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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
チョコレート戦争
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第8話「チョコレート…!」





現世に別れを。

そんなことを言われると"来世"がある前提なのかと考えてしまう。

1度きりの人生。来世。どちらが正しいのかなんて誰にも分からないことなのに。

もしかしたらどちらでもないかもしれない。




「痛っ。私の武器も対象なんだね」


少し遅れて凪咲さんも双剣をその場で手放した。




「柊木様!今のトゥカミは鷹と狼の力を体に宿します!蹴りと噛みつきに注意を!」


「は、はい!」


「ダン。トゥカミは動物の使者から力を得られるってこと?」


「ああ。だが厄介なことに力を与えた使者も当然のように戦闘に参加する」


「………凪咲さん、ちょっと」


「なに?」


「あの熊、今は動きませんが復帰されると大変なことになります。川に流すので力を貸してください」


「いいよ。分かった」



もし居合の達人である猿の使者が残っていたら、あの代行もそうなっていたのだろうか。

…猿は反撃、迎撃が特徴。


熊の使者は特に何かの達人とかではなさそうだったが、力を発揮する前に倒してしまったのか。

それか、熊そのものの体の強さだったり?だとしたら、

…熊は筋力や体の強さが特徴。



「お、重い…」


熊の体に触れてみると石のように硬い。

本物に触れたことが無いから決めつけることはできないが…それでも体そのものに特別な力があるように思う。


「真、どいて」


押しても動きそうにないと考えた凪咲さんは少し助走を…





「エーーールルウ!!」



「来るぞ!」



ダンさんの呼びかけに振り向いた。

少し遅れて背後では熊が川に落ちたであろう大きな音がした。


「蹴ったの」


「次はあの代行ですね…!」



トゥカミの目つきが変わった。

その視線の鋭さは凶器だ。

……僕を睨んでる。



「エルァッ!」



「跳んだ!!」


高い。ものすごいスピードで地面を離れ、空高くまで…



「…………ァ…………ァ………ェェェェァ……ェェェェァァァアアアアア!!!」



そして落ちてきた。

え、あ、落下速度は


「真!危ない!」


「分かってますぅ!!」


凪咲さんは右へ飛び退く。

僕は左へ飛び込んだ。

受け身だとか、着地時に前転だとか…そういったアクションが出来るわけもなく。


「いたた…」


胸にゴツゴツした石が当たって痛い。

あえて言うなら、顎はぶつけなかった。それはよかった。



ドガァァッ!!


僕達がいた場所に落ちてきたトゥカミ。

普通に考えれば自滅行為だ。

そこらのマンションよりも高い所から高速で落ちてきて無傷なはずがない。


……でも無傷で済んでしまう。

むしろ、落下地点の地面が無事じゃない。

石が粉々になって…ちょっとしたクレーターのような形に…



「行け。ジュリア」「はい、ご主人様」


背後を狙ってジュリアさんが蹴りを放つ。


「ィィヤッ!!」


トゥカミはというと、槍を逆向きに持ち替えて後ろを見ずに突き攻撃…!


「甘い。ギブさせてあげる」


さすが凪咲さん!

突きの瞬間に接近しトゥカミの腹部にパンチを


「カッ!!」


「うそっ!?」


トゥカミは首を前に突き出し、凪咲さんに噛みつこうとした。


「いただきました」


「イッ!イッ!」


「っ…今です!攻撃を!」


ジュリアさんは突き攻撃を回避し、槍を掴んだみたいだ。

取り戻そうと引っ張るトゥカミだが、さすがにジュリアさんも力負けはしない。


「しっかり抑えてて!」


凪咲さんの声に、ダンさんが動く。

ジュリアさんと一緒に槍を掴み


「体勢を崩す!決めるぞ…!」


「はい!」


僕は足下にある中で1番大きい石を拾った。

ずっしりと重い…両手で持たないと落としてしまいそうだ。



「はぁっ!」「ふぅうっ!」


ダンさん達がタイミングを合わせて強く引っ張ると、トゥカミはバランスを崩してよろけた。


今だ。



「う、うおおおお!」


凪咲さんが足を真っ直ぐ振り上げ、トゥカミの顎に蹴りが直撃。

上を向いたトゥカミの顔を狙い、僕は石を振り下ろ


「ンウ!!」


「ぐぅっ?」


一瞬だ。


何が起きたのかを理解する前に僕は


ザバァァン!!



