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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
聖夜の贈り物
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第8話「気をつけたいこと」





……クリスマス。

世間では24日に注目されがちだが、25日も同じくらい大切だ。


…………凪咲さんはまだ寝ている。だから今のうちに脳をフル回転させて考えておきたい。



たしかダンさんは代行から使者に口付けをしなくてはならない…そんな言い方をしていた。

でも、凪咲さんから頬に…された形でもレベル2になれた。

そうなると信頼関係を示すのに口付けが必要というだけでどちらからとかそういうのは…



「……ん………」



………まだ寝てる。よかった。

次の問題だ。

ダンさんはレベル2になることを赤ちゃんが一気に大人になるほどの成長率だと話していた。

…なんだか僕に抱きついている凪咲さんの体が変わった気がする。


こう…その…より大人な体に?色々とその…当たる面積というか。



「……ん………」


っ!!


「…………さむ……」


……………凪咲さん?


…………まだ寝てるみたいだ。



凪咲さんの体は昨日まで書き込みに使用された高校生当時のものが反映されていた。

それから体の変化があったということは、成人後は確定として…

赤ちゃんから大人だと…ん?じゃあもう少しで40さ


「おはよう…」


「っ、おはよう…ございます」


「朝冷えるね」


「そうですねっ!?あ、じゃあ暖房を」


「ごめん。もう少しこのままでお願い」


「……はい」


「レベル2。なれたね」


「そうですね。ただ、ずっと僕の頭の中が凪咲さんにだけ公開されてるっていうのは何か恥ずかしいです」


「…ずっとじゃないかも」


「え?」


「昨日は寝るまで真のことで頭がいっぱいになってて。多分だけど、代行の考えを読む間はそのことしか考えられないんじゃないかな」


「あぁ…!ジュリアさんってずっとダンさんのことしか考えてなさそうですもんね、言われてみたら。………」


「何も考えてなくても顔に出てるよ。本当に真のこと考えてた」


「その…考えてたっていうのは」


「悪いことじゃないよ。優しくしてくれるなぁとか、お父さんと違って家事も料理も出来るのいいなぁとか」


「……」


「どうかした?」


「凪咲さん」


「うん」


「ちょっと僕トイレに行ってきます。その間に確認しておいてほしいことがあるんですけど」


「なに?」


「自分の体の変化を…す、すいません!」


「え?あ、待っていきなり布団捲ったらさむ……うそ…!!」




僕がトイレに駆け込むと、凪咲さんの声が聞こえた。

珍しく大きな声で驚いていた。





………………………………next…→……





朝食。

本来なら起きてすぐにツリーの下に置いたプレゼントの開封をしてほしかったところだが、それどころじゃなくて触れられることもなく朝の時間を過ごしている。


焼けたトーストにジャムを塗る音とソープの咀嚼音だけが聞こえる。


…凪咲さんは恥ずかしそうにしてる。

やっぱり、高校生の時の体から成長したみたいだ。

すぐに着替えたようだけど…明らかに大きくなってる…


「真…あんまり見ない…で」


「ご、ごめんなさいっ!!」


「いいから…ちょっと…突然で」


「ですよね…」


「レベル2になったら体も変わるんだね…」


「ただここまで変わるとは」


「……うぅ…」


「ごめんなさいっ!!本当にすいません」


「……さっき確認したけど、体が心に追いついたみたい。完全に力が戻ったわけじゃないんだけど」


「それって」


「例えば…んっ!」


ジャムを塗り終えて皿の上で待機させていた僕のトーストが浮いた。


「風魔法の応用。でもこんな簡単なことでもすごく疲れる」


「魔法が使えるんですか…!?」


「お母さんの血を継いでるから才能はあるよ。……」


「大丈夫…ですか?魔法を使うとそんなにぐったりしちゃうんですか」


「ううん。お母さんの血を継いでるから…体もね。魅力的に思ってもらえるのは良い事よ?って何回も言われたけど、20歳になってから突然これだから。…ごめんね、下着とか買い替えないと」


