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それぞれの本音

 「わんわんわんわんわん!」

 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 「なんか、見ていて和む光景ですねぇ」

 「ですわね」


 俺はアーサーちゃんに追いかけられるメリーを眺めながら、キャメロット夫人と一緒にお茶を楽しんでいた。


 「和んでないで助けてよ! 死ぬ! こいつ、殺る気だよ!? 絶対殺される! ケイスケは渡さないってさっきから凄んで来てる!?」

 「はいはい。妄想乙」

 「本当なんだってば〜〜!」


 ふむ。見たところメリーの限界も近いか。そろそろふざけるのも止めないとな。

 俺はキャメロット夫人が用意してくれた椅子から立ち上がり、メリーとアーサーちゃんの間に割り込んだ。

 だが、それが間違いだった。


 「け、ケイスケ〜!」

 「きゃいんきゃいんくーん!」

 「ぎゃあああああああああああああああ!?」


 後ろから抱き付いてきた変態に首筋をペロペロ舐められ、前から駄犬がベチョンベチョンと俺の全身を舐めてくる。

 もう家に帰りたい。ていうかお家帰るぅ!

 俺は予想外の展開で涙目になりながらそう思った。

 まあ、とにかく。おれで俺達は全ての依頼を達成したわけだ。……久々に豪遊して暮らせるぜ!







 「あ、そうですか。全部メリーさんと共同で行ったんですか。いえ? 別に問題ないですよ。はい。全然問題ないですよ。別にパーティーを組むのは冒険者の間でも当たり前のことですしね。でもまたメリーさんですか? 別に私でもいいじゃないですか。なんでいつもいつもあの女がしゃしゃり出てくるんですか。おかしいじゃないですか。これ以上ポイント減らすようなことしたら私もどうなっちゃうか分かりませんよ? そうだ。最近アダマンタイト製の手錠を特注で作ってもらったんですけど試してみます? 試してみましょう? さあ、さあ!」


 ギルドで報告をしに行ったら、シェーレさんがすっげえ怒ってました。ホワイ?

 俺の目がイカレて無いんだとしたら、彼女の背から見えるドス黒いオーラは一体なんなんだろうか。ちょっと怖いんですけど。


 「あの、ちょっと落ち着いてくださいよ」

 「私は落ち着いていますよ。ええ。落ち着いています。冷静だからこそこんな風に平然と受付嬢を勤めていられるんです。凄いですか? 凄いですよね。褒めてくれても良いんですよ。頭撫で撫でしてください。別にあの変態とは違いますから、そこまで要求はしません。ああいうことはまずは交際してからですもんね。ええ分かってます。だから今すぐ付き合いましょうか」

 「……」


 やっべぇええええええええええええええええええええええええええ!

 何だこの人。会話が通じなくなっちゃってる!? あれか、俺が四日間ここに来ない間に何か変なものでも喰ったのか? その可能性は十分考えられるな。

 クオラさん、だっけ? 確かあの人はシェーレをイラつかせることで有名な人だったし、きっとあの人の仕業に違いない。

 ていうか、さっきから黒いオーラがドロドロの触手みたいになって俺の手を掴もうとしてくるんですけど。これなんてスキル?

 ちなみにメリーはとっくの昔にシェーレのオーラに当てられて気絶してやがります。


 「くそっ! アイテムボックスには……良かった。報酬はすでに受け取ってある! じゃあこれで失礼します!」

 「お前がいるから……」

 「ああ!? メリーが飲み込まれる!? ちょ、やめろって!」


 俺はこの後、半べそをかきながらメリーと一緒にギルドを逃亡した。




*****




 ……ん? 暖かい。

 私は閉じていた瞼をそっと開いてみた。


 「ん? 起きたか? 大丈夫か?」

 「ケイ、スケ?」


 私の顔の前にケイスケの顔がある。これは夢? ま、夢でも良いか。

 私はケイスケの顔を両手で固定し、おもいきりキスをしようとした。が、すぐに私の頬がビンタされて床に落とされる。

 ……この痛み。夢じゃない!? というか今私、膝枕されてなかった!? というかここは何処!?


 「ケイスケ! あの化け物は!?」


 私は確か、ギルドに突如出現した謎の黒い怪物に負けてしまったのだ。

 しかし辺りを見回してみると、ここはどうやらケイスケの家の中。ということは私が眠っている間に全ての問題が片付けられたということか。

 ……私はまたケイスケの助けになれなかったんだね。

 その事実に私は愕然とし、思わず俯いた。

 スカーレットバルバトスと遭遇した時も、アーサーちゃんと命懸けの鬼ごっこをした時も、あの怪物に出会った時も。

 私は、一切ケイスケの役に立つことができなかった。


 「ま、あんまり気にすんな」

 「ケイスケ……」


 そんな私をケイスケはぶっきらぼうな表情で頭を撫でてくれた。

 繊細な手つきで、私を興奮させるような優しい撫で方。……癖になりそう。

 いつもそうだ。

 ケイスケはいつも私を邪険にするくせに、私が落ち込んでいると必ず立ち直らせてくれる。

 全く、昔は私の方が彼を支えていた筈なのになぁ。だけど、こういうのも悪くない。

 私は熱い吐息を漏らしながら、彼の気が済むまで存分に撫でられた。

 そんな時、私の我慢も限界に達した。


 ――イマナラ、ヤレルンジャナイノ?


 これまで押さえ込んできた欲求が爆発し、私の理性のタガが瓦解する。

 そして私は彼に飛びつき――


 「ケイス……ぐはっ」


 ――首筋に手刀を当てられ、気絶した。


 「やれやれ。こんなところもまあ、嫌いじゃないんだけどな」


 最後に、彼はそんなことを言ってくれたような気がした。

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