……冷たい。



川に落ちたのは分かった。

でも、体は思ったように動かない。

水が冷たいからなのか。

……あぁ。


「ごぼっ」


下腹部が熱い。

これが原因だ。どうなっているのか分からないが…


そんなことよりも、この息苦しさをどうにかしなければ。

このままでは溺れて死ぬ。

焦る気持ちより先行するのは、どうすればいいのかという思考。


人間は本当に危険な時には、慌てつつも冷静に考えるように出来ているのかもしれない。


どうにかしてひっくりかえれば…水面に顔が…


「ごぼっ」


大変だ。水を飲んっ


「がぼっ…がっ…ごぼあ…!」


……前言撤回だ。人間は、本当に危険な時には何も考えられなくなる。



「……がっ…ごが…」


息ができない。

あまりの苦しさにようやく腕が動いたが、もう遅い。

もがいても、もがいても、水の外に顔を持ち上げられない。


「っ!くっ!間に合ったか…!?」


……ダンさん?ダンさんだ。

僕を助けに…


「んぐっふごほっ!」


引き上げられた。川から出られた。

生を求めて、咳をして、とにかく呼吸を


「水を吐き出したまえ。慌てるな。ゆっくりでも十分息は吸える。…さぁ」


「…げふっ!…っ……」


飲み込んだ水が口から排出された。

マーライオンみたいだ…。

数回勢いよく吐くと楽になってきた。


「ゆっくりでいい。息をしたまえ」


「………」


お待ちかねの酸素だ。体が欲している。

普段当たり前に呼吸出来ることがどれだけありがたいことか…


「仕方ない。君達がいてもトゥカミには勝てないか…諦めるとしよう。退くぞ」


「………」


僕は小魚まで飲み込んでいたらしい。

石の上でピチピチと跳ねている。


「立てるか」


小魚を指でつまみ、川へ放った。

ダンさんに支えられながら立ち上がると…まだ凪咲さん達は戦闘中だった。



2人とも石を投げて、隙を狙って接近してを繰り返している。

トゥカミは石をぶつけられるのは諦めて、2人を近づけないようにしている。



「先に離れる。距離を稼いだらジュリアが君のパートナーと共に逃走する」


「…はい」


………ん?


「ダンさん」


「ああ」


「今創造の書は持ってますか」


「切れ端なら持っている。濡れてしまったが…それがどうかしたのか?」


「使えますか…それ」


「……何を創造する」


そうだ。ボディーガードを創造するために本か本の一部を持ち歩く必要がある。

ダンさんはびしょ濡れの紙の切れ端を取り出した。

滲んでいるが…ボディーガードについて書き込まれている。


余白は十分だ。


「ダンさん…再構築を…」


「真。すまないが君の体は後で」


「僕じゃなくて、トゥカミに…その…再構築の悪いバージョンを」


「……弱体化か。やってみよう」


「濡れてますけど書けますか」


「創造の書本体とページの切れ端では少しだけルールが異なる。切れ端ならば多少濡れていても通常通り使用可能だ…破けなければの話だが…少し集中する」


「はい」


距離は50m以上離れている…。

やってみよう。


凪咲さん。聞こえてますか。

ダンさんの再構築を使ってトゥカミを弱体化できないか試したいと思います。…もう少し、時間を。

あと、もし出来たらでいいんですけど、……炎魔法をぶつけたらトゥカミを燃やせませんか?

衣服や、それこそ創造の書を持ち歩いているならかなり敏感に反応するはずです。

燃やしてしまえば…



「はぁっ!」


それに応えるように、凪咲さんが炎魔法を使用した。

トゥカミは分かりやすく"それだけは当たる訳にはいかない"と、動き回る。

が、炎魔法に集中しすぎてジュリアさんの投石攻撃が頭部にまで直撃している。



「出来た。君はここで」


「僕も行きます」


「そうか。私は解決を急ぐ。自力で歩きたまえ」


「はい!」


ダンさんが走っていく。

今更だが、よく僕を助けられたなと思う。

着物で川に入るのって…



「ンアアアゥ!!」


あ。

凪咲さんの炎魔法が当たっ…腕で防御したみたいだ。


大きな隙が生まれて、ジュリアさんが腰を殴って…。


………2人で協力して槍を取り上げた。

そこにダンさんが到着して。



((READ))


