ep.9「地球解放軍32《サーティセカンド》」
俺が双子と間違えた羊姉さんと呼ばれる人は、艶やかなピンク髪に素晴らしい身体のラインが見えるピチピチのスーツ。
俺を連れてきてくれたお姉さんにそっくりの人物であった。
いや、そっくりと言うか目の下にある涙ボクロの位置も全く同じの同一人物。
どうなってるんだ?
「ちょっとぉ海ちゃん、その姿やめてって言ってるでしょぉ」
「だって、羊姉さんの身体『アニコン』で目覚めた男の人を誘導するの楽なんですもん!」
パチンッ!
俺を連れてきてくれたお姉さんは指を鳴らすと艶やかなピンク髪は肩までの緑髪へ、妖艶さを際立たせる涙ボクロは黒い仮面により覆われた。
羊姉さんとの一連の流れで俺は理解した。
——完全にハメられたと。
いや、ハメられたというか騙されたと言うか、この海ちゃんとか言う女性の『スペースウェポン』はなんでも変身できる仮面。
つまり、俺を救出するのに妖艶な羊姉さんの身体が適任だと思ったのだ。
完全に童貞扱いじゃねぇーか。
「それでぇ、かわいい僕ちゃんは誰かなぁ?」
「あ、この子がボスの息子、金富 正義くん!
ついさっき『スペースウェポン』にも、認められて今日から32に入隊することになったんです!!」
「金富 正義です。よろしくお願いします……」
「私の名前は、怒山 羊だよぉ。よろしくねぇ僕ちゃん」
「オイッ!オレ様の羊ちゃんに何の用ダ!!」
突如、甲高い声が鼓膜を揺らす。
辺りを見渡しても声の正体らしき人物は見当たらない。
「オイッ!こっちダ!俺様が見えないなんてとんだポンコツダナッ‼︎」
まさかと思いながらも、怒山さんのデスクに視線を向ける。
そこには小さなぬいぐるみサイズの小人がいた。
紫髪の短髪で顎には無精髭が生えている。
『小さなおっさん』とはまさにこいつのことを言うのだろう。
「な、なんなんですか?こいつは……」
「この子は私の『スペースウェポン』の『チャスティティ』だよぉ。
こらぁ、コウジくん。怒らないのぉ。
私たちの仲間だよぉ」
「ダッテ、コイツ羊ちゃんのこと、どエロい目で見てたんダゾ!」
「み、見てないですよ!!」
本当に見ていないのならキッパリと否定できるのだが、なぜか吃ってしまった。
正直に言おう、図星だ。
「もぉ、コウジくんは私だけを見ていればいいのよぉ」
「オイッ!オマエッ!オレ様の羊ちゃんに変なことしたらどうなるか分かってんノカ!」
「は、はいぃ‼︎すみません‼︎」
思わず力強い返事をしてしまった。
コウジくんの視線は身体の割に鋭く恐怖すら覚える。
まるで、ご主人様を守る飼い犬のような、そんな眼差しであった。
コウジくんは背中に生えた翼をパタパタ羽ばたかせ、お姉さんの肩へと止まる。
「あらぁ、かわいいわねぇ」
コウジくんの頭をナデナデと撫でる怒山さん。
こんなペットのような『スペースウェポン』もあるのか……。
「そうだ、私の自己紹介がまだだったね!
私の名前は大蛇 海。
地球解放軍32の副隊長だよ!よろしくね!!」
「副隊長⁉︎」
「そうだよ?」
思わず声が出てしまった。
それは、失礼だが「そうには見えなかった。」からである。
俺は、それを悟られないようにしれっと話題を変える。
「た、隊長はどなたなんですか?」
「隊長は今、アメリカで捕まってるよ」
「つ、捕まってる⁉︎アメリカで⁉︎
な、何か悪いことしたんですか?」
「まぁ、話は長くなるから簡単に言えば任務に失敗して『グレイグキング』に捕まったんだよ……
私を逃がす代わりにね……」
大蛇さんは少し気まずい表情であった。
部下を守るために、自身が捕まる選択をした隊長はさぞ、いい人なんだろうなと思う。
「隊長のことだから死んでは無いと思うけどね……そうだ!隊長を知らないんじゃあれだし、私が再現してあげるね!」
パチンッ!
大蛇さんが指パッチンすると身体は180㎝ほどの筋骨隆々のおっさんに変身する。
髪は紫色の短髪で顎には無精髭が生えている。
まさに、怒山さんの『スペースウェポン』、『コウジくん』をそのまま大きくしたような姿である。
「俺様、降臨っ!!」
「えっ……」
見た目からは、考えられない衝撃的な発言に少し引いてしまう。
「あらぁ、久しぶりに隊長の姿を見たわぁ。
相変わらずハンサムだわぁ」
「こ、降臨って……本当にこの人が隊長なんですか⁉︎」
「俺様はお前らポンコツと違って神だからな!
つべこべ言わずに馬車馬のように働け!お前ら!」
えぇ、思ってたのと違う……
もっと、仲間思いのカッコいい人だと思ったけど。
さすがに大蛇さん、誇張してるよな。
「もうぅ、海ちゃんたらぁ。隊長の真似上手いんだからぁ」
どうやら、本当にこんな感じらしい。
こんなのが隊長って、かなりやばいチームなのでは……。
パチンッ!
指パッチンで隊長から大蛇さんへと戻る。
「まぁ、隊長はざっとこんな感じだね!」
「隊長と副隊長の大蛇さん、隊員の怒山さんと……俺……32ってこんだけですか?」
「ううん、あと1人、悪角くんがいるわよぉ」
「悪角さん……?今は任務か何かですか?」
「えーとぉ、イタリアで捕まってるわぁ」
「捕まった……もしかして……」
「そう、私を逃がすために任務中に『キングレティアン』に捕まっちゃったのぉ……」
「またですか……」
「まぁ、悪角くんのことだから死んでは無いと思うけど……」
「正義くん、悪角も見てみたい?」
「ま、まぁ、お願いします」
パチンッ!
大蛇さんが指パッチンすると、身長は俺と同じくらいの175cmほどのボクサーのように引き締まった細マッチョの男性へと変身する。
髪は赤髪でトゲトゲに爆発しており、目はキリッと鋭い。
変身するや否や、片眉をクイッと吊り上げメンチを切るように俺をみている。
まぁ、簡単に言うとヤンキーだ。
「何みてんだぁ?あぁん?
俺が悪角 一魔だ、ボケェ!なんか文句あんのかぁ?」
「あらぁ、海ちゃん。
悪角くんもお上手なんだからぁ」
どうやら、本当にこんな感じらしい。
神様気取りの隊長にヤンキー隊員。
本当にヤバい組織に入ってしまったのかもしれない。
パチンッ!
指パッチンで元の姿へと戻る大蛇。
「まぁ、32はざっとこんな感じだよ!」
「隊長と悪角さんは助けに行かないんですか?」
「行きたいのは山々なんだけどね……
私や羊姉さんだと捕まって終わりだってボスに言われちゃって……」
「なるほど……お父さんの指示待ちってことですね——」
ウゥゥゥゥゥン!!
突如、鳴り響くサイレン音。
事務所中が黄色いランプで照らされる。
「な、なんですか!これ!」




