プロローグ
——20XX年1月1日 1時11分
「あなた……なんで……」
目の前で泣き崩れている母、金富 星。
普段は元気で活発な母から流れる嗚咽混じりの泣き声。
初めてみる姿だが、あまり衝撃を受けなかった。
なぜなら、それを上回る衝撃がすでに俺を襲っていたからである。
——父が失踪した。
今はその衝撃だけが脳内を駆け巡る。
何不自由ない至って普通な家族。
いや、過小しすぎだ。
順風満帆な幸せな家族であったと思う。
父が失踪する理由が一つも見当たらない。
毎年、大晦日は家族で恒例の年越しジャンプをして年を越していたが、今年は父が仕事で不在のため、母と仲良く年越しジャンプをした。
父は仕事熱心ではあったので、年越しに仕事で不在なことは多々あった。
しかし、今回は違う。
年越し直前に、母の携帯に届いた一本のメールが父の失踪を決定づけた。
——突然で申し訳ないが、俺はもう家には帰れない。正義を頼んだ。愛してる、星。
遺書とも取れるメール。
自殺にしろ、その理由も思いつかない。
意味不明なメッセージ。
しかし、これよりも更に意味不明なメッセージがある。
それは、俺の携帯に届いたメール。
——20XXIX年12月31日から20XXX年1月1日の間は絶対に地に足をつけろ!絶対だ!
意味が分からない。
宛名は金富 慈鳥。
間違いなく、父の名前だ。
おそらく、年越しジャンプのことだとは思うが「地に足をつけて生きろ」とも取れる。
それにしても、「年越しジャンプをするな」が遺言なんてな……。
さすがに、母には言えない。
再び会えるかもしれないと言う、淡い期待を持ち生きるよりも、父は死んだとして考えた方が楽なのかもしれない。
父の謎の失踪を抱えながら生きるのはストレスだと感じた身体の防衛本能だ。
……父は死んだ。
……父は死んだ。
……よし。
俺はそうして、この謎に無理やり答えを取り付けた。
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