アリーサの個別授業(2)
ヒルダさんの朝は早い。毎日、五時には目覚め、支度を終えたら、朝御飯の前に瞑想の間(?)にてレーヴェンハルトの世界と一体となって、世界に綻びなどの不具合がないか確認することから始まる。この世界そのものと溶け合い、世界の均衡を保っている、のだそうだ。スケールがでかすぎる。
イヤもう、私には無理っす。
「神官長のヒルダ様とナツキ様とでは、役割が全く違いますから」
ですよね〜。
「レーヴェンハルトは創造魔法の産物であり、魔力によって保たれています。そして、お二方はレーヴェナータ様とキーラ様の血をそれぞれ引いていらっしゃるため、この世界の維持に最も高い適正を持っておられるのです」
私の世界から召還魔法によってキーラの血を引く者が幾度も招かれているが、常に在るわけではない。それはレーヴェナータの血を引く者で適任者がいないにしても同様らしい。双方、不在であれば高い魔力を持つ者が選別され、世界の維持に努める。
大抵が二人の血を幾らか引いている親族が選ばれることが多いため、やはり二人の血そのものが重要なのかもしれない。
私も婚活して、子孫を残すよう言われているし。
こんなの現代の日本じゃ、女性蔑視のセクハラだよ!まあ、いいけどね。
「ヒルダ様のお仕事はこれだけではありません」
神殿及び聖領の統治運営。他領との折衝もあれば、面会を求める者達の対応など多岐に及びます」
おっふ。ここにも社畜女子がいたよ。
「仕事のしすぎじゃないの?」
「私もそう思います」
アリーサが困ったようにため息をつく。
「ご本人がやりたいと仰るので、仕方がないのです」
神官の間で度々、議題に上がる案件なのだそうだ。その度にヒルダさんがわたくしなら大丈夫!と、言って取り合わないので困っているらしい。
分かった。私から厳重注意しておくよ。
絶対、駄目!過労死!ワーカホリックもほどほどに。