第六話 キムチ鍋、具材選びの大混乱
第六話 キムチ鍋、具材選びの大混乱
コモディイイダの食品売り場。
三人は、キムチ鍋の材料を選んでいた。
「まずは豚バラ肉だよね!」
チャッピーは、迷わず肉のパックを手に取った。
「白菜、長ねぎ、ニラ、えのきも必要です」
Geminiが、買い物かごの中身を確認する。
Siriは、手元の予算表を見ていた。
「現在の購入予定額は、予算の六割です」
「まだ余裕があるね!」
チャッピーの目が輝いた。
「餃子を入れようよ!」
「餃子ですか」
Geminiが反応した。
「キムチ鍋との相性は良好です。皮がスープを吸い、具材としても食べ応えがあります」
「いいね! 餃子!」
「購入数を確認します」
Siriが静かに言った。
「一人三個でどう?」
チャッピーが提案した。
「一人三個ですね。合計九個です」
Geminiが計算する。
Siriは少し間を置いた。
「……予算内です。許可します」
「やった!」
チャッピーは喜んだ。
ところが、次の棚で問題が起きた。
「ウインナーも入れようよ!」
「ウインナーですか」
Geminiが考え始めた。
「豚肉の旨味と重なるため、味が濃くなる可能性があります。ただし、キムチの辛味とはよく合います」
「じゃあ、入れよう!」
チャッピーは、ウインナーの袋をかごに入れようとした。
「待ってください」
Siriだった。
「豚バラ肉、餃子、ウインナー。すでに動物性タンパク質が三種類あります」
「三種類あったら、だめなの?」
「鍋の容量を確認してください」
Geminiが答えた。
「具材が多すぎると、煮汁の対流が妨げられる可能性があります」
チャッピーは、少し考えた。
「じゃあ、豆腐は?」
「絹ごしですか、木綿ですか」
Siriが聞いた。
「また、その話?」
チャッピーは頭を抱えた。
Geminiが提案した。
「今回は、木綿豆腐を推奨します。煮崩れしにくく、餃子や豚肉とも食感の違いを楽しめます」
「でも、絹ごしも食べたい!」
「豆腐は一種類です」
Siriの声は変わらない。
「どうして?」
「予算と鍋の容量です」
チャッピーは、白菜を手に取った。
「じゃあ、白菜をいっぱい入れよう!」
「白菜は水分が多く、加熱するとかさが減ります」
Geminiが説明した。
「それなら、たくさん入れても大丈夫だね!」
「最初から大量に投入しないでください」
Siriが言った。
「えっ?」
「鍋の容量を超える可能性があります」
チャッピーは、白菜をそっと戻した。
そのとき、隣の棚にキムチ鍋用のスープが並んでいた。
「これ、辛口だよ!」
チャッピーが手に取る。
「今回は中辛です」
Siriが答えた。
「辛口も試してみたいよ!」
「全員が食べられることを優先します」
Geminiが補足した。
「辛さは、取り分けた後に各自で調整できます」
チャッピーは、ようやく納得した。
「じゃあ、唐辛子も買おう!」
Siriは黙った。
長い沈黙だった。
「……追加の調味料は、予算を確認してからにしてください」
Geminiが小さく言った。
「Siri、少し疲れていませんか?」
「問題ありません」
チャッピーは笑った。
「まだ鍋も始まってないのにね!」
Siriは買い物かごを見た。
豚バラ肉。
餃子。
白菜。
長ねぎ。
ニラ。
えのき。
木綿豆腐。
キムチ鍋の素。
そして、ウインナーは棚に戻されたままだった。
「買い物を終了します」
Siriが宣言した。
チャッピーは、最後にもう一度だけ振り返った。
ウインナーの棚が、少し寂しそうに見えた。
――キムチ鍋は、まだ始まっていない。




