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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case11 _ 精神の病
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第6話「六島先生」





「今が現実…僕は…生きてる…柊木真…今が現実…」




呪文のように繰り返し唱えて落ち着きを取り戻そうとする。

1人残された今、あれが何だったのかをよく考えて…



「夜見入という男性。彼はこの病院を最後の希望みたいに…。それから、妻とされる女性。容姿はハッキリと覚えてないけど、どれだけ危険な存在かは分かった。それに、あの光景って雑誌に載っていた噂そのままの事件が起きていたってことに」


恐らく夜見入さんが死ぬ直前、妻は創造を行った。

1度の創造で大量殺人をというよりは1人殺す度に毎回創造を


「ダンさんの再構築やボディーガードみたいに必要な時に何度も発動できるタイプってことだとして…」


そもそも同じ創造が何度も行えるということが


「…ここでも圏外じゃない」


スマホを取り出しダンさんに電話した。

予想ではジュリアさんが出るはず。



「はい。もしもし」


「ジュリアさん」


「柊木様。どうされましたか」


「気になることがあって。ダンさんの再構築みたいに同じ内容で何度も創造するのって簡単なんでしょうか」


「…ご主人様は今着替え中なので出られません。ですが、側で見ていた者としてはとても簡単には見えません。再構築は"大当たり"だという評価をいただいたこともあるほどですし、他の何度も使用できる類の創造はどれも"開発"に苦労されていましたので」


