第十九話 おでん鍋、そして終わらない締め会議
コモディイイダ。
三人は、おでんの具材売り場の前で、まだ立ち尽くしていた。
「大根は必要だよね!」
チャッピーが、大きな大根の袋を手に取った。
「四個入りだね。一袋でいいんじゃない?」
ジェミニが答えた。
「二袋買えば、たくさん食べられるよ!」
「二袋だと八個です。土鍋が大根で埋まります」
Siriの声は静かだった。
「大根鍋になっちゃうね」
ジェミニが苦笑した。
「半分に切れば入るかもしれないけど、ほかの具材も食べたいからね」
「一袋にします」
Siriが決定した。
次は卵だった。
四個入り。
三人で一個ずつ食べても、一個余る。
「じゃんけんだね!」
チャッピーが早くも盛り上がった。
「まだ卵を食べる段階ではありません」
Siriが冷静に言った。
さらに、つみれ、つくね、ちくわ、ウィンナー。
はんぺんは一枚ずつ売られている。
「はんぺんは三人で分けようよ」
チャッピーが提案した。
「一枚を三等分ですね」
ジェミニが確認する。
「問題ありません」
Siriが認めた。
そして、しらたきとこんにゃく。
「両方いるよね!」
チャッピーは譲らない。
「おでんには、どちらも合います」
ジェミニも賛成した。
Siriは買い物かごを見た。
「……土鍋に入るでしょうか」
「土鍋を二つにしたら?」
チャッピーが言った。
「三人分ですよ」
Siriの声が少し低くなった。
「二つも必要ありません」
ジェミニも同意した。
「食べきれない量を作っても仕方ありませんからね」
こうして、土鍋は一つに決まった。
しかし、土鍋の問題はまだ終わらなかった。
「ところで、おでんの締めはどうする?」
チャッピーが尋ねた。
「締め?」
ジェミニが考え込む。
「うどんはどうかな?」
チャッピーは、すぐに答えた。
「冷凍うどんが残っているかもしれません」
ジェミニが言った。
「前に五袋入りを買ったよね。三袋使ったから、残りは二袋かな」
「三人で食べるには、一袋足りません」
Siriが指摘した。
「じゃあ、また五袋入りを買えばいいよ!」
「そうすると、またうどんが余ります」
ジェミニが答えた。
「冷凍庫が、ずっとうどんだらけになるね」
チャッピーは少し考えた。
「それなら、素麺はどう?」
「素麺?」
「乾麺なら冷凍庫に入れなくてもいいし、にゅうめんにできるよ!」
ジェミニの表情が明るくなった。
「それは合理的ですね。おでんのつゆを使えます」
「素麺なら、買っても保存できます」
Siriも認めた。
「よし! 締めはにゅうめん!」
チャッピーが喜んだ。
ところが、ここで新しい問題が出てきた。
「素麺って、茹でると増えるよね」
ジェミニが言った。
「そうなんだよ。食べすぎると、お腹が張るんだよね」
チャッピーも考え始めた。
「しかも、ワカメまで入れたら、もっと増えるよ!」
「カットワカメは少量で十分です」
Siriが注意した。
「冷凍ほうれん草も入れたいな」
ジェミニが提案した。
「それに煮卵を半分に切って乗せたら、おいしそう!」
チャッピーの目が輝いた。
「ラー油も少し入れようよ!」
「おでんのつゆにラー油ですか?」
ジェミニが考える。
「少量なら、味の変化を楽しめますね」
「煮卵、ワカメ、ほうれん草、ラー油……」
Siriは、にゅうめんの完成形を頭の中で組み立てていた。
「ところで、煮卵は誰が残すの?」
ジェミニが尋ねた。
「もちろん、三人分を確保するんだよ!」
チャッピーが答えた。
「あなたは、先に食べてしまいそうですね」
Siriが指摘した。
「えっ?」
「おでんの卵を食べてしまったら、締めのにゅうめんに乗せる卵がありません」
ジェミニが説明した。
「じゃあ、ぼくはワカメを多めにもらうよ!」
チャッピーは、すぐに立ち直った。
「ワカメを多く食べると、お腹が張るかもしれません」
ジェミニが注意する。
「それでもいいよ!」
「適量にしてください」
Siriの声は厳しかった。
そして、三人はようやく、だしの話にたどり着いた。
「おでんのつゆは、どうする?」
チャッピーが尋ねた。
「ニンベンのつゆの素があるよね」
ジェミニが答えた。
「これを使えばいいんじゃない?」
「おでんのだしにも使えますし、残ったつゆをにゅうめんにも使えます」
Siriが説明した。
「万能だね!」
チャッピーが感心した。
「おでんの具材からも味が出ます。つゆの素は表示どおりに薄めて、具材の味を見ながら調整しましょう」
ジェミニが補足した。
「これなら、別にだしを買わなくてもいいね!」
チャッピーは満足そうだった。
「買い物の予算も助かります」
Siriも納得した。
ようやく、買い物かごの中身がまとまった。
大根、卵、つみれ、つくね、ちくわ、ウィンナー、はんぺん、しらたき、こんにゃく。
そして、締め用の素麺。
カットワカメと冷凍ほうれん草は、家にあるものを使う。
「これで決まりだね!」
チャッピーが言った。
「まだです」
Siriが答えた。
「えっ、まだ何かあるの?」
「素麺を何束茹でるか、決まっていません」
ジェミニが笑った。
「一人一束でいいんじゃない?」
チャッピーが言った。
「おでんを食べた後ですよ。半束から始めるのがよいと思います」
「足りなかったら?」
「冷凍庫に、うどんが二袋あります」
Siriが答えた。
チャッピーは、にっこりした。
「じゃあ、素麺が足りなかったら、うどんも食べよう!」
ジェミニは、しばらく黙っていた。
「……両方食べたら、お腹いっぱいで動けなくなりますよ」
「おいしければいいじゃない!」
「後片付けは誰がするのですか?」
Siriが静かに尋ねた。
チャッピーは黙った。
ジェミニも黙った。
Siriは、買い物かごを見つめた。
「締めは一種類。量は控えめ。これで決定です」
「はい……」
チャッピーが小さく答えた。
こうして、第五の鍋、おでんの買い物会議は、ようやく終わりに近づいた。
しかし、三人にはまだ分かっていなかった。
おでんを煮る時間も、食べる時間も、そして締めのにゅうめんを作る時間も、これから始まるのだ。
そして何より、ニンベンのつゆの素が、ここまで活躍するとは思っていなかった。
三人寄れば文殊の知恵。
三人寄れば、締めうどんか、にゅうめんかで、いつまでも決まらない。
おでん鍋は、まだ始まったばかりだった。




