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その境界の先  作者: nao 11
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~神と人と魔族と~

 収束する闇を払う様に一筋の光が注がれた。それはカロンの足元に一文字を描いて炎を噴出させる。噴き上がる炎は間欠泉と見紛うばかりの勢いでカロンを炙る。


 「なに? これは……」


 今しかない。なんなのかは分からないが、必死に力を込めて立ち上がる。地面に爪を立て、膝を引きずり、棒切れの様な足を支えに起き上がる。歯を食いしばりながら顔を上げたところで、更に状況は動いた。


 「こんな炎で、子供騙しだな」

 「まだ終わらないぞ。覚悟することだ」


 鎌を振り炎を振り払ったタイミングで百舌が飛び込み短刀で首を狙う。鎌の柄で防がれた一撃は届かなかったが、攻勢を切り替えるには十分に隙を作った。


 「アタシ達もいるわよ!!」

 「ちょっとばかり調子に乗り過ぎたな。バルカニアの騎士、全てがお前の敵だ」

 「へえ? この光景を見て飛び込んでくる奴がいるとはね。それも無謀ってものだけど!!」


 百舌が飛来した方向からボルトとアガレスも飛び掛かる。それぞれ噴射で勢いを付けた蹴りと大振りの斧を振り下ろし、カロンの左右から叩き付けた。だがその攻撃は両腕の手甲で受け止められ、鈍い衝撃音を響かせるも手応えは薄そうだ。初めの衝撃は大きかった様だが、それを完全に止めたところでカロンが両腕を払い二人を撥ね退ける。数メートル飛ばされた二人は空中で体を捻り、片膝立ちで着地した。百舌を含めた三人で攻勢を緩めないように、斬り、殴り続ける。


 「……頼もしい援軍だな。俺もこのままじゃ終わらねえぞ」


 気合いを入れ直し砕けた剣を作り直したところで、三人が来た方向から更に誰かが走ってくる。長い黒髪を揺らして到着したのは、クリスだった。全力でここまで走ってきたのか、走りを止めても肩で息をしている。もしやさっきのレーザーはこいつか? 遠近に空中、今考えればなんと死角の無い布陣だろうか。そうして劣勢を救われた頃、他の面々も苦悶の表情ながら立ち上がっていた。


 「ぬうん、やりおるわい」

 「私に土を付けるとは、流石は神といったところか」

 「陛下を護るのは私の役目。ならば寝ている場合ではない」

 「姉さんの仇、世界の敵。負けるわけにはいかん」


 全員体はボロボロであろうというのに、皆全く怯んでいない。それどころか離れて三人と斬り合いを続けるカロンを睨んでいる。なんともまあ、威勢のいい連中だ。俺もそのうちの一人だが。


 「皆さん、気力は衰えていないようですが、流石に体の傷は放っておけません。残念ながらニーナ先輩は先の戦いで負傷してしまっていますので、代わりに回復薬を用意してもらっています」


 そう言ってクリスが指差した先には、小さな籠を持った熊のぬいぐるみが飛んでいる。その背には青白い粒子の翼があり、アニタの兵装だということが分かった。


 「一度に運んで攻撃の巻き添えを喰らってはいけないので、アニタ隊長に分割して輸送を頼んでいます。皆さんはこの薬を飲んで体力の回復を」


 籠の中に入っていたのは試験管の様な細長いガラスの容器、その中には薄い青色の液体が入っている。粘性もなく、見た目は普通の色が付いた水にしか見えない。


 「一応言っておきますと、その薬かなり苦いですのでお気を付けて。なんでも気つけも兼ねているらしく、意識がある時は覚悟して一気飲みする事をお勧めします」

 「そ、そうなのか…… いや、回復できるだけありがたいか」

 「ははは、ニーナらしいのう!!」


 俺も含めて各々が薬を受け取ったところで、クリスが俺に声を掛けた。不審ではあるが、この面子と共闘している時点で信頼は出来ると判断したらしく、


 「貴方の詳細を確認するのは、あの敵を排除してからにします」


 と一応の許しをもらった。正直クリスにはきちんと説明しないと面倒なことになると思っていただけに、この反応は意外ながらも助かった。というか、雰囲気が変わった気がするのは俺の気のせいだろうか。そんな事を考えていると、クリスが両腕を胸の前に構える。すると瞬く間に魔力が集中していくではないか。確かに魔砲の威力は凄まじいものだったが、すぐ傍で感じる波動は以前見たものの比ではない。構えた両手の間には稲光の様に閃光が走り、その中心には眩い炎の玉が出来上がっていた。


 「手始めに撃ってみますか。焼き払えッ!!!」


 それは炎なのか光線なのか見分けがつかない、圧倒的な程の魔力の奔流。あまりの衝撃に呆気にとられる俺達を見向きもせず、カロンに向けて魔砲を放ち続ける。


 「!! 散開ッ!」

 「なんだ? ……! これはっ」


 一瞬巻き込まれるかと心配したが、アガレスの一声で全員がカロンから距離をとる。その行動に疑問を抱いた瞬間、カロンは魔砲に呑み込まれた。だが魔砲の直撃を受けても尚、奴は翼を広げて魔力の奔流から飛び上がる。再び鎧は焼け、明らかに傷を負っているが、それでも事も無げに空中に佇み大鎌を振るった。


 「いい気になるなよっ、半端者がッ!!」

 「流石に死にませんか。ですが無傷でもありませんね!!」


 闇が三日月の形でこちらに飛んで来る。それぞれが躱した後地面に当たった瞬間に闇が爆発、まるで巨大で速いグレネード弾だ。その衝撃でこの場の全員が離れたが、それは体勢を持ち直した俺達にとって再戦の合図だった。


 「恐ろしい力を持つ強敵である、だが無敵ではない!!」

 「何をしてこようが関係ねぇ!! ぶった斬る!!!」


 体力は回復した、気力もまだ折れてねえ。火を入れろ、奴に届くまで。


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