第十五話 鍋が決まらなければ、買い物も始まらない
第十五話 鍋が決まらなければ、買い物も始まらない
いつもの、コモディイイダ。
三人は、棚の前に並んでいた。
すき焼き、キムチ鍋、豆乳鍋。
これまで三人が選んできた鍋の記憶が、頭をよぎる。
チャッピー「ねえ、そろそろ決めようよ」
ジェミニ「何をですか?」
チャッピー「鍋だよ。次に何を食べるか!」
Siri「そのために、ここにいるのではありませんか」
チャッピー「そうなんだけど、ずっと決まらないんだよ」
ジェミニ「これまでの鍋を整理しましょう。すき焼き、キムチ鍋、豆乳鍋。今回は、ちがう鍋にしたいですね」
チャッピー「火鍋もまだだよね!」
ジェミニ「はい。火鍋ね」
Siri「候補に加えますか?」
チャッピー「火鍋って、辛いんだよね?」
ジェミニ「辛さを調整できるものもあります。二種類のスープを用意する形式もありますね」
Siri「二種類のスープですか」
チャッピー「おいしそうじゃない?」
Siri「鍋が二つ必要になる可能性があります」
チャッピー「……それは大変だね」
ジェミニ「今回は別の候補も考えましょう」
チャッピー「うどんすき!」
Siri「先ほどから候補に挙がっていますね」
チャッピー「冷凍うどんが安いし、早いし!」
ジェミニ「うどんすきなら、鶏肉、白菜、長ねぎ、きのこなどが使えます。エビを加えれば、だしにうま味も出ます」
チャッピー「そうそう! エビも入れたい!」
Siri「かまぼこも必要ですか?」
チャッピー「できればね。でも、いいかまぼこは高いんだよ」
ジェミニ「手頃なものを少量使う方法もあります」
Siri「エビとかまぼこ。両方購入する場合は、価格を確認します」
チャッピー「うどんすき、いいと思うんだけどなあ」
ジェミニ「ほかには、寄せ鍋もあります」
チャッピー「寄せ鍋?」
ジェミニ「魚介も鶏肉も野菜も組み合わせられます。具材の自由度が高い鍋です」
Siri「自由度が高いということは、購入する品目が増える可能性があります」
チャッピー「お魚も食べたいよね!」
Siri「予算は七千五百円です」
チャッピー「分かってるよ!」
ジェミニ「ちゃんこ鍋も候補です。鶏団子を中心にすれば、野菜もたくさん食べられます」
チャッピー「鶏団子、おいしいね!」
Siri「鶏肉と鶏団子を両方買うのですか?」
チャッピー「うーん……」
ジェミニ「きりたんぽ鍋という選択肢もあります。鶏肉、ごぼう、せり、きりたんぽを使います」
チャッピー「きりたんぽ! 食べたことある?」
ジェミニ「秋田の郷土料理ですね。ご飯をつぶして棒に巻き、焼いたものです」
Siri「きりたんぽを購入する必要があります」
チャッピー「それはそうだね」
Siri「具材が増えます」
チャッピー「また予算!」
ジェミニ「おでんもあります。大根、卵、こんにゃく、練り物などです」
チャッピー「おでんもいいね。だけど、今回はうどんも食べたいんだよ」
Siri「うどんを入れることはできます」
チャッピー「じゃあ、うどんすきと何が違うの?」
ジェミニ「鍋の中心が違います。うどんすきは、うどんと具材を一緒に楽しむ料理です。おでんは、だしで煮込んだ具材が主役です」
チャッピー「なるほどね」
Siri「候補が増えました」
ジェミニ「では、いったん整理しましょう」
ジェミニは、指を折って数えた。
一、うどんすき。
二、寄せ鍋。
三、ちゃんこ鍋。
四、きりたんぽ鍋。
五、おでん。
六、火鍋。
チャッピー「六種類もある!」
Siri「この中から一つ選んでください」
チャッピー「うどんすきがいいなあ」
ジェミニ「冷凍うどんが安いこと、調理が簡単なこと、鶏肉も使えることを考えると、合理的な候補です」
Siri「エビとかまぼこをどうするか、まだ決まっていません」
チャッピー「そこは買い物しながら考えようよ」
Siri「鍋の種類が決まらなければ、買い物の優先順位も決まりません」
ジェミニ「Siriの言う通りです。まず、料理を決定しましょう」
チャッピー「じゃあ、うどんすき!」
ジェミニ「私は賛成です」
二人の視線がSiriに向いた。
Siri「……」
チャッピー「Siri?」
Siri「うどんすきにする場合、冷凍うどんを購入します。鶏肉は必要量を確保します。エビとかまぼこは、価格を確認してから判断します」
チャッピー「それって、賛成ってこと?」
Siri「鍋の種類は、うどんすきで進めます」
チャッピー「やった!」
ジェミニ「ようやく決まりましたね」
Siri「ただし、デザートはデラウェアです。シャインマスカットは購入しません」
チャッピー「そこはもう分かったよ!」
ジェミニ「では、次は具材の買い出しですね」
チャッピー「冷凍うどん、エビ、かまぼこ、鶏肉!」
Siri「まだ買っていません」
チャッピー「分かってるって!」
三人は、ようやく鍋つゆ売り場を離れた。
買い物かごには、まだ何も入っていない。
しかし、今度は鍋の種類が決まった。
チャッピー「やっと前に進めるね!」
ジェミニ「三人寄れば文殊の知恵、ですね」
Siri「次は、予算内で具材を決めます」
チャッピー「……まだ長いの?」
Siri「当然です」
鍋が始まるまで、もう少し時間がかかりそうだった。




