表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case6 _ 夢は叶えるもの
44/443

第3話「良い夢、悪い夢」





駅前。ファストフード店。


年末だとかそういうのは関係なくこういうお店は時間帯で混み具合が変わる。

僕達が入店したタイミングはまだ朝食メニューの時間帯だったが混む時間ではなかった。



「フライドポテトも良いですけど、ハッシュドポテトもこれはこれで」


「でも私はフライドポテトのみんなでつまめる感じが好きかな」


「…凪咲さん、マフィンが美味しいです…!!」


「ん。本当だ。今度家で真似してみる?」


「ぜひやりましょう!…あ、タッちゃんが来ました」



「なんですか、話って」



見てきたこと、それからマネージャーの田中さんに遭遇したことを話した。



「あぁ、田中さん…たしか彼氏が」


「マネージャーだしやっぱりモテる?」


「まぁ…」


……あまり考えてなかったけど、田中さんは可愛いに属する…のだろうか。

凪咲さんの魅力が強すぎて、他の女性が霞んでしまうのだろうか。

単純に支えてくれる女の子にグッとくるものなのか。


「……えぇっと、真?」


「はい」


「話聞いといてくれる?ちょっと手洗ってくる」


「……はい」


耳が赤かった。



「田中さんって、タッちゃん的にはどうなんですか?」


「え、俺ですか」


「青春真っ只中ですし、タッちゃんだって恋愛とかしますよね?」


「…まぁ…少しは」


「意外と田中さんに気があったり」


「い、いや…」


恋愛話が恥ずかしいのか。

もう少し照れてくれたら気があると仮定できるのに。


「あ。そうだ」


「………」


「タッちゃん、耳をこちらへ」


「え?」


「あまり人前で話す内容ではないので」


内緒話は大切だと、何かの小説で読んだ。

作者の個人的な見解かもしれないが…内緒話には秘密の共有を感じさせる効果があって、それにより警戒心が…うーん…代行になる前に読んだものだとさすがに詳細までは覚えていないか。


「……田中さんの裸の画像を見たことはありますか」


こちらに耳を預けてくれたタイミングで小声で聞いた。

タッちゃんはすぐに僕から離れて席に座り直すと何度も咳払いをした。

……これはさすがにYESだろう。


「あるんですね」


「無い!…です」


「彼氏が他の野球部員に見せた時、あなたの親友はその画像をもらったんじゃないでしょうか。そして話のネタとして、親友はあなたにも見せた」


「………っ」


「他の野球部員や親友はあくまでも特大スクープのような感覚だった。でもタッちゃん…あなたには違ったのでは?」


「…か、可哀想だと」


「他にも。画像を見てからは田中さんのことを意識するようになってしまったとか」


「そんなことは…!」


「彼女と話したことはありますか?」


「そりゃもちろん」


「画像を見た後は?」


「………何が言いたいんですか」


「真は恋愛バラエティ番組が大好きなの」


「え?」


「彼氏がいるけど、画像の件があるから関係の修復はまずありえない。野球部員達は特に田中さんに興味はなさそう。これでもしタッちゃんが彼女を好きになってたら…って期待しちゃってたんだよ」


…凪咲さん?


「あの。お2人は見たんですか?」


「見てない。どんな画像なの?」


「…言えません」


「じゃあタッちゃんは見たんだ」


「あ…」


「マネージャーも狙われるかもよ?野球部の関係者だし」


「………」


「そうだ。タッちゃんにこれを見てほしいんですけど」


「はい」


監視カメラの映像を見せた。


「この人、見たことありませんか?事件の夜でもそれ以外でも」


「…見たことないです。誰ですかこれ」


「ねえタッちゃん。犯人分かったよ」


「え?」「え?」


僕まで聞き返してしまってタッちゃんが凪咲さんを見てから僕を見た。


「今夜寮で集合しようよ。マネージャーにも連絡して来てもらって」


「…分かりました」


凪咲さん、本当に犯人が分かったんですか?


