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ep.3「人体実験」

蝿から教えてもらった事がある。

 宇宙人は人間を連れ去って、身体検査や実験をするらしい。


 「アブダクション」って言ったかな。

 ……ってことは、俺……今から実験されるの!?


 その、エイリアンはこちらに向かって歩み寄る。

 

 やばいやばいやばい!

 実験は嫌だ!絶対痛いじゃん!

 逃げないとっ……て、逃げれるのこれ?


 辺りを見渡し、逃げられる方法を模索する。

 周りはカプセルのようなガラスに囲まれている。

 開け方すら分からない。


 いや、一旦落ち着け……。

 エイリアンが2人もいるんだ、もしここから出られたとしてもすぐ捕まるのがオチだ。

 つまり、今するべき行動は……


プシュー……


 ゴーグルを再度装着し、元通りの状態に戻る。

 再度、ゴーグルは頭部をがっしりとホールドし、視界は暗黒に包まれる。

 

 大丈夫……きっと大丈夫!

 外し方ならさっき知ったんだ。

 とりあえず、今はやり過ごさないと……。

 

 真っ暗な視界、今は目が使い物にならないため全神経を耳に集中させる。


カツッカツッカツッカツッ

 

 近づくエイリアンの足音。

 音の方向から、間違いなく俺か隣の男のどちらかを目指している。

 起きた人から実験をするのか、ただ隣の人が暴れているから止めに来たのか……はたまた、俺の大声がダメだったのか分からない。


 ——隣の人であってくれ!隣の人であってくれ!!


 バクンバクンと心臓の鼓動が身体中を震わしている。

 バレないように少しづつ息を整える。


ウィーン……


「おい!何すんだよ!!」


 どうやら、サイレン音の原因は隣の人のようだ。

 

プシュー……


「な、なんなんだよ!お前ら!!

くそっ!離せよ!!なぁ!おい!!」


 ゴーグルが外れた音、そしてだんだんと隣の男の声が遠くなる。

 その音から推測するにおそらく、ゴーグルを外された隣人がどこかに連れて行かれようとしている。

 

ウィーン……


 扉の閉まる音。

 男の騒ぐ声も聞こえなくなるまで遠くなる。


 これからあの男は実験されるのか……。

 次は目覚めた俺かも……。

 だとしたら、早くここから逃げないと。


プシュー……


 ついさっき見つけた、ゴーグルの右側にある小さなボタンを押し、ゴーグルを外す。

 辺りを見渡して、エイリアンがいないことを確認する。


 よし、エイリアンはいない。

 まずはこのカプセルから抜け出さないとな……。

 隣の男の人が殴っても蹴ってもダメだったんだ、ゴーグルみたいに何かボタンでもあるのかな?


 身体を起こす余白がないほどに窮屈なカプセル。

 閉所恐怖症は発狂する狭さだ。

 安めのカプセルホテルでも、ここまで意地悪な設計はない。


 足を伸ばしカプセルの淵をなぞるように開け方を探す。

 あの男が殴るとサイレンがなった。

 おそらく、カプセルへの衝撃でサイレンが鳴るのだろう。


 慎重に探さなければ……。


 ふと、左足先に小さな突起の感触。

 ゴーグルの右側にあったボタンとまるで同じ。

 押し込んでみると、


ウィーン……


 目の前を覆っていた、ガラス張りの壁は瞬間的に消えた。

 もう一度、押してみる。


ウィーン……


 目の前に再度出現する、ガラス。

 最先端技術でも、おそらくできない所業。

 未来の装置というのが正確なのかもしれない。

 やはり、ここはUFOの中……。


ウィーン……


 再度、足先にあるボタンを押し上体を起こしてみる。

 辺りを見渡すと、部屋全体に綺麗に設置されたカプセル。

 隣のカプセルを除き、全てのカプセルに人間が入っている。

 高齢のおばあちゃんから生まれて間もない赤ちゃんまでもがカプセルに保管されている。


 アブダクションした人達を保管しているのか?

 だとしても、多すぎだろ。

 とりあえず、ここから抜け出そう……。


 部屋の端にある、先ほどエイリアンが入ってきたところまで目指してみる。

 今分かる出入り口はそこしかないからだ。

 変に動いて、サイレンが鳴るのが1番まずい。


 監視カメラやエイリアンの能力、色々なことを考慮して物陰に隠れながら慎重に進む。


ウィーン……


 特に、何も起きずに出入り口まで到着した。

 近づくや否や自動で開く扉。

 自動ドアの最終進化というべきか、近未来な設備に少し感心する。


 ドアの先を進むと、左右に分かれた道。


 こういう時、左に行ってしまうのが人間の習性らしいがここはあえて右に行こう。


 エイリアンは人間の習性すらも把握していると考え、あえて予測不能な行動をとってみる。


 SF映画でよくみる無機質な壁や床に少し興奮を覚えながら、道を進む。


 どこに向かえばいいのか分からないが、とりあえず出口らしきところに行ってみようと言う、なんとかなるさ精神が急に芽生える。


 アブダクションという夢見たいな出来事に、いっそ夢かもしれないという安心感が変に好奇心を湧かせているのかもしれない。

 

「おい!離せよ!どこに連れていく気だ!!」


 通路中に響き渡る怒号。

 間違いない、隣にいた男の声だ。


 何も手掛かりがない今、後をついていけば何かわかるかもしれない。

 あわよくば、あのヤンキーみたいな血気盛んな男性を仲間にできるかもしれない。

 ていうか、エイリアンに打撃って効くのか?


 男の怒号を目印に一定の距離をあけ、後をついていく。

 エイリアンに左右を挟まれて連れていかれる男だが、身体は少し浮いている。


 エイリアンの超能力ってやつか?

 

ウィーン……


 突然、曲がりなにやら新たな部屋に入っていく。


 実験室か……?

 どんな実験をするんだろう。


 好奇心が身体を動かして、扉の近くで耳を澄ます。

 流石に、部屋に入ってしまうと見つかって俺も実験開始なんてオチが目に見えている。


「おい!なんだこのトカゲ野郎!!

おい!やめろ!!」


 男の叫びが部屋から漏れ出る。

 声色からは恐怖と焦りを感じる。


 トカゲ野郎……?

 あの、男を連れていったエイリアンはとてもトカゲには見えかった。

 この部屋の中に、あのエイリアンとは違うまトカゲ野郎がいるのか……?


「やめろ!やめろぉぉぉぉ!!!」


バキッ……!バキバキバキ!!

 

 男の悲鳴となにやら、潰れているような割れているような音。


 かなり酷い実験が中で行われているのかもしれない。

 とうとう、男の声がピタリと止む。


 聞こえてきた声から、おそらく死んだか気絶かのどちらかだ。

 どちらにしてもいい実験ではないのは確かだ。

 ここから逃げないとっ!!


 ふと、視線の先を見ると大きな黒い丸と目が合う。

 そう、エイリアンだ。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。


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