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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case6 _ 夢は叶えるもの
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第4話「夢にも思わなかった出来事」





「凪咲さん…!!」




夢のリピート再生。



「凪咲さん…!!」



現実の時間の流れと違うのか、かなり余裕がある。

同じ夢を何度も何度も。

…というかこれは夢なのか?

真っ暗闇でひたすら叫ぶだけのこれは本当に夢と言えるのだろうか。



田中さんは僕を殺さないのか?

時間をかけて殺すタイプなのか?

…もしかして、これが死…?


直前の何かを永遠に再生し続けるこれが?


無になるとか、すぐ転生するとか、地獄に行くとか、何か、何か変化は



「凪咲さん!!大好きだ!!」



…田中さんは代行…使者…どっちだったんだろう。

知らないふりをしている代行か。

創造されたことや大切なことを何も知らされていない使者か。

どちらでもなくて、超能力者とか?



「凪咲さん…!!」



もう分かった。



「凪咲さん…!!」



なんだか馬鹿にされているような気分だ。

最初は必死に見えたのに、少しずつ滑稽に見えてくる。


告白して振られたのか?

あんなものを見て、僕は恋愛をしたいと思うのだろうか。

互いを意識するくすぐったい気持ちや、相手を想う美しさとか、そんなものは本音を隠すための仮面で。

実際のところは性的な興味や欲求を満たすためだけのもの。

まだ繁殖のみを考えて営む動物の方がよっぽどいい。

無駄に感情を混ぜ込んであれこれと乗り越えた先にようやくたどり着く性行為に何の価値がある?

そんなもの、ただ黙々とこなせばいいだけの話ではないのか?



「凪咲さん…!!」



何度繰り返せば気が済むんだ。

必ず最初の呼びかけの前に痛みを感じさせるのがイライラする。

痛いのは痛いが、もうどうでもいい。

激痛も繰り返せば麻痺してしまうのだ。



「凪咲さん…!!」



「凪、凪咲さ、凪咲さん!!」



………今のは?



「な、な、凪、凪咲、な、」



ガリッ。




ああああああぁっ!!!!




ガリッ、ガリリッ。




うわあああああっ!!!!




