魔力動力炉。
俺は今、本星から首都星にある屋敷に帰る途中である。
それも軍艦に乗っての移動である。
転移門を開けば一瞬で戻れる。
だが、今回は転移門を使わなかった。
いや、より正確に言うなら、使えなかったのだ!
俺の誕生会を本星で行った。
そのパーティーには、当然、婚約者のソフィアも参加してた。
二人で腕を組み、パーティー会場を歩き、参加者に挨拶をした。
そのソフィアが、一足先に本星を出発したのだ。
もし、ここで俺が転移門を開き、俺が首都星に帰ってしまうと、先に出発したソフィアを追い抜いてしまう事になる。
ソフィアには、俺の特殊能力を教えていない。
ガブさんが《誰にも教えない方が良い》と言うからだ。
だから俺は、仕方なく戦艦ビスマルクで向かう事になったのだ。
まあ、良いか…
どうせ、だらけているだけだし…
★★★★★
俺が首都星の屋敷へ向かう途中、第1惑星に立ち寄った。
屋敷で朝食を取っていると、何だか外が騒がしくなる。
「チェスター殿下は、今食事中です!食事が終わりましたらお呼びしますので、応接室でお待ち下さい!」
「私は急いでいるの!そこを退きなさい!」
誰かが俺を訪ねて来たみたいだ。
誰だ?
女性の声だったが…
俺は友達が少ない。
しかも、ここは首都星でも無い。
こんな場所まで、来るなんて…
ひょっとして、俺に苦情を言いに来たのか?
そんな事を考えていると、ガチャン!とドアが開く。
ドアを開けた女性と目が合う。
「チェスター君!ついにやったの!!」
俺が資金を提供し、魔法研究を行っている、エミリーだった。
★★★★★
朝食を食べ終わった俺は、応接室へ移動する。
中に入ると、エミリーと、その婚約者で一緒に研究をしているヴィルヘルム。
それから、実際に現物を作り、試験を担当しているドンガ。
それと、何故か?先に出発したソフィアが俺を待っていた。
「それで、話って何だ?」
「チェスター君!聞いて驚け!!何と…魔力動力炉が完成したの!!」
「本当か?凄いじゃないか!」
まさか、本当に完成させるとは、思っていなかった。
ドンガが「まだ、多少の改良の余地はあるがな」と言うと、エミリーが「ドンガは細かいところまで、拘り過ぎなのよ!」と言う。
ヴィルヘルムが「チェスター。これは画期的な発明だ!宇宙に無数に漂う魔力をエネルギーとして動力を得るんだ!」
この世界には、魔力がある。
地上はもとより、宇宙にも魔力が漂い、まるで川の様に流れている。
問題は、魔力の濃い場所と、ほとんど魔力か存在しない場所がある事だ。
魔力は溜める事が出来ない。
だが、魔物は魔石と言う形で魔力を体内に溜め込む。
だから、魔力の濃い場所で、魔石にして溜め込み、魔力の少ない場所では、魔石を動力炉のエネルギーとして使えないか?と、アイデアを俺が出した。
そして、その資金と研究施設を提供したのだった。
「それで、もう少し詳しく教えてくれる?」
すると、エミリーが話し出す「まず、魔力が濃い場所で、魔力を魔石と言う形で貯蔵する事に成功したの。そして、魔力の少ない場所では魔石を使い補いたい。でも魔石のままでは使えない。そこで研究の結果、魔石に高い圧力を掛けると液体になる事が分かったわけ!」
「成る程。液体にして、それを動力炉の燃料として使う事か?」
「流石はチェスター君!その通り。液体にして、魔法陣を書いた炉に入れるって訳よ!」
ヴィルヘルムが補足する「動力炉は複雑な作りだ。魔法陣も、いろいろな場所に、複数設置する必要がある。それに魔力が大量に必要な場所もあれば、少しで良い場所もある。だから液体じゃないと、細かい制御が出来ず、上手く機能しないんだ」
「そうか!良くやってくれたな!」
「チェスターよ!魔力動力炉は、補助エンジンに使用するのが良いと思うぞ。一定の出力を出し続けるには向いておる。だが、ワープ航法時に急加速したり、戦闘時にビーム砲を何発も発射し、シールドを張ったり…一度に大量のエネルギーが必要な場面では、核融合炉の方が向いておる」
「成る程…つまり、メインエンジンは、今まで通りに核融合炉を使い、補助エンジンは魔力炉を使う訳だな?」
「うむ。その通りじゃ。それから、お前さんのアイデアで軍艦に設置した魔法陣じゃが…」
「ああ、物理攻撃耐性と魔法攻撃耐性の魔法陣の事か?」
「うむ。そうじゃ。魔力炉から魔力を魔法陣に繋げれば、魔力の薄い場所でも効力が落ちんようだ」
「おー!それは良い!船の防御力が高まるな!」
「ビームシールドに物理攻撃耐性の魔法陣。恐らく、よほどの至近距離から主砲の直撃が当たらぬ限り、沈没はせんだろう!」
「そうか!戦死者が減るのか!最高じゃないか!!」
兵士が戦死すると、その穴を埋める為、新兵を募集し訓練する。
一人前になる迄には、金も時間も掛かる。
それに、残った遺族の生活の面倒も見ないといけない。
だから、戦死者を減らせれば、それに越したことは無い。
「ドンガ!軍艦に魔力炉の搭載はいつ頃、可能になるんだ?」
「うむ…後2年くれ。積むだけなら可能だが、今ある軍艦の補助エンジンを交換するには、スペースの問題もある。2年以内に何とかしてみせる」
「分かった。ドンガ。頼んだぞ!」
「うむ。任せておけ!」
よし!
魔力炉が普及すれば、燃料も節約出来るし、最高だな!
これで話は終わりかと思っていたら…
「ねえ!チェスター君…例の約束…覚えてるよね?」
例の約束?
何の事だ?
《マスター。エミリー賞の事では無いでしようか?》
ああ、あれか…
完全に忘れてたよ~
「エミリー賞の事だろう?当然、覚えてるよ~当たり前じゃないか!」
「チェスター君!覚えていてくれたのねー!じゃあ、よろしくね!」
「おっお~任せろ!俺は約束を守る男だからな!」
この後、ドンガは早速、図面作成の為、自分の工場へ戻ると言う。
仲間達と議論したいそうだ。
だから、第2惑星で大量に収穫した、ジャガイモで造った、アクアピットと言う酒を持たせた。
そして俺は、夕食会を開き、エミリーとヴィルヘルムを持て成したのだった。
当然、ソフィアも一緒である。