「失敗することもあるんですか?」


「これまでに41ページ。求めたものと違うという理由で破り捨てています」


「…そうなんですね」


「そちらの状況を聞いても?私達の助けが必要なら急いで向かいますが」


「今は大丈夫そうです。代行も倒せたので…ただ、胸騒ぎがして。もしかしたら戦うことはないかもしれませんけど、来てくれると心強いというか」


「分かりました。すぐに向かいます」


「…ありがとうございます」



電話を切った。

知りたいことを聞いて終わるつもりが救援要請になってしまった。


……あ。


スマホをポケットに戻そうとしてふと手を見れば。



「覗きの指輪、着けたままに…。じゃあさっきのは…!!」


なんだ。だからか。スッキリした。

……なんて言うわけない。

覗きの指輪は対象に触れなければ効果を発揮しない。

半里台に来てから今まで、凪咲さん以外に触れた人はいない。

それに触れた瞬間にすぐ効果が出るから…


「階段から落ちた時に触れたってことに」



階段を見つめる。そこから落下した経路を辿り…床を見てみると。


「気のせいとはいえないような。ここだけ汚れてる」


白に近いクリーム色の床だったもの。長い時間を経て、全体的に埃が溜まっていて灰色に変色している。

その中で、1箇所だけちょっと赤っぽい色に



「……夜見入さんの、血?」








………………………………next…→……






1階。



真に言われ"名簿"を探すことになった凪咲は病院の入り口付近まで戻ってきていた。



「確か真が鍵を見たって…あ、この奥かな」


ガラスの破片を風魔法で端に寄せ、カウンターの裏へ入る。

残された物に目を向け、何が必要かを考えながら


「鍵は全部タグが付いてるし持ってた方がいいよね。…こんな所に解かれた包帯が落ちてるのはなんか微妙だけど…燃やせるし一応持っとこうかな」


ボードから1本ずつ確認しながら鍵を取る。


「第3診察室。控え室。備品倉庫。屋上。他の鍵はどうしたんだろう」


凪咲はまず第3診察室の鍵を右手に握り、該当する部屋を探した。


「入ってきた時はパパッと確認した程度だったけど診察室が4部屋あったはずだから」


廊下を歩き、並ぶ扉にライトを向けていく。


「第1診察室…で、第2診察室。じゃあ次が」


そこで凪咲の足が止まった。


「……あれ?第4診察室?」


見間違えたのか。

もう1度順番に確認するがやはり第2診察室の次は第4診察室だった。


「4と3が逆になってるとかは…第5診察室…え?3は?」


部屋の名前を確認し、再び第1診察室の前へ戻ると今度は扉の手すりを掴んで開けられるか試すことにした。


「開かない。壊せば入れるだろうけど」


第2診察室、第4診察室、第5診察室も鍵がかかっているのを確認し


「じゃなきゃ鍵なんて要らないもんね。…じゃあ、開けてみようかな」


鍵をポケットに入れると代わりにどこからともなく剣を取り出す。

閉ざされた扉の前に立ち、


「ふっ!!」


ガシャァン!!大きな音と共に扉が縦に真っ二つになり、支えを失った片割れが廊下に倒れた。


「まずは第1診察室から」


入ってすぐ気づくのは、クモの巣がそこら中にあるということ。

患者を診るための簡易ベッドを隠す薄ピンクのカーテンは白い糸に好き放題に侵されていた。


「でも名簿とかって個人情報だし…さすがにそこら辺にポンと置いておくようなことは無さそう」


と言いつつ凪咲はデスクの引き出しを調べる。

もちろんここにも鍵がかかっているのだが


「せーの」


ガンッ!!横から蹴りを入れるとツー…と引き出しが勝手に開く。


「ん…なんだろうこれ。…うわ、ラブレターだ。看護師から医者にかな。……うんうん。奥さんがいても私は大丈夫ですって結構自分勝手な…」


その他の引き出しも漁ってみるがラブレターほどのものは無かった。


「面白そうなもの探してるわけじゃないんだけど…次は第2診察室」







………………………………next…→……







「やっぱり血に見える…かも」


となると覗きの指輪は体に触れずとも、血や唾液などの体液でも反応すると考えるべきか。


「でも、本当にこんなのにちょっと触っただけで?」


軽い気持ちで指先で床に触れてみた…






















「ケンジさぁん…あったかい。あなたの血がとってもあったかいの」


「おっ…こ…っ…」


腹が痛い。こいつの手が俺の腹の中を掻き乱している。

あまりの痛さに呼吸をするのがやっとだ。


「あのね、ケンジさん。天使様の体になるためには余計なものを取り除かなければいけないの。これとか、これとか」


ギュッと俺の中のものを握り潰そうとしてくる。

…体が震えてきた。寒いわけじゃないのに。


「そこら辺に捨てたりしない。大切なケンジさんの一部だもの。いつまでも私と一緒。約束するから…」


「う"ぅ…」


鋭い痛み。……ヴツヴツと音を立…


「っ!…ふっ、ふっ…ふっ」


「ケンジさぁん。あなたは私のどこが好きだったの?」


そこは…胃


「私の作るもの全然食べてくれないから心配してたのに」


…返してくれ、とは言えない。もう取り戻せそうにない。


「ずっと、食欲がないって言って。どうしてもってひと口食べてもらったら今度はずっとトイレに行っちゃう」


ああ…引きずり出される。中身が。


「あなたの"ハート"は最後にもらって、私が食べちゃうから。うふふふふ…」


そう。そうだ。この歯。

半里台の人間は、犬歯が多い。普通の人間の倍以上はある。

この歯が魚や鶏を生きたまま食らうのを見てきた。

それを俺にも向けるのか。


「あ、いけない。そろそろ時間ね。行きましょうか」


「…ぐぅう"…」


腹から手が抜けた。

どこを見ても俺の血で真っ赤だ。

最悪だ。なんでまだ死なない?

楽になりたい。今すぐ。ここから逃げたい。こいつから離れたい。


「終わるまでにあと2人くらい死んでもらわなきゃ。話しすぎちゃった…私にとってケンジさんは特別だから」


そんな特別な人の頭を鷲掴みにして引きずるのか、お前は。

髪の毛を掴むどころか、爪を頭皮に突き刺してやがる。

もう、されるがままだ。痛いだけ。何もかも失って、俺には痛みだけが残された。


「2階に行く前に他の病室も見ておかないと」


1階から3階に来るまで…出会った人間を片っ端から殺してきたのか、こいつは。

疑うまでもない。どうせ殺したんだ。


「304はどうかしら。…いない」


俺を…離してくれ…抵抗もできない体が床に擦れて情けないから。


「次は302ね。あら?」



タッタッタッ…



逃げ遅れたのがいたのか。

頼む。逃げ切ってくれ


「まさか。ちゃんと殺す。殺す殺す殺す殺す殺す…」


体が何度も激しく床に打ちつけられる。

走る時も俺を手放さないのか。

でも不思議なもんだ。まだまだ腹の痛みが優先される。

今の俺は血のペンキを塗るハケってとこか。



「ひぃぃぃぃいいっ!!」



こっちに振り返り声を上げたのはおばさんだ。

見覚えがある。このおばさん。入院生活を勘違いしてて、飯は寿司がいいとか肩揉めとか看護師に無理言ってよく困らせてた。

…命の危機だってのに、なんで小走りなんだよ。おばさん。


「ケンジさぁん…少しだけ、ここで待っていてね」


「う"っ」


はは。置いてかれた。

おばさんは廊下の奥の非常用階段から屋上に逃げるつもりか。

屋上に行ってその後どうするつもりなんだろう。


「………ぁ…」


俺も、目の前に階段がある。

ここから下に…1階までとはいかなくても…2階のどこかに隠れてあいつに捕まる前に…


「っ…ぁ…っ…」


ほふく前進って、難しいな。

力が入らない。下半身を切り離せたら、もう少し早く動けそうなのに。

あと少し。段差に手をかけて


「っ、うっ、ふ、けぇっ」


こりゃいい。転げ落ちる方がずっと早い。

ヒヤッとしたが、今さら怪我したって状況は変わらない。

遠慮なく転がろう。


「かっ?どぅふっ、ぶっ、」


衝撃で舌を強く噛んだ。

でも口の中の血の味はさっきからずっと変わらない。

どうだっていいんだ。俺は2階まで来られた。

…そうだ。看護師達の控え室があるはず。そこに行こう。

おばさんは今頃殺されているだろうが、もう構わない。時間稼ぎになってくれればいい。


「………、……」


あの世で会えますように。

看護師さんのロッカーはどこなんだろう。

あの人を近くに感じたい。

1人きりで。

それでいい。それが俺の死ぬ場所でいい。



「ケンジさぁぁぁぁァアアん!!」



そんな。そんな。嫌だ。嫌だ。来るな!来ないでくれ!!



