偉大なる青《ズアーラ》Ⅰ
「さーて、見えてきました!」
視界に青の世界が広がります。
二本の指をトンと額に当てて腕ごと横に突きだしました。何と言って効果はありません。
すると、急に、機船服を着た旅人を乗せ飛んでいる相棒がガコォンと轟々しい音を立てて、なんと言うことでしょう。失速をし始めました。
なんとか立て直そうとレバーを引いたりボタンを押したりしましたが、一向に上昇しません。
青──偉大なる青、《ズアーラ》の水面に顔を打ち付ける羽目になってしまいました。
綺麗な着水を決めることなく《ズアーラ》に沈んだので、全くもって不愉快です。今この世を去るのは嫌でしたので、変な掻き方ではありましたが、水面にあがります。
「……どーゆーこと、ですか…」
がし、と相棒を掴んで息をします。
相棒は返事をしません。それはそうなります。相棒は機械なのですから当然です。
「…酷くないですか?何か、謝罪があるんじゃないですか?」
相棒は無視をします…いいえ、無視、という表現は間違っているかもしれませんね。機械なのですから。
ああ、この流れを二回やるのには意味がありますよ。何事にも意味はつきものなのです。えぇえぇ。決して、苛立ちを発散するためではありません。こんな事をしても、しょうがありませんからね。広い心は大切ということです。
水を吸い込み重くなった機船服を纏いながらも相棒に乗り込みました。
✶✶✶
(う、なんでこんなことになるのでしょう…)
乗り込んだ相棒は、少しだけ走るとプクプクと音を立てて沈んでしまいました。
旅人はまだ、旅の始まりに立った所なのですよ。もう少し優しくして頂きたいものです。
トントン、と相棒を優しく叩きます。
すると相棒はブルンと音を立てて水上を走り出してくれました。緊急発進装置がしっかりと作動してくれたようです。…本来はもう少し大変な危険が訪れたときに使いたかったのですが、やむを得ません。
相棒は、もう飛ぶことはしてくれませんが、速度を一定にして走ってくれています。しかし多少揺れるので、壊れるかが怖いところです。進んでいるので大丈夫だと思っておきましょう。
やっと、一息がつけます。
ふう、と一つ息を吐いて顔を上げると、大きな青が、《ズアーラ》が灯光型機船の明かりを写していました。
「…綺麗です」
この広く包みこんでくれるような青をこの眼球で、この近さで見ると、なんとも偉大なものです。
そう思ったところで、ぐるぅ〜とお腹がなってしまいました。
(何か、食べたいですね…)
少しでも荷物を減らすためにご飯など持ってきていませんから、どこかで買わなければなりません。いいえその前に路銀を稼がなくてはなりません。
お金のやり取りが盛んな集落、朱金国を探すことにしましょう。
相棒…………………ある旅人が乗っていたぶっ壊れた機械のあだ名。後ろにでかいエンジンが乗っており、それで飛べる。
機船服………………古くから機船に乗る者が着る服。一般的に、頭を覆う布とゴーグル、そして上の服が一体化している。息を吸うための穴がある。危険性があるため最近では着ない。
灯光型機船…………世界に光を灯すためだけに作られた機船。《スリネーク》で一生輝く物体。
朱金国………………過去、一つの集落ではお金のやり取りが『朱』と『金』の通貨で行われているときがあり、その集落だけ経済が上がったことから、お金やり取りが盛んな集落はそう呼ばれるようになった。




