第八話 しゃぶしゃぶの買い出し会議
第八話 しゃぶしゃぶの買い出し会議
コモディイイダの食品売り場。
三人は、買い物かごを前にしていた。
今日の夕食は、しゃぶしゃぶである。
予算は、すでに決まっている。
一人二千円。
三人で六千円。
前回のキムチ鍋では、買い物の途中で予算の問題が発覚した。
今回は違う。
Siriは、最初から予算を把握していた。
「本日の予算は六千円です。食材、たれ、締めのうどんを含みます」
Siriが静かに告げた。
「よし! 今日はお肉だね!」
チャッピーは、迷わず精肉売り場へ向かった。
「牛肉がいいな。しゃぶしゃぶといえば牛肉だよね!」
Geminiは、売り場の値札を確認した。
「牛肉は魅力的ですが、価格を考えると豚肉も有力な候補です。豚肉なら、同じ予算で量を確保しやすいでしょう」
「牛肉と豚肉、両方買えばいいじゃない!」
「予算を確認してください」
Siriの声は穏やかだった。
「まだ何も買ってないよ!」
「だからこそ、確認しています」
Geminiが、二種類の肉の価格を比較した。
「牛肉だけにするか、豚肉だけにするか。それとも、少量ずつ両方にするか。三つの選択肢があります」
「両方!」
チャッピーは即答した。
「検討します」
Siriは、まだ買い物かごに手を伸ばさなかった。
次は野菜売り場である。
「白菜、長ねぎ、水菜、春菊、えのき、しめじ!」
チャッピーは、次々に名前を挙げた。
「全部必要ですか?」
「だって、しゃぶしゃぶだよ!」
Geminiが値札を見た。
「野菜の価格も考慮する必要があります。特に、いくつも種類をそろえると、予算を圧迫します」
「では、白菜と長ねぎ、きのこを優先します」
Siriが決めた。
「春菊は?」
「予算次第です」
「水菜は?」
「予算次第です」
「Siri、予算次第って便利な言葉だね!」
「便利ではありません。必要な判断です」
チャッピーは、少し不満そうに買い物かごを見つめた。
続いて、たれの売り場に到着した。
「ポン酢!」
チャッピーが一本手に取った。
「ごまだれも!」
もう一本、かごに入れようとする。
「待ってください」
Siriが止めた。
「しゃぶしゃぶの食べ方は、まだ決まっていません」
Geminiが口を開いた。
「通常のしゃぶしゃぶなら、ポン酢とごまだれ。もう一つ、つゆしゃぶという選択肢もあります」
「つゆしゃぶ?」
チャッピーが振り返った。
「だしのきいたつゆで、肉や野菜を食べる方法です。つけだれを別に用意しなくても楽しめます」
「それ、おいしそう!」
「ただし、専用のつゆを用意する必要があります」
Siriが付け加えた。
「じゃあ、ポン酢もごまだれも、つゆも全部!」
「予算を超過します」
「まだ買ってないのに!」
「買う前だから申し上げています」
Geminiは、少し考えた。
「まず、食べ方を決めてから、たれを選ぶべきですね」
「そうですね」
Siriはうなずいた。
チャッピーは、買い物かごの中をのぞいた。
まだ、何も入っていない。
「ねえ、いつになったら買い物できるの?」
「現在、購入品目を検討中です」
「しゃぶしゃぶって、こんなに難しかったっけ?」
Geminiは答えた。
「料理そのものは難しくありません。予算配分が難しいのです」
Siriが、静かに告げた。
「次は締めのうどんを確認します」
「まだ締め!?」
チャッピーの声が、食品売り場に響いた。
しゃぶしゃぶを食べる日は、まだ遠い。