「イィィィアアウ!!!」


あまり聞いたことのないタイプの悲鳴が聞こえた。





………………………………next…→……






「どうして声を発さない?」


トゥカミには勝てた…みたいだ。

体育座りしているのを4人で囲んでいる。


が、トゥカミはずっと黙っていた。


「あの。ダンさん…もしかしてですけど、再構築した時にやり過ぎてしまったとか…なんか、声が出なくなるみたいな…?」


「まさか。……だが、そうか。肉体が弱っているから話す力すら惜しいのか」


「どれくらい弱らせたんですか」


「突然動き出されても困ると考えた。想像しやすく言うとしたら余命10日。逃れられない死を意識しているはずだ」


「やり過ぎ。どうするの?あ。この状態で私達の目的を話して、理解してくれたら再構築を解いてあげるっていうのは?」


「嘘をつく可能性がある。また真が川に落とされたらどうする」


「そしたら全力で殺すよ」


「な、凪咲さん…」



「………!」



すると、トゥカミに変化が。

凪咲さんを見上げ、睨んでいる。


「……何?」


「弱らせたままにしておくべきだろう」


「ご主人様。トゥカミは…。なんでしょう?」


「どうした」


「目を見れば、敵意や殺意のそれではないことは分かります。再構築を解除しても戦闘にはならないと考えてもよさそうです」


「もしもの時はまた炎魔法でどうにかするよ。代行にとって炎は天敵だもんね?」


手のひらに炎を出現させてトゥカミに見せつける。


「驚きだ。魔法…か」


「凪咲さんは父親が勇者で母親が魔導師…魔法使いで。レベル2になってから魔法をよく使うようになったんです」


「…任せてもいいか?」


「うん。もうさっきみたいにはならない。戦うならかなり一方的な結果になるよ」



……パチン!


ダンさんが指を鳴らすと、トゥカミは自分の手を見た。

表情が柔らかくなった…解除されたみたいだ。



「………」


「急に立たないで。次勝手に動いたら燃やす」


立ち上がったトゥカミ。両手を上げ、凪咲さんを見ている。



…………グゥゥゥゥ…。



「ん、なんですか?今の音」


「まさか…!」


「トゥカミ。何もしないで」



「違います。今の音は…」


「ジュリア。今のが何か分かるのか」


「はい」




「………腹が、減った」




シーン…とした。

川の音がよく聞こえて、なんだかちょっと面白くなってしまって。



「ぷっ…」


「ふふっ」


「空腹だと…」


「はい。もしかして、服の中に何か食べ物を?」



笑う僕達にジュリアさんが聞いてきた。


「あ。食べ物なら…」


「……そ、それは…!」



凪咲さんが取り出したのは、チョコレートだ。

透明な袋に入ったそれはひと口サイズに細かく砕かれていて



「チョコレート…!」


「食べたいの?…いいよ、はい。どうぞ」


トゥカミは袋を受け取るとチョコレートを食べ始めた。

…すごいがっつき具合だ。



「そんなにお腹空いてたの?」


「川の魚を捕まえて食べていたのは見たことがある。あまり困っているようには」


「にしては食欲すごくないですか…?」


「皆でちょっとずつ食べようかなって多めに入れてきたけど」


「もうすぐ完食ですよ」




「……アンムラマ。アンムラマ」



無事完食。手を合わせて凪咲さんに何度もお辞儀をしている。

久しぶりの食事…みたいな感謝の仕方だ。



「チョコレート、特別な食べ物」


「そうなの?」


「アマトゥワ族、チョコレートを神の食べ物だと崇めていた」


「アマトゥワ族。戦闘部族って聞いてましたけど、それが…」


「感謝。神の食べ物もらった」


「…ねぇ、もしかして私…今かなり感謝されてる?」


トゥカミは話しながらもお辞儀を繰り返し、ついには土下座まで始めた。


「こ、これなら話を聞けるんじゃないでしょうか…」


「頼む。君から聞いてくれたまえ」


「うん…やってみる…」







………………………to be continued…→…



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