「それは…全然。問題ないです」


「気をつけるね。あんなふうに抱きついて寝たりとか」


ポジティブに考えれば。今後はあんな夢のような時間は過ごせないだろう。

でも凪咲さんからしたら…そう思うと、異性として意識しすぎないように気をつけないといけない。

僕の方が気をつけないといけない。


「…ありがとう」


「しまっ…」


「真って頭の中ではおしゃべりなんだね」


「……」


「引き分けってことにしよ」


「え?」


「私は真の考えてることが分かる。真は私の体をつい見ちゃう」


「それ引き分けになりませんよね。僕の方が悪意あるというか」


「そんなことないよ。男としては自然なんじゃないかな。でも見過ぎないようにはしてね。私も真のプライバシーは守るようにするから」


「………」


「…顔伏せちゃうくらい変わった?」


「あの…っそ、そうですね…昨日までは美少女みたいに思ってたのに今は絶世の美女というか…あ」


「……」


「すいません。いつも通りに接するように心掛けます」


「ううん…大丈夫…」


「え?」


「た、食べよう?」


「はい…」



凪咲さんの顔が真っ赤だった。耳も。

異性として意識されすぎて恥ずかしくなっているのかも。

反省…。





………………………………next…→……





恥ずかしくて気まずい朝食が終わると、ソープが物分かりよくプレゼントに興味を示してくれた。


…ただ、開封する直前で失敗したかもしれないとそわそわしている。




「私に?いいの?」


「はい…」


「ん?あ、コートだ!」


「凪咲さんの制服に合うようにネットで調べて創造したんですけど…でも凪咲さんもう制服は着たくない…ですよね」


「…それは分かんない。この体でも使者として制服着た方が動けるなら制服は着るよ。それに、このデザインだったら制服以外でも合うだろうし。ありがとね、真」


「いえ…」


「ちょっと試着してみよっ…。え?軽い」


「戦闘中邪魔にならないようにフィット感と重量が特別なものになってます。あと…それは凪咲さん専用です」


「そうなんだ…!嬉しい」


部屋着の上から軽く羽織っただけでもすごく着こなしてる感がある。

……よくないとは分かっているけどつい女性として見てしまう。



「ニャア」


「あ!ソープ駄目だよ破いちゃ」


「いいんです。そっちのはソープへのプレゼントなので」


「本当だ…!」


包みを破く姿が可愛かった。動画に残してネットに広めれば話題になっただろう。


「……真、ちょっと待ってて」


「はい?」



凪咲さんは自分の部屋に戻って…あ、なんか紙を持ってきた。


「これ」


「……なんですか、これ」


「子供みたいだけど」



"何でも言うことを聞く券"

