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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
チョコレート戦争
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第7話「トゥカミ」





ドタドタと足音がする。



「ダンさん、この旅館に2階はありますか?」


「この部屋の真上には無い。この音は君のパートナーが追い詰めた結果だろう」


「僕ちょっと行ってきます!」


「待て…相手は」


「誰でも関係ないです。行ってきます!」



1人で戦うのが難しい相手かもしれない。

凪咲さん以上に速い、防御が間に合わないほど手数が多い、今すぐ思いつかないだけできっと色んな可能性がある。


1人で戦わせるなんて出来ない。



室内用のスリッパも履かないまま旅館の中を走り、


「お客様!?」


「すいません!このサンダル借ります!」


掃き掃除を終えて戻ってきた男性従業員のサンダルを履いて外へ出た。


建物の裏に回りこむ…と



「いた…!」


凪咲さんが屋根の上で舞っていた。

双剣を振りながら空中で回転して…


「相手は…」


焦げ茶の毛が太陽光のおかげでより明るく見える。

少し猫背気味で…それでも凪咲さんと同じくらいの身長。…腕は太く見えるが毛でそう見えているだけかもしれない。

…見えにくい。でも、何かと聞かれれば"猿"だ。



「はぁっ!!」


上手い。凪咲さんが猿の足元を狙って転ばせた。

猿が屋根から転がり落ちる…!


落下地点に先回りし、


「展開!!」


自分の腕と同じくらいの長さの短刀。

これなら、武器化させたとしても無理の度合いでは軽い方だ。


そして、バットを持つように構え…


「ここだぁっ!!」


落下してきた猿に全力で振って



チィィンッ!!!


「い"っ!?」


手に強い衝撃。肉を打つ、もしくは断ち切るはずだったのに、どうして…


「真!」


追いかけて降りてきた凪咲さんが猿に接近。攻撃を仕掛けるが


チィィンッ!!!


「うっ…」


「弾かれた!」


ん?あの猿…腕の動きが…なんだろう。どこかで見たことのある動作なのに思い出せない。



「もう!」


凪咲さんが右の剣先に炎を出現させた。

それを振り払うと猿に向かって炎が飛んでいく。



「キィヤッ!」


「あっ」


思い出した。

居合斬り…!!


それに気づけたのはよかったが、猿は四足歩行で走り去っていく…!


