特許の管理を“エミリー賞財団”に行わせる事を考えている。
俺が設立する“エミリー賞財団”の管理は…法務長官のエリンにやらせるか?
ガブさん。
どう思う?
《適任であると判断します。また、財団法人の理事には、ハルベルトを加える事を提案します》
ハルベルト兄上?
《はい。魔力動力炉は、画期的な発明です。貴族達が、マスターが権利を独占していると考え、マスターに対して、妬みや僻みの感情を抱く可能性が高いと判断します》
成る程…それで、ハルベルト兄上を巻き込む訳か。
《それ以外にも、マスターの思惑通りにハルベルトが次期皇帝に即位した場合“エミリー賞”の権威が増大します》
分かった!
じゃあ、その方針で進めるか!
俺は、法務長官のエリンと、外務長官のマーガレットを呼び出し、指示をした。
★★★★★
「ハルベルト兄上。エリーゼ嬢。本日は足をお運び頂きありがとう御座います」
「気にしないでくれチェスター。“唯一の弟“からのお茶会のお誘いだ。足を運んで当然だろう?」
「ソフィア嬢も、ご無沙汰だったね!元気そうで何よりだ」
「はい!ありがとう御座います。ハルベルト殿下」
「エリーゼとは、良くお茶を飲むらしいね?」
「はい。エリーゼ様には、お茶会にお誘い頂き、大変良くして頂いております!」
「そうか、それは良かった!」
「ハルベルト様。ソフィア様は、他のご令嬢からとても人気がありますの…将来この様な可愛いらしい妹が出来て、私も嬉しいですわ!」
今日のお茶会の会場は、俺が首都星で始めて購入し、開発を行った場所に建設した屋敷の庭だ。
ハルベルト兄上が「ここへ来る道すがら思ったんだが…ここが元貧民街だとはとても思えない。良く頑張ったね~チェスター!」
「はい、兄上。お褒め頂き有り難く思います」
執事のクレストンが、お茶請けを持って来て、テーブルに並べる。
そして、お茶を入れて終わると席を外す。
ハルベルト兄上が「それで、チェスター。そろそろ本題に入ろうか?今回の用向きは何だい?」
そこで俺は説明を始めた。
「実は、私が資金提供を行い、クレスト公爵家のヴィルヘルム殿。それから帝国魔法省モーゼル伯爵家令嬢で、ヴィルヘルム殿の婚約者エミリー嬢。更に私の寄子で騎士爵のドンガの3名が、魔力動力炉を発明したのです」
「魔力動力炉?」
「はい。ご存知かも知れませんが、この世界には魔力が溢れています。その無限にある魔力を使った動力炉です。この動力炉を使えば、魔力だけで船を動かしたり、発電を行う事が可能です。しかも、公害も発生しない、夢の様な動力炉なのです!」
「凄いじゃないか!チェスター!」
「はい。兄上。ただ、私は危惧している事があるのです」
一緒に話を聞いていたエリーゼが「成る程…チェスター殿下は、特許権を持つ彼ら3名に、貴族達が群がり、権利を害するのではないか?と心配していらっしゃるのですね?」
「はい。その通りです。エリーゼ嬢」
「それで、私にどうして欲しいんだ?チェスター」とハルベルト兄上が聞いて来る。
「今回の発明に多大なる貢献をした、エミリー嬢に敬意を払い”エミリー賞”と言う物を創設したいと考えております。そして、財団法人を設立して、特許は財団が管理し、財団から当事者に支払う形を考えております」
「兄上には、是非、私と共に、共同設立者になって頂きたいのです!」
「何もしていない私が、共同設立者に名を列ねて良いのかい?」
「はい。私としても、その方が有り難いのです。将来、兄上が皇帝陛下に即位した時、より一層、賞の格が上がりますし、横から口出しする者も居なくなるでしょうから…きちんと内容を精査し、貢献した者を表彰する仕組みを作りたいのです」
「成る程…エリーゼは、どう思う?」
「はい。ハルベルト様。私もチェスター殿下のお考えに賛成で御座いますわ!…ところで、財団を設立すると仰っていましたが…財団設立資金は、どうなさるのですか?」
「はい。エリーゼ嬢。そちらに関しては、私の方で工面しようと考えてます」
「それは行けませんわ!チェスター殿下。ハルベルト様も共に資金を出すべきですわ!」
…くそー。
エリーゼめ!余計な事を…
兄上から資金提供を受けたら、俺の一存で決められなくなるじゃないか!
「分かったよ!エリーゼが言うなら、私も設立資金を提供しよう!」とハルベルト兄上が言う。
くそー!エリーゼめ!
…まあ、話の流れでこうなった以上は、仕方ないか…
ここで議論して、話が進まなくなる方が困る。
兄上も忙しいから、次は何時会えるか分からないしな~。
仕方ないか「兄上。よろしくお願い致します!」
「ああ、任せてくれ!チェスター」
ここでまた、エリーゼが口出しして来る。
「ところで、チェスター殿下。今回表彰する3名の爵位はどうなっておりますの?帝国に多大な貢献を果たしたのです。陞爵も考えてませんとなりませんでしょう?」
「はい。エリーゼ嬢。まずエミリー嬢ですが、父モーゼル伯爵が有する男爵位を譲り受け男爵家当主になる予定です。それから婚約者のヴィルヘルム殿は、その男爵家に婿養子に入ります。ドンガは、私の寄子の騎士爵です」
「そう…ならまず大至急、モーゼル伯爵から、エミリー様に男爵位を譲って貰いましょう!その上でエミリー様には、男爵から子爵位に陞爵出来る様、根回しを行うのですわ!それからヴィルヘルム様は、家を継げない様なので準男爵。ですから、ヴィルヘルム様とドンガ様は、男爵位へ陞爵させるのは如何でしようか?」
「おお!エリーゼ。名案だ!帝国に多大な貢献をすれば、帝国はそれに報いると知れれば、エミリー嬢達に続く人物が現れるかも知れない」
こうして“エミリー賞”の設立と、その運用方法。
受賞者への待遇等を話しあった。