ガリリリッ。




これは、直前に、現実で、見た、

タッちゃん、頭、噛まれ、歯が、

刺さっ、奥まで、痛い、こんな、

深く、痛い、痛い、痛い、痛い、

皮も、肉も、骨まで、どこまで、

抉れる、壊れる、頭が、脳みそ、

割れる、喰われる、全部、痛い、

まだ、死んで、なかった、痛い、

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、

助けて、嫌だ、死ぬ、もう死ぬ、

挟まれ、千切られ、すり潰され、

無くなる、全て、咀嚼、消える、

染みる、飲まれる、吸われ、る、

やめ、て、ころ、さ、ない、で、









………………………………next…→……






「………ぅ…?」



背中が熱い。

…目が開いた。…真っ暗じゃない。

息苦しい。頭が痛い。

髪が濡れ…垂れてる…血だ。



「いたいよぉ」


「痛い?あなたに殺された人達は痛いなんて言葉じゃ済まない思いをしたのに。そんな被害者みたいな言い方しないで」


「…しにたくないよぉ」


「甲子園を目指して頑張ってた野球部の全員がそう思ってたはず」


「……ゆるして」


「法で罰するなんて甘い。ここで死んで」


ごぽっ。


また背中が熱くなった。


「、真?生きてる?」


……分からない。


「よかった…死んでない…!!」


「たすけて…ぇ」


「真、聞こえる?今すぐ助けるから。病院に連れていくから」


…………。


「早く真から離れてっ!!」


「わたしはわるくないぃぃぃ!!」


「っ!まだこんなに…!」


「おそわれたぁぁ!おそわれたのぉ!あのひにぃっ!!?」


「腕を切るから」


「あのひとぉ!わたしぃぉっ!?いやああああああああっ!!」


「もう片方も。真に触らないで」


「わたし!?わたし!?ひがいしゃぁ!」


「っ!!」


「きゃあああああああアアアアアアっ!!??」




「真。しっかり…」


「……痛い」


「うん。痛そう。すぐ病院に行こ」


「壊れる…」


「大丈夫だから。絶対助かるから」


「…なぎ…さ」


「真!真っ!!しっかりして!真っ!!」








………………………………next…→……







"まだ"。



死んでない。

生きている。



肌寒い。




右手を除いて。



「……凪咲さん…」



目が痛い。瞼が腫れてるような感覚。

首を傾けるだけで吐き気が…ここは…


右を向くと、凪咲さんがいた。

僕の右手を両手で握って眠って…


ああ、病室なのか。ここは。

そういえば見覚えがある。


「…真…?」


凪咲さんが起きた。浅い眠りだったみたいだ。


「起きたぁっ…!」


…と思ったら切ない顔を…泣いてるのか。


「よかった…!!」


泣いて喜んでる。


「名前は?住所は?昨日食べたものとか思い出せる?」


どうしてそんなことを。


「頭を怪我してるから、記憶障害とか…とにかく、問題ないよね?真は真だよね?」


頭を怪我…。あれを経て、怪我という言葉で片付けられてしまうなんて。


「…大丈夫?」


全然。大丈夫じゃない。

身も心もボロボロだ。


これすらも夢かもしれない。そう思うと…ああ…。


「あのマネージャーは死んだ。真は生きてる。タッちゃんも生きてる」


今の自分が生きているとはとても思えない。


「あの時、私とタッちゃんは助かった。真のすぐ後に私も息を吐きかけられて眠っちゃって…。夢を見たんだけど」


良い夢だと田中さんが判断した。


「うん…。それで目覚めたら真が」


思い出したくない。すぐに記憶から消したい。


「ごめんね。レベル2になったのに、あの時すぐに反応出来なくて」


…水を。


「分かった。すぐ戻るから」



病室から…出ていった。




あの"大蛇"以来の衝撃だ。

されるがまま、たまたま助かった。

もう、もう嫌だ。

悪用する形になってしまっても、創造の力を使って、平和に、隠れて暮らしていたい。


他の代行に狙われなくなるような創造を…。

2度とあんな酷イーーーーーーーー


あ、


あ、


あ、


あ、


あ、



「水持ってき…真!!」



戻ってきた凪咲さんが初めて見る顔をして。

大慌てで看護師と医者がやってきて。


病室から運び出される寸前、最後に目にしたのは、



1月2日。



おかしいな、確かまだ年末のはずだったのに。





………………………………next…→……






「はーい!そ・れ・じゃ・あ…集まった本を数えたいと思いまーす!」


「あぅん」


「カゾエル」


「その前に電話かけねーと。あー、めんどくせ」


「あぁう?」


「ハヤク」


「あっ!もっしもーし!みんなのアイドル!オガルちゃんだよっ!!本がいっぱい集まったから電話したよー!……うん!」


「…あぁ。で?いや、こっちはもうねーよ。全員殺して奪ったんだからあるわけねーだろ」


「アトハ、ソッチデ」



都内。とあるホテルの一室。

最高級の部屋に1人の女。

ベッドの上に脱ぎ捨てられたのは彼女の一張羅。

派手な色の布、ボロ布、新聞紙…パッチワークで無理やり繋げられたそれは、世間で流行しているアイドルの衣装と形は同じだった。


女は電話を切るとそれもベッドの上に放り、部屋に用意されたバスローブを着る。



「7冊も見つけてきてやったのにありがとうの一言もねーのかよ。チッ」


そう言って睨みつけるのはテーブルに積まれた…創造の書。


「そういえばぁ。上手くいってるのかなー!?人間を無理やり使者にして従わせるってやつ!ポチッと!」


明るく元気にテレビの電源を入れ、チャンネルを変える。


「アー…ヤッテル。ヤキュウブ、ミンナシンダ。アタラシク、マネージャーモ」


「っても使者に変えたのマネージャーだろうよ。なんで死んでんの?つまんな。なにが夢見る若者の尊い生命だ。夢は見るんじゃなくて叶えるもんだっつーの」


「ふぅ。明日になったら本届けてあーげよっと!…みんなの"ママ"が帰ってくる日がもうすぐそこまで来てる!楽しみだなぁーー!」





………………………to be continued…→…


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