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狂乱の子鬼

変態成分が欠けている……だと!?

 ゴブリンという魔物がいる。

 肌は緑色をしており、小柄な体格で、耳はエルフのように先が尖っている。また、知能はそれほど高くないのだが、人の真似をして武器を扱うことも珍しくない。

 個体差はあるが非常に弱く、最低ランクFの冒険者でも余裕で勝てる相手だ。


 『ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 ただし、中にはCランクの冒険者でさえ倒す事が難しいような例外も存在する。

 それが今メリーとケイスケがこっそり監視しているバーサクゴブリンだ。

 肌は赤黒く、凶暴さについては他の魔物の追随を許さない。視界に入ったものは全て殺す。バーサクゴブリンとは、そんな殺意と暴力の結晶なのだ。


 「【鑑定】。えーと……レベル94か。やっぱそれなりに強いな」

 「確かに。これじゃ普通の冒険者の手にはちょっと余るかな? ああいうタイプは乱戦時の方が遥かに強いし」

 「なにせ、場所が場所だからなぁ」


 冒険者は基本的に数名の仲間と組んで、パーティーというチームを作る。

 なぜなら迷宮内では様々な魔物が出現する上に、色々な罠が仕掛けられているからだ。

 その為に色々なスキルを持った仲間と協力し、個々の弱点をカバーする必要が生まれるのである。


 ところが今ケイスケ達がいる場所は迷宮の外だ。

 それどころか、人里に近い平原のど真ん中にいる。

 恐らく、目の前のバーサクゴブリンは他の冒険者に討伐されることなく、迷宮から抜け出した個体なのだろう。


 この場合、相手の機動力は無限大に発揮されると考えた方がいい。

 なにせ迷宮と違って、外には壁も無ければ罠も無い。つまり動きを制限するものが一切無いのだ。

 そして動きを制限されないということは、パーティーにとって致命的である。

 なぜならパーティーはそれぞれの役目が決まっている為、外でも動きが制限されたままだからだ。場合によっては仲間を盾に使われることもあり、満足に攻撃させてもらえなくなるだろう。


 「ま、俺達には関係ないけどな」

 「だね。……【バインド】!」


 なにせこちらは臨機応変ができるパーティーなのだ。しかもそれぞれがバーサクゴブリンを単独撃破できるだけの実力を有している。

 メリーは不敵に笑った後、右手をバーサクゴブリンに向けて拘束系スキルを発動した。

 すると突然バーサクゴブリンの足下から何本もの蔦が伸びてきて、その小柄な体を丸々縛り付けてしまった。


 『グアアアアアアアア!?』


 必死に絡まった蔦から抜け出そうともがくバーサクゴブリン。

 しかし、いくら力を込めても抜け出すことはできなかった。

 その間にケイスケは市販のナイフを手に持ちながらゆっくりと近付き、


 「ほらよ」


 あっさりとゴブリンの眉間にナイフを突き刺した。

 その後、バーサクゴブリンは悲鳴をあげることなくそのまま魔石を残して消滅してしまった。


 こうしてケイスケは最初の依頼を無事に達成できたのである。







 「助かったぜメリー、ありがとな」

 「ふわわわわわ!?」


 魔石を回収した後、ケイスケはお礼を言いながらメリーの頭を撫でた。

 おかげさまでメリーの顔は真っ赤である。

 だが実際のところ、メリーがいなければこうもあっさりとバーサクゴブリンを倒すことはできなかっただろう。


 なぜならバーサクゴブリンには【気配察知】という厄介なスキルがある。

 このスキルのせいで、冒険者達はほぼ不意打ちが不可能となるのだ。

 それにゴブリン系の魔物は皆足が速い。その中でもバーサクゴブリンの脚力は尋常ではなく、敵の気配を察知した瞬間、弾丸のように突撃してくる。

 そして一度攻撃が始まってしまえば、スタミナが切れるまでその攻撃が止まることは無い。

 全盛期のケイスケならそれくらい突破することも可能なのだが、最近、戦いの勘が鈍っていると自覚したばかりだ。


 故にケイスケは無理せず確実な戦法を取りたかった。

 メリーは相手の【気配察知】を相殺できる【潜伏】というスキルを持っている。

 むしろ圧倒的なレベル差がある分、メリーの【潜伏】の効果が勝っていたと言っても過言ではない。

 その結果、ケイスケは不意打ちが可能な状態の上で、メリーにバーサクゴブリンの機動力を封じさせたのだ。


 (ふぉあああああああああああああああ……! 我慢! 我慢よ私ぃいいいいいいいいいいい!)


 しかしそんなケイスケの心情など、今のメリーにとってはどうでもいいことだった。

 頭を撫でられるたびに体が反応し、ビクンビクンと跳ねてしまう。

 息は荒くなり、顔は蕩けて、理性の奥に封じられた己のケダモノが「ここから出せー!」と騒いでいる。

 ここで気を張らなければ、忽ち彼女は淫獣となってしまうだろう。そうなればケイスケからの好印象も無駄になってしまうに違いない。それは全力で阻止しなければ。

 メリーは太腿を擦り合わせながら必死に理性を保っていた。


 (え……? こいつ、もしかして発情してる?)


 ケイスケが全部お見通しで、尚且つドン引きしていたということにも気付かずに。


彼女が報われる日は来るのだろうか?

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