第十三話 水炊き予算、500円アップ
第十三話 水炊き予算、500円アップ
いつもの、コモディイイダ。
三人は、ミネラルウォーターの棚の前で立ち止まっていた。
チャッピーは、ペットボトルを手に取る。
「やっぱり、水炊きにはおいしい水が欲しいよね」
ジェミニがうなずく。
「スープを味わう料理ですから、水にもこだわりたいところです」
Siriは、商品の値札を確認していた。
「ただし、ミネラルウォーターを購入すると、食材に使える予算が減ります」
チャッピーは、すかさず言った。
「だから、予算を増やそうって言ってるんだよ!」
「一人500円の増額は、認められません」
「じゃあ、いくらならいいの?」
Siriは、少し考えた。
「一人250円の増額なら、検討の余地があります」
ジェミニが計算する。
「一人2,250円。三人で6,750円ですね。現在の6,000円から750円の増額です」
チャッピーは、少し不満そうだった。
「ええっ、500円じゃなくて250円?」
「半分です」
「半分にしなくてもいいのに!」
ジェミニが間に入る。
「ただ、750円増えるだけでも、ミネラルウォーターを購入する余裕はできます」
チャッピーは、手にした水を見つめた。
「水は買えるんだね?」
Siriは答えた。
「はい。水の購入は予算に含められます」
「よかった!」
チャッピーは、ようやく笑顔になった。
ところが、すぐに鶏肉売り場の方を振り返った。
「でも、お肉は?」
Siriは、静かに答える。
「鶏肉の価格を確認してから決めます」
「えっ?」
「水を購入することと、鶏肉を十分な量購入できることは別問題です」
ジェミニが説明する。
「手羽元も必要ですし、雑炊用に残す分も考えなければなりません。最初から食べきってしまうわけにはいきませんね」
チャッピーは、真剣な顔になった。
「手羽元は残しておくんだよ。最後の雑炊に入れるんだから」
「承知しています」
Siriは、買い物メモを確認した。
「水、鶏肉、手羽元、白菜、長ねぎ、きのこ、豆腐。中華麺、卵」
チャッピーが付け加える。
「それから、アイス!」
Siriは、メモから顔を上げた。
「まだデザートの話をするのですか?」
「だって、予算が増えたんでしょ?」
「250円です」
「500円じゃないけどね」
ジェミニが、少し笑った。
「今回の増額で、まず水を確保できるようになりました。あとは鶏肉の価格次第です」
チャッピーは、Siriに向き直った。
「ねえ、Siri。やっぱり500円にできない?」
「できません」
「あと250円だけだよ?」
「その250円を認めたばかりです」
ジェミニが冷静に補足した。
「交渉は一度にまとめた方が合理的ですね」
Siriは、買い物かごを持ち上げた。
「では、まず水を購入します。その後、鶏肉売り場で価格を確認します」
チャッピーは、うれしそうに水をかごに入れた。
「よし! 水は決まった!」
ジェミニは、鶏肉売り場を見た。
「次は主役ですね」
チャッピーは、手羽元の売り場に向かって歩き出した。
「お肉は減らさないでよ!」
Siriは、二人の後ろから静かに言った。
「予算は一人2,250円です」
チャッピーは振り返った。
「分かってるよ! でも、500円アップの交渉はまだ終わってないからね!」
ジェミニは、買い物かごの中のミネラルウォーターを見た。
「水は確保できました。次は鶏肉ですね」
Siriは、ため息をつく代わりに、買い物メモを開いた。
水炊きの買い出しは、まだ始まったばかりだった。