使用期限なし。1度限り有効。

どんな内容のお願いでも叶えます。



「え…」


「まさか真がプレゼント用意してると思わなくて」


「そんな、全然気にしなくても大丈夫ですよ。僕が勝手にやったことなので」


「ううん。少しは私も恩返ししたい」


「………」


「1回だけ。何でもしてあげるから」


「あの…何でもって言ってももちろん限度ってものがありますよね?」


「ないよ」


「……例えば、1日中マッサージしてくださいと言ったら?」


肩たたき券をプレゼントした子供にとっては苦痛の時間だ。

人に奉仕をするのは意外と難しい。

金をやるからマッサージ専門店に行ってこい。大人ならそういう答えも出せるが。


「するよ」


「この家を3階建てにリフォームしてと頼んだら」


「頑張る」


「そんなばかな…」


「一生のお願いみたいなものだよ」


「………」


なんだろう。それは出来ないと言わせてみたくなった。


「いつでも好きな時に使っていいから」


「………」


「何考えてるの?」


「え?あ、凪咲さんがそれは出来ないと言ってしまうようなお願い事ってなんだろうって…」


「ふふっ。ないよ。例えば…真が私の体を好き放題したいって言っても」「ぶっ!!」


「大丈夫?」


「ごほっ!…大丈夫じゃっ…な…なんて事言うんですか!」


「例えばだよ」


「そんな使い方…しません」


「間があったね」


「ないです!」


「ふふっ」


そんな男の下品な妄想をそのまま叶えるような…さすがにそれは…

なんで間が生まれるんだ。無い。無い。無い。無だ。そんな欲は無だ。


「ねぇ真、運動しない?」


「運動!?」


「過敏だね」


「え?あ!?違います!」


「私にとっては体が"戻った"わけだし、慣らしておきたいんだよね。それに、今夜もご馳走でしょ?お腹空かせないと」


「ですね!行きましょう!」


「ふふっ」


「変なことなんか考えてませんから!」





………………………………next…→……






自然公園にやってきた。


凪咲さんが創造された日、僕の因縁の使者…スライサー・クライと戦ったあの場所。


公園の近くの駄菓子屋で縄跳びを買った。



「何から試そうかな」


「寒いからか人がいませんね」


「貸切だね」


「とりあえず走ります?」



凪咲さんは制服姿だった。贈ったコートを着てくれてる。

…似合ってる。体は成長したけど、全然制服が似合う。このままいけば30歳を過ぎても現役の女子高生と間違われそうだ。



まずは約50m走をすることにした。

正確な距離は分からないが、ゴールの目印は他より少し背が高い木だ。



「用意はいい?」


「はい」


「じゃあ真が合図だして」


「……よーい…」



謎に2人ともクラウチングスタートだ。

僕がスタートのタイミングを決められるということは僕の方が有利…わざと変なタイミングで



「………」


「………」


「…………………スタート!え?」


スタートと言った時には彼女は隣にいなかった。

驚いて固まっている間に



「ゴール!って、真動いてないじゃん!」


「あ…すいません」


「次は縄跳びしよ!」


…ま、まあ凪咲さんは使者だし。蹴る力も強いだろうから…。



「真は縄跳び得意?」


「小学校以来ですね…二重跳びを連続で飛べたくらいでしょうか」


「そうなんだ!ちょっとやってみてよ」


「…よし、いきます!」


なぜ寒い時期に縄跳びをやらされるんだろう…と小学生の時に6年間毎年考えていた。

体育着が半袖半ズボンだったせいで、勢いよく回転する縄に当たると…それはそれは痛かった。

鞭ごっことかいう謎の戦闘遊びが男子の間で流行って先生が本気で怒ったこともあったような。



ヒュン…ヒュン…ヒュン…ヒュワワン!ペシッ!!


「いっ…!?」


二重跳びは失敗した。

足を抜けてくれれば成功だったがつま先に引っかかってしまった。

それで終わればまだよかったが、反動で縄が返って眼前に迫ってきた。


…どうにか顔を背けて左頬だけで済んだ。


「大丈夫?」


「はい…」


「惜しかったね。じゃあ次私やるね」



……多分、彼女はすごい跳べる。縄跳びは大得意だろう。

二重跳びが出来ると宣言して失敗した僕を鼻で笑うレベルで


「笑ったりしないよ」


「…すいません」


「小学生の時なんでしょ?何回かやればすぐ出来るよ。こうやって、手首を、軽く、使えば」


ん?最初から二重跳び?助走代わりの前飛びは無し?


「せーのっ」


ヒュワワワワワワワン!…なっ、今の…回転数が分からない…!


「もっと!」


「………」



これは、縄跳びでしょうか?


凪咲さんは2、3秒浮いていた。

滞空時間が跳ぶ度に長くなって…


「真、見てて、次、すごい跳ぶから」


「すでに相当ですよ…?」



ッチン!!!


「うわぁっ!?」


「え?真!?大丈夫!?」


「…持ち手から縄が外れたみたいです…」


長い年月を経て…鞭ごっこ、再び。

片手で振り回された縄が僕の靴に直撃した。

……靴の上からなのに、どうして…こんなに…タンスに小指をぶつけるくらいの威力が…


「痛い…?ごめんね」


「だ、大丈夫です」


「もう少ししっかりした縄じゃないと百重跳びは難しいみたい」


「なんですかそれ。聞いたことないです」


「お父さんが考案した技だよ?」


「……1度に100回ですか?」


「うん」


「…本気ですか?」


「ふふっ」


「さすがに冗談ですよね!そうですよね」


「ううん、ほんと」


「………」



その後も色々な運動で凪咲さんは超常現象レベルの能力を見せつけた。


僕が見た中で1番やばいと思ったのは、二段ジャンプだ。そんなのゲームの世界の話のはずなのに。





………………………………next…→……





子供に戻ったくらいの気持ちで外で遊んで帰ってきた。

寒い外で汗をかいて帰宅…うん、気持ちが悪い。

すぐに風呂に入って汗を流したいところだけど、それはきっと凪咲さんもだろう。



「凪咲さん、先にお風呂どうぞ」


「ううん。真からでいいよ。入りたいでしょ?」


「でも」


「大丈夫だから」


「じゃあお風呂沸かす間に何かで入る順番を決めましょう」


「そこまでしなくても。じゃあ一緒に入る?」


「っ……」


「冗談。真の方が寒そうだったし先入ってよ」


「…はい」




……スマホを片手に風呂が沸くのを待つ。

性欲を断つ方法でも検索してみようか。


「………男子高校生が暮らす寮で殺人事件が発生?」



ブラウザアプリでトップニュースとして取り上げられていた。

ここ数年で野球部が有名になったことで専用の寮まで用意されたとある高校で、殺人事件があったらしい。


寮暮らしの野球部員が全員死亡。主な死因は不明で、生徒の保護者達が怒り狂っているようだ。


製作途中の野球部を応援するマスコットキャラクターの着ぐるみが破壊された様子が写真に載っていた。


とんでもない事件だ。

しかも都内で起きている。


同じニュースを検索してみるといくつも候補が出てくる。

掲示板などでも注目の話題だ。



「近くの監視カメラの映像?」


それは週刊誌のウェブサイト。

警察に流れる前に手に入れたらしい。

…再生してみる。



カメラは寮の入り口全体を映していた。

これなら、出入りする人間が全員分かる。

裏口が存在しなければ犯人は特定でき………


少し時間を戻した。

カメラの記録部分には25日の午前1時47分とある。


事件から半日しか経っていないのか…という衝撃とは別に、僕の頭は映像に出てくる人物を見てフリーズした。



革ジャン…歩き方…バットを担いで寮から出ていく人物。

ポニーテールで……。

何度も見た覚えのある姿。



「結子…さん…!!」






………………………to be continued…→…


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