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フォルクス侯爵は面目を失う。

今年もまた、冬が到来した。


皇帝陛下主催の晩餐会が終わり、帝国議会が開催された。


「議長!発言を宜しいでしようか?」


議長とは、司会進行役の帝国宰相シュターデン侯爵に事である。


「フォルクス侯爵。発言を許可する」


「議長!感謝致します。私は、いま、大変憂慮しております。それは、皇帝陛下のお膝元、この帝国首都星の公共施設を一部の者が独占していると言う事実で御座います」


「帝国の中枢足るこの首都星の公共施設を独占する。これは、とても危険極まり無い事です!そこで私は、私と共通認識を持つ、貴族達と議論を重ね、今般、公共施設の独占を禁止する法案を提出する事と致しました。付きましては、是非とも審議を願いたく」


そう言って、フォルクス侯爵は、法律案を記載した書面を議長に手渡した。


法律案は、直ちに職員達の手によって巨大なスクリーンに投影された。


法案の起案者である、フォルクス侯爵を始め、共同提案者に名を連ねる貴族達が、入れ替わり、立ち替わり、いかに公共施設の独占が危険なのかを皆に訴える。


しかし、ハルベルト派やチェスター派。


更には、中立派の貴族達は、何の反論もせず、黙って聞いているのであった。


この状況を見たゲルハルト派貴族達は、反論が無いのは、我々の主張に同意見であると判断する。


普通なら休憩時間を取り、各派閥に最後の根回しをするのだが、この状況を鑑みて、フォルクス侯爵達は、休憩時間を取らずに、一気に採決に持ち込む事に決める。


「議長!各貴族からの質問も無い様ですので、採決を願いたく思います!」


議長が全体を見回す。


誰からも質問が無い事を確認した宰相は、皇帝陛下の元に向かう。


「陛下。採決を行いたく思います」


「善きに計らえ!」


皇帝陛下は、良いとも悪いとも言わない。


迂闊な発言をすると、政治責任が発生するからである。


議長が「それでは採決を行う」



★★★★★



議長が宣言する「反対多数により、本法案は否決された。以上。本日の議会は、これにて終了とする!」


圧倒的多数の反対により、法案は否決された。


法案を提出した、フォルクス侯爵達の面目丸潰れであった。



★★★★★



ここは、ゲルハルトの執務室。


「殿下。フォルクス侯爵達がお見えです」


「おお!戻ったか。応接室に通せ!」


「承知しました」


応接室のドアが開き、ゲルハルトが入室する。


全員が席を立って出迎える。


一番身分の高いゲルハルトが着席する。


「皆、楽にしてくれ」


ゲルハルトのこの発言を聞いてから、全員が着席する。


「それで、法案はどうだったのだ?当然、可決されたのだろうな。チェスターの泣き顔が目に浮かぶ。ふふふ。」


し~ん。


仕方無く、フォルクス侯爵が話し始めた。


「それが…法案は否決されました…」


「なに?いま否決と言ったか?」


「はい。殿下。残念ながら法案は否決されました…」


「ふざけるな!!」


ゲルハルトが激怒する。


「ちゃんと、根回しは行ったのだろう?いったい、何が起こったのだ!」


「それが、何が何やら…さっぱり分かりません…」


ゲルハルトは深呼吸した。


そして「もう良い!下がれ!そして二度と私の前に顔を出すな!」


そう言って、部屋を出て行った。


フォルクス侯爵達から言わせれば、法案提出の指示をしたのは、ゲルハルトである。


自分達は、ゲルハルトの指示に従い、法案を作成し提出しただけだ。


議会に提出した後は、長々とこの法案の必要性を訴えた。


三大公爵家を始め、中立派の各グループにも根回しを行った。


それなのに、法案が否決された。


彼等の面目丸潰れである。


そんな自分達に、労りの言葉も無く「2度と顔を出すな!」とまで言われた彼等は怒り心頭である。


自分達はゲルハルトの指示に従っただけなのに、全責任を押し付けられた彼等は、怒りを胸に部屋を出て行った。



★★★★★



ここは、フォルクス侯爵の屋敷である。


皆で今後の事を話し合い為に集まった。


「殿下の…あの態度は何だ!我々は、殿下から言われた通りにしただけでは無いか!」


「そうだ!その通りだ!」


「我々だけに、責任を押し付けよって!」


「私は、もはや、ゲルハルト殿下を支える事は出来ません!」


「わしもだ!もう、これ以上は、付いて行けぬ」


「フォルクス侯爵は、如何お考えか?」


「うむ…皆の意見は最もだ。わしはゲルハルト派からの離脱を考えておる」


「ならば、私もお供致しますぞ!」


「わしもだ!」


皆がフォルクス侯爵の発言を待つ。


「中立派を名乗り、グループを結成するか…又は、アドルフ殿下の元へ身を寄せるか?」


中立派を名乗ったからと言って、全体から見れば少数グループである。


メリットは、自由度が高い事だけだ。


他の中立派グループと連携しなければ、ゲルハルト派から潰される恐れがある。


今まで散々争って来た我々と連携してくれるのか?と言う問題もある。


アドルフ派は、どうだろう?


アドルフ派は、下級貴族が多い。


我々、上位貴族が加われば、派閥内で大きな発言権を得られる事だろう。


ただ、アドルフの性格が悪い事は知れ渡っている。


フォルクス侯爵達が合流したとて、所詮は弱小派閥。


アドルフが次期皇帝に即位する確立は、ほぼゼロである。


しかし、皇子である事には違いない。


性格は別にして、皇子としての権威がある。


フォルクス達は、今後の事を夜遅くまで議論するのであった。

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― 新着の感想 ―
 やはり、ゲルハルト皇子にはトップに立つヒトとしての「器」が小さいですねー! 己の命令を忠実に熟した臣下に労りの言葉(形だけでも)を掛けないで、二度と顔を見せるな! とは、もしかしたら、成功していても…
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