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階層主

 今日、俺達は紅蓮の魔石を回収すべく、他の冒険者達もよく利用するメジャーな迷宮に挑んでいた。

 入口に近い所は冒険者がうじゃうじゃいるので、冒険者の数が少ない最深部の方へと向かう。

 ぶっちゃけ、俺とメリーの持つ【スキャン】というスキルがあれば迷宮内を把握するなんてこと造作も無いのだ。

 ついでにメリーに隠蔽系のスキルを駆使してもらい、俺達は他の冒険者に見つからないように迷宮内を探索した。

 無駄な戦闘をするつもりもないので、見かけた魔物は全て一撃で葬る。

 無視した方がいい? 大丈夫。通り過ぎる一瞬に刃を立てれば問題ない。

 そんな中、メリーが呟くように言った。


 「結構強い気配を感じる……」


 メリーが強いという言葉を使うってことは、きっとレベル130は越えている魔物が近くにいるということなんだろう。

 こっからは戦闘モードに入っておかないといけないな。

 俺は雪のように白い刀を片手に装備した。

 俺がこの世界に来て初めて手に入れた固有武器『アンサラー』。

 刀にしては刀身の幅が広く、長さは五十センチ程度。そして自動復元機能を持つ不壊属性持ち(デュランダル)だ。

 まあ、刀身が短いから刀と言うより脇差とか短剣と言った方が正しいのかもな。

 それにしても俺達はどれくらい深く潜ったんだろう? 案内はメリーに任せてたから詳しくは知らない。

 俺も念の為に【スキャン】を使おうとして……やめた。


 「……赤い扉。そうか、やっぱ俺達にとって歯ごたえがある奴って言ったらこれくらいの敵になっちまうのか」


 目の前には真っ赤に塗りつぶされている巨大な扉が待ち受けていた。

 これこそ迷宮の命、ダンジョンコアが眠っている最深部の証。そして、それを守る為に階層主(ボス)が存在するという警告だ。

 ここから先は一般の冒険者には決して通れない領域だと言ってもいいだろう。


 「どうする? やっちゃう?」

 「うーん……」


 ボスを倒しても、部屋の奥に安置されているダンジョンコアさえ破壊しなければこの迷宮が死ぬことはないだろう。

 本当は迷宮なんて無い方がいいんだろうけど、魔石とドロップアイテムは何気に都市の重要機関に使われていたりする。

 新しい迷宮が落ちてこない限りは、この迷宮には生きていてもらった方がいい。というか、そもそも冒険者じゃない俺にはダンジョンコアを破壊する許可が降りていないのだ。

 かと言って相手は階層主だ。レベルは俺達より下だとは言っても、油断はできない。もしかしたらついうっかり本気を出して部屋全体を破壊してしまう危険性だってある。


 「……ま、いっか」


 やばくなったら逃げればいい。俺はあまり気負わずに赤い扉を開けた。







 その部屋の中はとても広かった。部屋の形も円形になっており、まるで闘技場のような印象を俺達に与えている。

 そして闘技場の中央には五体のクラッシュバーンに囲まれた紅蓮の騎士が立っていた。

 あまりにも予想外の出来事に俺は目を何度も瞬かせた。


 「おいおいおい……この迷宮、クラッシュバーンが階層主じゃなかったのかよ」

 「おっかしいな? あの赤い鎧の人、全然気配を感じ取れない」


 クラッシュバーンは青い火の玉みたいな奴で、体当たりした相手を爆発させるという厄介な能力を持っている。そしてそのレベルは145だ。

 俺達はその気配がこの部屋にしか漂っていなかったから、知らず知らずの内にこの部屋まで辿り着いてしまったわけだが、まさかそれ以外の魔物が存在するなんて思ってもみなかった。

 メリーでさえ感じ取れないほど気配が希薄な魔物……一体何者なんだ?

 俺は真っ赤な鎧に覆われた騎士に向かって【鑑定】を使ってみた。


 「――っ!?」

 「ケイスケ?」


 俺はそこに表示された内容を見て驚愕した。

 騎士の名前はスカーレットバルバトス。レベルは180で、種族名は不明だ。

 なんなんだこのふざけた内容は!?

 俺達がいる迷宮は火属性の魔物が多いと有名な場所だが、出てくる魔物のレベルは平均的に100を少し超える程度。いくら階層主だと言っても、普通は迷宮の平均よりも20くらい上の魔物が出てくるだけだ。

 それなのに目の前の騎士は、レベルが180だ。そのレベルはメリーを圧倒的に追い越している。

 自然と俺は手ぶらだった方の手に漆黒の剣を装備していた。

 因縁の相手を打ち破った際に手に入れた暗黒剣『ファントムブラッド』。

 相手の生命力を吸収し、持ち主に還元してくれる凶悪な剣だ。それに不壊属性持ちじゃない代わりに、相手の生命力を奪うたびにその刀身は強化される。長旅で散々活躍してきたこの剣の固さは最早不壊属性持ちと何も変わらない。


 『ギルルル……』


 俺の戦意を感じ取った騎士が、鎧と同じく紅蓮に染まった長剣を背中から引き抜いた。

 同時に五体のクラッシュボムが動き出す。


 「メリー! クラッシュボムの動きを封じてくれ!」

 「わ、分かった! 【アクアミスト】!」


 俺はメリーが生み出した、視界を塞ぐ霧の中を掻い潜る。そして、白と黒の剣を紅蓮の騎士に向かって振りかざした。


 『ギルルル!』

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 互いの剣がぶつかり合う。そのたびに火花が飛び散り、光の軌跡が宙に舞った。

 ただのフリーターである俺はこの時、きっと笑っていたんだと思う。

 やっぱり俺は、おもいきり剣を振るのが好きなんだ。

 俺は、まるでゲームをプレイしているかのようにボス戦を楽しんだ。


ちょっと戦闘馬鹿的な部分が垣間見えたケイスケでした。

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