「全然」


「え?」「え?」


「ううん。なんでもない。夕方くらいにまた集合時間決めて連絡するから」


「あ、はい」





………………………………next…→……





一旦帰宅。



「凪咲さん。犯人分かってないんですよね?」


「うん。全然分からない。真の考えてた通りかもしれないとか、全く関係ない人かもしれないとか、結子かもとか。全部可能性しかないよね。答えは出てない」


「じゃあどうしてタッちゃんに」


「反応が見たかった。刑事ドラマとかでもあるでしょ?しっかり目を見てあなたが犯人なんじゃないですかって聞くやつ」


「……それで、どうでした?」


「微妙。でもタッちゃんがマネージャーのこと気になってるのは間違いないよ。絶対恋してる」


「本当ですか」


「裸の画像がどんなか聞いた時、すごい顔してた。あれで好きじゃなかったら私男性不信になるよ」


「そんな顔してたんですか…」


「真って学生時代に恋愛とかしてた?」


「………いえ」


ドラマなら…


「ドラマ見てただけじゃ厳しいかも。演技で表現するって限界あると思うし」


「恋してる顔…」


「うん。見てる方が恥ずかしくなっちゃうくらいの」


「………そうなんですね…」


「好きな人とかいなかったの?」


「え?…特には」


「ふーん」


「やたらモテてた人はいましたけど、周りが好きだから自分も好きになるかと言うと違いますもんね」


「全然恥ずかしがらないね。本当に無いんだ…」


「そういう凪咲さんはあるんですか?」


「…内緒」


「内緒!?そこは話してくれないんですか!」


「知りたいの?」


「はい!」


「どうして?」


「え…?いや、ほ、ほら、僕だけ話すのも」


「ふーん…。あ、洗濯しなくちゃ」


「ちょっと、逃げないでくださいよ!」


わざと無視をして家事を始めてしまった。



僕は掃除機を……それにしても、恋愛か…。

やっぱりドラマで見るものと実際に体験するものでは違うのだろうか。

一目惚れしたり、部活中の姿に惚れたり、図書室で同じ本を取ろうとして手が触れたり?

…俺様キャラが出てくると確かに現実味は……。


経験したことがない。…なんだかすごく人生損してるような。


…………。



「ニャア」


「……あ」


掃除機に乗って遊ぶソープ。

稼働して生まれる熱で暖まろうとしているのかも。


「ソープは恋愛…あった…」


登場する小説で、番外編にソープに恋をする猫が現れた。

1度はソープもその猫に想いを寄せる…が、相手の飼い主が外国への移住を決めたことを知ると関わることをやめてしまった。

唯一、ソープが相手の幸せを考えて行動した…と解釈した読者が多かったが、実際はいつもと変わらずでソープは自分の幸せのために行動したのだ。

別れにより自分が悲しくならないようにと…。


「ニャア」


「あ、待って登らないで」


掃除機のホースの蛇腹に爪を引っかけながら登ってくる。

そこから僕の腕に手をかけると…服が伸びる!


