表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その境界の先  作者: nao 11
54/63

~老練と新星~ 4

 「一つ二つ、三つ四つ五つ。一つの体に分かつ魂、何を求めて這いずり回る」


 ユウリィが作り出した多数の死体。魔族も人間も等しく変わらぬただの肉塊。それをまとめて固めて器にする。そこに魂を適当に。


 「最後の一人も死んでしまったね。正直あの娘まで辿り着くとは思わなかったなぁ。それでも竜一君の領域までは決定的に差があるけど。さて、この玩具でまた面白いものが見られるかな?」


 それが動き出した。魔族とも人間とも、更に言えば老人にも青年にも似た呻き声を放ちながら。一番近い西門の魔族を襲い、喰らいながら這い進む。黒ずんだ血の擦り跡を残し、何を思うのか生きている者を追う。個々の体の原型を残しながら、巨大なスライムの様に固まっているそれは、誰が見ても悍ましい悪夢の所業だ。





 「なんだあれは……ッ!! 総員、防御を固めながら後退! 城壁の内側へ退避だ!!」


 繰り返す戦闘はまだなんとかなっていたが、何やら南門から広がって来た赤い霧の様な何かでこちらの戦線は混乱に陥っていた。その霧もようやく消え去りこれから立て直しというところであの怪物だ。無数の人や魔族が何かに引き寄せられているかの様に貼り付き、一つの塊になって蠢いている。しかも魔族も人もお構いなしに近づいて襲っている。あんなものに一般の騎士が敵う筈もない、早々に退避させなければ。


 「アニタ、時間を稼ぐぞ!!」

 「了解です。ですがまともに相手をするのは危険過ぎます。シリウスさんもお気を付けて」


 アニタの言葉通り、盾とバンカーで相手をするには巨大過ぎる。闇雲に突っ込んでもその大きさと重量に押し潰されるだけだろう。だがなんとしても注意を引いてやらねばならない。一体どうするべきか。


 「シリウスさん、来ます!」

 「分かっている! だがここで我々が食い止めねば……ッ!!」


 怪物は私やアニタの攻撃など意に介さない様に城壁へ向かい出した。退避はまだ半ば、騎士達は盾を構えてはいるが、目の前の光景に恐怖しまともに戦う事など出来そうにない。


 「いかん、このままでは!」

 「ふははははは!! 騒がしいと思えば、いつの間にこれほどのものが現れたのだ?」


 怪物と騎士達の間に大きなマギナイト結晶が投げ込まれた。その結晶には光が集まり、それが形を成す前に怪物を一度殴り大きく後退りさせた。そしてラウル殿が城壁の上から飛び降りたのと同時に、巨大な腕を造り上げる。それはあのクーデターの日に見上げた、大きな力の象徴だった。


 「儂も出番が回ってきたか。ならば一人の騎士として、その役目を全うしようではないか!!」


 その剛腕が振るわれ、怪物に叩き付けられる。凄まじい衝撃音と共に怪物を押し返すが、まるで塊の肉を棒で叩いているかの様に手応えを感じない。いや、手応え自体はあるのだがダメージを受けている様に見受けられないのだ。


 「ぬう、これでは殴り続けて削りきるしかないか?」

 「相変わらずアホな戦い方をしおる。物理で殴るしか能が無いのか」

 「やっと来たか、さっさとせんか!!」


 その言葉と同時に巨大な雷が怪物に落ちた。凄まじい雷撃で黒く焼け焦げ周囲には嫌な臭いがまき散らされたが、それでも怪物は蠢いている。あんな雷撃を受けて生きていられる生物などそうはいない。放った本人もそれを理解しているのか、特に驚く様子もなく舞い降りてきた。


 「モルガンよ、貴様鈍ったのではないか?」

 「ほざけ、あんなものがまともな生き物である筈がないだろう。分かってはいたが試してみただけだ。あれを仕留めるには灰にするしかあるまい」

 「ははは! 結局貴様も同じではないか!!」


 未だ生者を求める怪物は恐ろしかったが、それ以上に心強く負ける気はしなかった。私達の目の前には、人間と魔族の頂点に近い二人が並び立っているのだから。


 「「こやつを始末してさっさと黒幕を引きずり出すぞ!!」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