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駆逐される森林

前半部は魔物視点で。

 とある迷宮の中には、森林の中だと勘違いしてしまうような部屋が存在する。

 しかし、当然ながら建物の中に森林なんてものが存在する筈が無い。

 その空間こそがキラーウッドという魔物の住処なのだ。


 キラーウッドは見た目が普通の木にそっくりなので、よく注意して観察しないと見極めることができない。そして気付かず彼らの縄張りに入り込んでしまった者を捕食してしまうのである。


 だが、その日だけは違った。

 彼らは絶望を知り、逃げる事も許されずにその命を散らすことになる。


 「【デュアルスラッシュ】!」

 「【ウインドディザスター】!」

 『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 『ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?』


 突然縄張りに入ってきた黒髪の二人組。

 その二人はまるで散歩をしているかのように森林の道を歩き、手当たり次第に木々を薙ぎ倒していった。

 偽物と本物を区別することも無く、ただただ視界に映った物全てを破壊するその様はまるで悪魔だ。

 キラーウッド達は本能で身の危険を察知し、部屋からの脱出を試みようとした。

 しかし、根を動かして必死に移動する仲間の一人を悪魔は容赦なく爆散させる。そして次々と逃げる仲間を切断していった。


 「ありゃりゃ。これじゃ訓練にもならねえな」

 「そりゃそうだよ。キラーウッドなんて所詮レベル40の雑魚なんだし」

 「もうこの部屋ごと一掃しちまうか?」

 「それは我慢だよケイスケ。下手したらこの迷宮が崩れちゃうから」

 「ちぇ。面倒だな」


 仮にもここは魔物の巣だというのに、悪魔達は暢気な声でそんな会話を繰り広げている。

 キラーウッド達は己の終わりを悟ってガタガタと震えた。

 そんな時、一本の救世主が現れる。

 一際大きな魔石に魔力が宿り、部屋全体を覆うほど枝を生やした木が生まれたのだ。

 その名もエルダーフォレスト。

 キラーウッド達の思念が集まることで誕生する、レベル120という高位の魔物である。

 エルダーフォレストは太い木の幹の一部をバキバキと裂き、ぱかりと口のように開けた。

 それはエルダーフォレストの必殺技。【フォレストレーザー】の予備動作である。


 「おい、あれって!」

 「【バインド】!」


 悪魔達は慌ててエルダーフォレストを止めようとするが、もう遅い。

 その巨大な口から、翡翠色に輝く光線が放たれた。

 これでこの部屋の侵入者達は――。


 「「【リフレクト】」」


 『――ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』







 部屋の全てが一瞬閃光に包まれた後、ケイスケ達は無傷のままその場に立っていた。

 回避が間に合わないと思った二人は、敵が光線を発射した瞬間に【リフレクト】を使っていたのだ。

 【リフレクト】は光属性の攻撃をそのまま相手に跳ね返すスキルである為、ダメージを追ったのはエルダーフォレストの方だったのである。

 その結果、全身黒焦げになったエルダーフォレストは大きく仰け反り、今にも倒れてしまいそうだった。

 が、いくら高威力の攻撃だったとはいえ、自分の技で倒れるような相手はいない。

 エルダーフォレストはすぐに体勢を立て直し、反撃を再開しようとした。


 「もう面倒だからいいか。【フレアボム】」


 しかし、ケイスケはもう飽きたと言わんばかりに火属性の魔法を部屋の中に叩き込む。

 直後、爆炎が花開き、部屋にいた生物はケイスケとメリーの二人を除いて全て消滅してしまった。

 辺りに残ったのは三十を超える魔石と、稀に魔物が残していくドロップアイテムだけ。

 ケイスケ達は思わぬ収穫に喜んだ。


 「おっしゃ! ドロップアイテムだ! えっと、『老樹の表皮』か。これは薬の材料になるから、ギルドより薬屋に売りつけた方が儲かるだろうな」

 「魔石の換金は私が受け持つよ! これだけ大量なら一万マルクは余裕だね!」


 こうして、二人は何の苦労を背負うことも無く依頼の一つを達成したのであった。







 「しっかしアレだな。やっぱ雑魚相手じゃ全然訓練にならねえよな」

 「じゃ、明日は思い切って強い魔物と戦ってみる?」

 「そうだな……。でも、爆発系の魔物で強い奴と言えば、大抵は勝手に自爆する奴だしなぁ」

 「そうじゃないのもいるよ? レッドバーンとか、ボムメイカーとか」

 「どっちもレベル100以下じゃねーか。……待てよ? 確か、レッドバーンの上位種に当たる、クラッシュバーンはレベル145の大物だったよな」


 ケイスケはアーサーちゃんを上回る魔物の存在を思い出し、明日のターゲットをその場で決めた。


 「よし。明日はクラッシュバーンと戦うぞ!」

 「ケイスケがいいなら何処でも構わないよ! 万事オッケー!」


 メリーはどさくさに紛れてケイスケにしがみつこうとし、咄嗟に正気に戻って我慢する。

 が、メリーの限界は近い。これ以上ケイスケと触れ合わないでいると、禁断症状が爆発しそうである。


 「……」


 そんな彼女をケイスケは少しだけ不安げに見つめていた。


 (……また性犯罪に手を染めなきゃいいんだが)


 一応、ケイスケの疑惑はメリーに対する信頼の証でもある。


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