「あと爪が…痛い痛い痛い…」


なんとか服から引き離すとソープは別の部屋へ。

…ソープにしては珍しい。いつもは優しく寄り添ってくれるのに。


………少し袖がヨレヨレになってしまった。






………………………………next…→……






色んなモヤモヤを抱えたまま夜を迎えた。

昼食も夕食もあまり食べられなかった。


深く考えれば考えるほど泥沼というか…。


学生時代に戻ってやり直せたなら…なんて妄想でも結局良い結果は望めそうになかった。


後悔すらできない。




「真?」


「はい」


「着いたよ」


「ああ…ですね」


「元気ないけど大丈夫?」


「………」



そこにタッちゃんと田中さんもやってきた。

殺人現場に4人。タッちゃんの親友の部屋に入り話すことに。



「タッちゃんから聞いたんですけど、犯人が分かったって本当ですか?」


「うん」


凪咲さん…まだ嘘を。


「真。床に寝てくれる?」


「え?」


「ベッドは血が付いてるし」


「何するんですか?」


「再現、かな」


床に仰向けに寝てみる。


「ベッドと枕の血の染み。それと真を重ねて見てほしいんだけど、どう?」


「…頭と……」


「胸の辺り。どっちも致命傷が狙えるのにわざわざ両方攻撃してる」


「どうしてですか…」


「死体を見てないからなんとも。でもね、予想はできるよ」


「凪咲さん、ちょっといいですか」


「何?私も謎解きの語りやりたいんだけど」


「…ベッドの下にスマホが落ちてます」




思わぬ発見。



恐らく、襲われてる最中に助けを求めるメッセージを送信して…本人がベッド下に隠したのだろう。ベッドの高さからして腕を伸ばせば可能だ。


充電はまだ31%残っていた。



「ロックがかかってますね」


「0202。好きなアニメのキャラの誕生日です」


「さすが親友」


「…解除できました」



まずはメッセージの送信履歴を…


タッちゃんへのメッセージ…助けを求めた時のもの…他には…

ん?画像付きの…


「あ」


「え、あ…!!!」


何も考えず表示してしまった。

画面いっぱいに展開されたのは田中さんの恥ずかしい画像だった。


「っ!」


「たっ、田中さん!」


田中さんが部屋を飛び出して、タッちゃんがそれを追いかけた。


「…凪咲さん」


「真は悪くないよ」


「………」


全裸だ。全身が見られる大きな鏡に裸の自分を…それを撮影したようだ。

……これはタッちゃん宛のメッセージに添付されたものだ。

本文には…


「お前田中が好きって言ってたよな、おすそ分けだ…」


wwwwなんて面白半分に記号まで添えている。

……最低だ。


「なんだろう」


「ん?」


「僕、ずっと引っかかってたんです。恋愛したことないってことが」


「……私のせい…かな」


「でも、こんなのが青春なんでしょうか。こんなことをするのが恋愛なんでしょうか」


「これは良い例とは言えないけど」


「こんなものなら経験しなくていいですね。自慢げに話されても下品だとしか思えません」


「……真?」


「はぁ。馬鹿ですね、こんなことのために1日無駄にしました」


「………」


「野球部員だけでなく、タッちゃんにも画像は拡散された。ということはもう少し画像が拡散された範囲は広いでしょうね。田中さんが復讐のために殺したと見て良さそうです」


「…そう、だね」


「力ずくで吐かせます」


「………」



ガッカリして、腹が立った。


部屋を出ると通路の奥の方の部屋のドアが開いていた。

さすがに元彼の部屋には行かないか。


部屋まで移動する短い時間に思い出すのは若者が起こした事件のニュース。

世間を騒がせるレベルのニュースは昔と比べれば圧倒的に増えているだろう。

今の若者には、自由が与えられすぎたのだ。

なんでも許されてしまう環境が歪みを生み、悪を作り出す。


中学生がホームレスに暴行したり、高校生が裸の画像を拡散したり。


…僕はそういう時代にむしろ正しく生きていたわけだ。

なのにそれを


それを…それは何だ?



部屋に入った僕達が目にしたのは、化け物だった。


田中さんがタッちゃんの頭部に噛みついている。



「離れて!」


凪咲さんが引き離しにかかるが、すぐに諦めた。


「深い。無理に離したら頭皮ごと剥がれちゃいそう」


「…タッちゃんは痛がってませんね。眠ってます」


「真!それどころじゃ」


「吸ってるんでしょうか」


床に正座する田中さんにタッちゃんが背中を預けている形だ。

床に投げ出された彼の両手足からして脱力している…寝ているからリラックス状態なのか。

噛みついている部分はもちろん出血。ただ枕の染みほどではなく…まだ歯が突き刺さっているだけだ。


そして田中さんは僕達のことを全く気にしていない。

彼女の目の前で手を振ったり、声をかけても反応は


「真?助けないと!」


「………凪咲さん」


「私、何したらいい?どうする?」


「本を」


「え?」


「創造の書を出してください」


「今?なんで」


「早く」


「…分かった」


どこからともなく取り出された白の本。それを受け取り書き込む。



覗きの指輪

柊木 真 専用。

この指輪から覗くと対象を透かして見ることが出来る。

この指輪を身につけて触れると対象の思考を覗き見ることが出来る。



((READ))



