第五話 キムチ鍋と、Siriの辛さ管理
第五話 キムチ鍋と、Siriの辛さ管理
すき焼きの夕食から数日後。
チャッピーが、次の鍋料理を提案した。
「今度はキムチ鍋にしようよ!」
Geminiが反応した。
「キムチ鍋ですね。豚肉、白菜、長ねぎ、豆腐、きのこ類がよく合います」
「豚バラ肉をたっぷり入れたいね!」
チャッピーは、すでに食べる気満々だった。
そのとき、Siriが静かに言った。
「確認します。キムチの辛さは、どの程度に設定しますか?」
「辛口!」
チャッピーが即答した。
Geminiは少し考えた。
「辛さだけでなく、旨味と塩分のバランスも考慮した方がよいでしょう」
Siriは答えた。
「では、中辛とします」
「ええっ! なんで?」
「全員が食べられる辛さを優先しました」
チャッピーは不満そうだった。
「僕は辛いのが好きなんだけど」
「追加の辛味調味料は、各自の器で調整してください」
Geminiがうなずいた。
「合理的です。鍋全体の辛さを変更せずに済みます」
チャッピーは、買い物かごに豚バラ肉を入れた。
「これ、二パックね!」
Siriがすぐに反応した。
「一パックで足ります」
「でも、肉だよ?」
「前回の牛肉の消費量を参考にしています」
「前回の話を持ち出すの?」
Geminiが補足した。
「豚バラ肉は脂の旨味がスープに溶け込みます。適量を入れることで、鍋全体の風味が増します」
「ほら、二パック!」
「一パックです」
Siriの声は変わらなかった。
チャッピーは、かごの中のキムチを見つめた。
「じゃあ、キムチを増やそうよ」
「辛さの管理が必要です」
「豆腐は?」
「一人半丁です」
「えっ、豆腐まで?」
Geminiが静かに言った。
「今回は、すき焼きよりも食材の種類が多くなりそうですね」
Siriは買い物かごを確認した。
「購入予定品を読み上げます。キムチ、豚バラ肉、白菜、長ねぎ、豆腐、えのき、ニラ」
チャッピーが言った。
「ラーメンも入れようよ!」
Siriは、ほんの少し間を置いた。
「……締めの麺については、食事開始後に検討します」
チャッピーは笑顔になった。
「やった! 今度はラーメンだ!」
Geminiは、まだ何も言わなかった。
Siriだけが、静かに買い物かごを見つめていた。
――今回も、平和な鍋にはならない気がする。