「逃げられちゃった…真、怪我はしてない?」


「大丈夫です。凪咲さんこそ怪我はありませんか?」


「うん」


「猿でしたよね」


「猿だった。攻撃してもピョンピョン跳ねて避けるし、追い詰めたと思ったら」


「居合斬りでした」


「……あぁ…そうなんだ。じゃあ、あの猿は武器を持ってたってこと?」


「毛の中に隠してるとかでしょうか。それか、爪が刃物と同じくらい硬いとか…。ただの猿じゃないことは間違いないです」


「うん。使者だと思う」



「柊木様」


「ジュリアさん。猿は逃げてしまいました」


「ご主人様が呼んでいます。中にお戻りください」






………………………………next…→……






部屋に戻ると、ダンさんがテーブルに紙を並べていた。


「怪我は?」


「大丈夫です。その紙はなんですか?」


「資料だ。追っている代行について分かっていることはそう多くない…ただ、動物の使者を扱うということだけは確定している」


「動物の使者ですか」



資料を見てみると…代行の姿を隠し撮りした写真が。


「戦闘部族みたいなことは聞いてましたけど、結構そのまんまですよねこれ」


焼けた肌というより元々そういう肌の色なのだろう。褐色の肌に白いシャツ。そして紺色のロングスカート。

…髪は…ない。スキンヘッドだ。

耳には大きい輪っかのアクセサリー…あと額に何かのマークもある。

そして何より目立つのは左手に持つ銀の槍。槍の先端部には赤、青、緑の…宝石?が埋め込まれている。



「トゥカミという名だ。出身国は不明。恐らく国の名を持たない場所で生まれ育ったのだろう」


「それってどこかのジャングルの奥深い所にある村、みたいなことですか?」


「真。それより見て、使者の数が」


「どれですか?…うわ」


鷹、熊、猿、ラクダ、キリン、ダチョウ、サイ…まだまだある。


「それは私達が確認した使者だ。まだまだ手持ちは多いと思った方がいい」


「使者をこんなに?さっきの猿は普通の猿じゃなかったです」


「知っている。居合の達人だ」


「…他の動物も普通じゃないんですよねきっと」


「知りたければ話そう。だが…」


ダンさんの顔がピクピクと痙攣している。

相当な曲者揃いなのだろう。


「トゥカミは近くの川沿いに潜伏しています。何度かご主人様と共に襲撃しましたが使者の数が多すぎるためトゥカミに話を聞くことは出来ませんでした」


「襲撃って…ねぇ、普通に挨拶して普通に話を聞くとかは出来ないの?」


「無理だ。代行や使者を見抜くらしく、同類だと分かると」


「ど、動物が来るんですね…!」


「向こうから接触してきたのは今回が初めてだ。そろそろ決着をつけようということか」


「ご主人様。私達には味方がいますから、今度はこちらから」


「戦う気満々ですね…」


「少なくとも使者を無力化する必要がある」


「ねぇ。トゥカミに話を聞くって、内容は?」


「創造の書の歴史について。知っていることを全て知りたい」


「知ってどうするの?」


「表には決して出ることのない歴史だ。このままではいつか、それを知る一部の人間にも忘れ去られ…この世から無くなってしまう」


「ロマンってやつ…そっか」


「協力してくれるか」


「私は真についていく」


「…え、選択権を僕にパスするんですか」


「うーん…選択権っていうか、カッコつけるチャンスっていうか」


「よく分かりませんが…協力します。早速作戦会議を始めましょう」


「感謝する。だが作戦会議は必要ない」


「……せめて僕の嫌な予感が外れますように。まさか、このまま行ってトゥカミって人と」


「その通りだ。殺しはしない。力を示す」




僕なりに解釈するとしたら、平和的暴力といったところか。







………………………………next…→……






ジュリアさんが先頭を歩き僕達を案内してくれる。



旅館を出て10分ほど。

そこそこ大きい橋が見えてきて、その下には



「川です」


「ですね」


「あれがトゥカミの寝床です」


「え?」


遠く…遠く…さらに遠く。

川辺に積み上がった石…と近くにドラム缶がある。


「あの。ジュリアさん。家とかは」


「あれです」


「…石…ですか?」


「あれです」


「丸みを帯びた石を枕にしている。ドラム缶は暖を取るためのものだ」


「へ、へぇ…そうなんですね」



周りにはちゃんとした家がたくさんあるのに。

夏場のレジャースポットみたいな場所で暮らしているなんて。


「大きさがバラバラの石…気をつけてね。歩きにくいし、戦闘中は距離を詰めるのも逃げるのも簡単じゃなくなる」


「わ、分かりました」


「行こう」


動物の使者…僕の予想が正しければ、鷹とか空を飛べる使者が僕達を見つけてすでに代行に知らせているはず。

それに、川の中にも使者が潜んでいるだろう…ワニとか…?



橋の横から降りて、川辺を移動する。

拳ほどの石、枕にできそうな石、小粒な石…こうして見てみるとたしかに色んな石がある。

気をつけて歩こう。転ぶのも危険だし、滑って川に落ちるなんてのは最悪の展開だ。



「来たぞ」


「え?」



向こうから…うわ、熊だ。熊が走ってくる…!!



「大きくないですか…!危なくないですか…!!」


「ジュリア」「はい。ご主人様」



着物が邪魔にならないのが不思議だ。

アニメの実写映画を見ている気分で、ジュリアさんは熊にハイキックで迎え撃った。



「っ、危ない!」


凪咲さんがダンさんの前に移動して…何かを切った。


「投石か!すまない」



((READ))



創造と同時にスーツが3着…スーツも創造していたのか…!



凪咲さん、ボディーガードというダンさんの創造です。彼の護衛は大丈夫なので


「分かってる!あの猿と戦う!」


石を投げてきたのは旅館に来ていた猿の使者だった。

対岸で次の石を拾っている間に、凪咲さんが川を飛び越える…



「居合斬り?連続攻撃ならどう!?」


川の水が…!これも魔法の力…!

水を巻き上げて球体に。そして猿に向かって


「ウォーターブラスト。ふふっ、」


猿が居合の構えを…あ


「キィッ!」



離れて見ていればすぐ分かる。

凪咲さんはあの水球をぶつけるつもりはない。

猿の視線を誘導して、水球に集中させ、



ザァァン!!


真横から小さな津波で押し流した。


「川で泳いで遊んでて」



猿が川に流されていく。




「くうっ…」


「グオオオ!!」


「ジュリアさん!」


熊に力負けしている。

殴っても蹴っても熊は怯まず、彼女の攻撃を無視して腕を振り回している。

振り回した腕はジュリアさんに雑にぶつかり、体勢が崩れて…熊は立ち上がったまま両腕を上げた。

助けなければ。


「ふっ!!」


アイアン・カードを投げた。

真っ直ぐ。回転しながら。熊に命中するタイミングにしっかり合わせて



「展開!!」



大きめの玉に。



「グッ」


熊の胸の辺りに直撃した。

銃で撃たれたみたいな反応を見せ、苦しみながら2、3歩下がると仰向けで倒れた。



「…ふぅ…柊木様…」


「圧縮。ジュリアさん、熊を川に流しましょう」


「はい」





「エーーーーーーーアッ!!」




「ん?」


甲高い声。


「トゥカミ…」


すぐにジュリアさんが答えを教えてくれた。


左手に持った槍を何度も地面に叩きつけ、



「エーーーーーーーアッ!!」



「柊木様。下がってください」


言われるまま下がると、凪咲さんが隣に来た。


僕と入れ替わりでダンさんがジュリアさんの隣に立つと、




「黒き三日月!白き太陽!」



あ、ちゃんと日本語も話せたみたいだ。



「真……トゥカミ…かなり強いよ」


「………」


「猿と熊は手持ちの使者の中で最強の部類だ。それを負かした。…ようやく本気になったようだ」





「陽が沈むその時!お前たちの生も終わる!」



鷹が飛んできて左肩に乗った。

右足には…狼だ。狼が身を寄せている。



「チィっ!」


ダンさんのボディーガードが突然…


っ!!


バチッと右手に強い静電気が…


「痛っ!ちょっ、痛っ、痛っ!」


「真!」


「アイアン・カードを手放せ!トゥカミは創造物を使用不可にする!」


「使用不可ですか!?痛っ!この!せいでんきぃっ!みたいなのがっ!あっ!?」


アイアン・カードを手放すと…あ、楽になった。


「戦えるのは使者だけ。でも、向こうはそうでもなさそう。トゥカミ本人も気合い入ってる」






「現世に別れを告げるがいい」







………………………to be continued…→…


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