結局いくら考えたところで、本人にしか分からないこともある。

場合によっては、考えてやることすら躊躇うこともある。

観察、考察力。それらを鍛えるのは悪くないが、いっそのこと答えを直接覗き見てしまえば…手間が省ける。



小さな光が漏れて、僕の右手を覆う。

人差し指に少しだけ重さを感じると創造が成功したと分かった。



「本をしまってください」


「…それ何?」


「カンニングです」


「え」


人の頭に噛み付く人を見たことはない。見たくもない。

明らかな異常行動だが、田中さんは殺そうとして噛みついているわけではなさそうだ。

となれば、答えを知りたい。

でも。恋人のためとはいえ自分の裸の画像を撮影して送るような人間の気持ちなんて分かりっこないのだ。



「答えを」


田中さんの肩に触れると…僕の脳内に流れ込んでくる。






………田中さんだ。

ここは…学校。下駄箱か。


「タッちゃん」



僕の視点はタッちゃんだ。

帰り際に田中さんに呼び止められた。



「あの…ね。私、アイツと別れたんだ」


「そうなんだ…。何かあったの?」


「うん。アイツ結構うるさくて。私が他の部員に優しくしてるとこ見ると後からグチグチ言うから喧嘩して…。そしたら秘密の画像を」


「見たよ」


「タッちゃんまで見たんだ…私馬鹿だよね」


「超エロかった」


「………」


「みんなじゃなくて俺だけが見てたら最高だった」


「え?」


「好きな人の裸。他の人に見てほしくないし」


「タッちゃん…」


「…俺、好きだから。田中のこと」


「タッちゃん…!!」



何だこれは。

男の妄想だとしてもこんなものが許されるのか?

意味不明だ。どういうことだ。



…タッちゃん、私の夢見てくれてたんだ…。



なるほど。今のは夢の一部始終か。

だとしても変な内容だ。



…良い夢。なら殺さない。



殺さない?良い夢だから?…野球部員を殺したのは田中さんで間違いないのか…?



…ごめんね。そのまま、良い夢見てね。




「…っ」


「真?」


「田中さんが正気に戻ります」


「……」



「…あぅ………」



タッちゃんの頭から口を離す。

その歯に、唇に、彼の血と髪の毛が付着していた。

唾液も相当出ていたのだろう、汚らしい糸も伸びた。



「犯人は田中さん。あなただったんですね」


「………」


「寝ている隙に頭に噛みつき、相手の見ている夢を共に見る。それが良い夢なら見逃し、悪い夢なら殺す。野球部員達は皆あなたをあざ笑う夢でも見ていたのでは?でも、タッちゃんは違った」


「…真、今のでそんなに分かったの?」


「田中さんは普通の人間ではありません。代行か使者です」


「………なんですか、その代行?使者?」


「ここまで来て知らないは通りませんよ」


「………知らないのに…」


「拘束して警察に」


「でもあなたも分かってない」


「え?」


「寝ている隙に、じゃなくて。寝かせてから、だから。…はぁっ…」


「うっ」



急接近してきた田中さんは僕の顔に息を吐きかけた。

それがやたら暖かくて不快で…力が…眠い…





………………………………next…→……






………ここは…どこっ、痛い。


腹、胸、肩…挙げたらキリがない。


腕も動かせない。

やっとの思いで目は開く…でも痛くてすぐに閉じたい…



…暗い。真っ暗だ。ここはどこだ。




「凪咲さん…!!」



意識とは関係なく…あ、そうだ。

田中さんにやられて…これは夢の中か。

だとしたら、これは僕の見る夢。

僕の視点。何があってこんなに重傷なんだろうか。



「凪咲さん…!!」



ひたすら彼女の名前を呼んでいる。



「凪咲さん…!!」



暗闇の中で。どんな夢なんだ。

これでは良い夢か悪い夢か判断するのも大変なのでは…



「大好きです!!ずっと!!」



………。



「あの時の言葉!嘘だったんですか!僕達は、最高のパートナーじゃなかったんですか!!」



……多分、悪い夢だ。



「凪咲さん!!大好きだ!!」




…………悪い夢。こんなの私も見たくない。



これは田中さんの声か。



…………殺してあげる。



ずるい。こんなの。初見殺し…とかいうやつだ。

能力を知っていなければ対策なんてできない。

しかも対策といっても田中さんの吐く息の届く範囲の外から一方的に殺す以外に無い。

そうしなければ、眠らされて夢を見られて勝手に判断されて生死が決まる。


というか僕はなんでこんな夢を見ているんだ。


………なんだったんだ。僕の人生は。

せめて、もっと派手に死にたかった。






………………………to be continued…→…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