「ダメじゃない、勝手に。それに。他の女を感じて死ぬなんて」



こっちに…来るな。



「ぜーんぶ。聞こえてた。でも残念だけど、うふふふふ…あなた、階段から落ちて肩を痛めたのね。少しも動いていない。その場で腕を動かして…布団の上で泳いでるつもりになってる馬鹿な子供みたい」



…そんな……。



「浮気者。死んで終わりだと思うな。むしろ、死んでからが始まり…はぁあっ…あっ、あっ」



なんだ…急に動きが止まってピクピクして…



「…あああっ!!終わってしまったあ!!もう少しだったのに!!あの女といい!ケンジさん!あなたもよ!」



余裕がなくなって激怒。

…ついて…いけ…なんか……眠く…



「許さないわぁ…!!その頭、踏み砕いて…!」


「そこまでだ」


「っ!?誰よ!!」



………。




「我らが大天使に捧げる肉体を踏み砕く?馬鹿なことを」


「………!!あ、あなたは…」



…だれだ……白い……医者か?



「お前のような度が過ぎる者は不要だ」


「あぁっ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


「大天使への不敬、その身を以て償え」


「お願いします!許して、許してください!六島先生!」



((READ))



…赤黒い…光……ぁ…寒い……眠い……


……俺は……もう…しぬ…の……か。






「心身共に改めて大天使に仕えろ。…今からお前の名は、オガルだ」























「……っ、…ぁ……ぁ…っ、く、ぁ…」


し、しぬ…しぬ…!いきが、できな、い、あ、


スマ………でん……な…さ……









………………………………next…→……







第5診察室。


「うーん、ここまで収穫なし。基本的に道具とかは何も残されてないみたいだし…」



どうせ同じ結果なら他の部屋を探した方がいいと考えた凪咲だったが。


「でもお父さんよく言ってたなぁ…こういうどうでもいい部屋にこそ重要なアイテムとか情報があるって…でもこれゲームじゃないし」


念のため。一応。と呟きながら入室。

しかし他の診察室と見た目は変わらず。

唯一変化があるとしたらクモの巣があったりなかったりする事くらいか。



「引き出し…オープン」


ガンッ!!


慣れたやり方で引き出しの鍵を強引に外す。

蹴られた衝撃で押し出されて引き出しが勝手に開くはずだが…あまり動かない。


「ん?なんだろ。…なんか引っかかったのかな…あ、手帳」


手で引き出しを強引に開け、中からビンテージ感が漂う革の手帳を見つける。




「へぇ。女医さんもいたんだ。…三股してるみたいだけど」


手帳の半分はスケジュール帳になっていて、もう半分はメモ帳になっていた。

丸みを帯びた字で、

3日の枠に牛さんとお食事

10日の枠には豚さんとショッピング

12日の枠には売った金で虎さんへプレゼント

と書いてある。


「本命は虎さんで牛さんとは遊び。豚さんは…残念。名前でバレないようにその人のイメージで書いたのかな」



パラパラと捲り、メモ帳に目を通す。



「えっと。…セクハラの愚痴が多いかな。……ん?六島先生は精神科医だ。咳や発熱の原因が分かるわけじゃないのにどうして彼に診てもらいたがるのか理解できない。なんだろ。……んー」


愚痴には変わりないのだが、少し色が違う。

似たような愚痴を探してみると


「あった。最近気づいたことがある。六島先生に診てもらいたいという患者が増えると突然…大量に人が死ぬ。偶然だろう。でも、不吉だ。……六島先生…?」


六島先生という人物が気になる凪咲。

1ページずつ丁寧に調べて他に何か書かれていないか探すがなかなか見つからない。


「……あ、このページ以降は書かれてない。最後に書いたのは…六島先生は偉大な人。神のよう。彼の言葉を聞いて胸の中の嫌なものが無くなった。心がスッキリした。はぁ、また診てもらいたい…」


そこから先は、あえて声には出さなかった。

その代わりに凪咲は


「この六島先生…カルト教団か何か作ってそう」


感想を述べ、手帳を戻した。



「じゃあ次はこの鍵のどれかを使う…」


どこを探すか決めようと鍵を取り出したところで着信音が鳴る。

スマホの画面には


「真…!」








………………………to be continued…→…


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