夏と海と水着とお姫様
夏だ!
海だ!
水着だ〜!!
「ハルカ!はしたないからやめなさい〜!!」
夏の浜辺を水着姿で四足歩行で
軽快に走るうさ耳メイドは
どこで覚えたのか知らない
定番のセリフを吐きながら駆け抜けていく。
「ふふふ。ハルカったらはしゃいじゃって......」
「アリー止めてよあれ〜恥ずかしすぎる〜!」
ほんとに走り回る子供の相手にへばる
叔母さんの気分がよくわかる。
私お稽古で鍛えてるし、体力ある方なんだけどね......
とりあえずあの四足歩行で走るをやめさせてくれ。
どうしても夏の海に行きたいとのことで
はるばる江ノ島までやってきた私たち。
またまた2人の水着代で数万円飛ぶという
痛手を浴びながらも
せっかくの日本でのひと夏の経験を
させてあげたいなっていう親心。
んー?
これは
親心なのか?
まぁいいや。
どうやら
アリエルたちの世界には
海水浴という概念がないらしく
ぜひやってみたいとのことで
今に至るのだ。
テレビしか情報源がないので
季節の催しとか流行りものみたいなのは
2人の好奇心を無責任にもしっかり旺盛にして
保護者の時間とお金を奪い去っていく。
まったく、世話のかかる娘たちだぜ。
学校も夏休み。
オーディションもしばらくなく
ひたすらバイトに精を出す私は
夏の海で
キャッキャはしゃいでる2人をみて
何やら癒されているのだから
私こそ世話のかかる娘だ。
案の定すぐ男どもが群がってきている。
ナンパを断る極意として2人には
旦那と子供がいますと言えと伝えている。
それで引かないやつはだいたいクズなので
きつめにあしらっていいと指示はだしている。
あの姫様どうやら風の妖精の娘で
大気関連の魔法が使えるらしく
風を起こしたり、温度を変えたり、
空気の振動で音を作ったり
先日は梅雨を吹き飛ばしたり
普通に竜巻くらいまでは作れる様子。
そして便利な技のひとつとして
小さい真空状態を作って
人を簡単に気を失わせることができるらしい。
その人の顔周りの空気をなくしちゃうのです。
ナンパがしつこくてどうしようもなかったら
それで意識を失わせて眠らせていいよと
許可をだしている。
はたから見たらあまりの美女に興奮しすぎて
周りの男どもは卒倒していくという現象。
無理がある?
でも立証できないから大丈夫♪
日本で人間を殺すなと
女神様?から指示があるらしいので
私なりにフォローしただけ。
一応いいつけはきちんと守るという
少し可愛らしい一面もあるお姫様。
んー......やっぱりどうみてもお子様だよね。
目がハートになって鼻血を噴いて倒れている
男がすでに数人いるようだが
うまいこと気を失わせているようで安心。
「お昼にしよ〜♪」
海の家のご飯て
なんでこんな美味しいんだろうね?
「アカネ様!この焼きそば美味すぎます!
ズゾゾ!......モグモグ!
アカネ様の作る焼きそばがゴミに見えます!」
「ハルカ〜焼きそば二度と作らんから自分で作れよ」
「ひぃいい!冗談が通じないでやんす!」
「ハルカはもう少し日本のお料理を
覚えていかないとですわね?」
ハルカは一応多少はお料理は出来るのだが
なんかめちゃくちゃ大量に作ろうとするから
目が離せなくて結局自分で作っちゃうんだよね。
貧乏大学生にとって焼きそばは
至高の逸品なのだ。
「アカネ。
連れてきてくれて感謝ですわ。
ハルカも喜んでいますし
とても楽しい良い思い出になりそうでしてよ」
珍しく姫様が素直で機嫌がいい。
「あらあら。いい子になってきたわねアリー」
「アリーは元々いい子でしてよ!」
「クスクス」
「アカネ様!アリエル様は風の精霊の血筋。
新宿の臭い空気がだめでして、こういう山や海の
自然の空気がお好きなのです......やんす」
「わかったからその、変な語尾をやめろ」
少しずつ、いい子になっている
アリエルに対して
逆にこのうさ耳メイドは
テレビで得た謎の知識から
妙な語尾をつけるようになったり、
オタク文化を真に受けて
変なネット用語を連発したりと
日に日にこじらせていっているようで
とても先行き不安。
「夜には浜辺で花火をやるでがんす!
線香花火は粋でオツでやんす〜!」
「がんすかやんすかどっちかにしろよ!」
「あはは♪」
「キャッキャ♪」
そんなハルカの頭をなでなでしている
アリエルはお姉さんのつもりなのかしら?
「おい!誰か溺れてるぞ!!」
突然騒ぎが起きる。
沖で誰か溺れてると騒ぎに......!
「人間が溺れているでやんす!
滑稽でがんす!あひゃひゃ♪」
「ハルカ、冗談でもだめ!」
ゴチンッ!
「ぎゃぁっ!」
調子に乗っているハルカのアタマに
デコピンをかました私はアリエルを見る。
「......ん?もうすでにこっそり助けていますわ?」
「......え!」
ライフセーバーに助けられる前に
溺れていたはずの人は自力で泳ぎ始めている。
「......え?何かしたのアリー?」
「真空領域の逆ですわ。
海の中で空気の層を作って
顔を覆ってさしあげましたのよ」
海の中で空気を作ったのか......!?
「嘘でしょ......アリーすごいわ!」
「姫様がもう助けているから、
安心して冗談を言ったのに〜アカネ様酷いですぅ」
「おーほっほっほ!アカネ。
褒めて頂いてよろしくてよ!」
「すごいすごい!アリーほんとすごいね!」
私は純粋にアリエルを褒めてなでなでする。
「......ぉお?おほほ!アリーのすごさが
やっとアカネに伝わったようですわね!」
私に珍しく褒められて顔を真っ赤にして
横を向いたアリエルを見て
私は改めてほんとお子様なんだなと再認識する。
「照れてる!かわいい〜♪」
「べ、別に照れてなんかいませんわ......!
アリーの実力なら当然でしてよ......!」
「アリエル様さすがでやんす〜♪」
「クスクス」
そうか
私は幼い頃
両親を亡くしてて
祖母が1人で私を育ててくれたのだけど
そうか。
私
親にこうやって
海に連れてきてもらったり
褒めて
頭を撫でてもらった
経験があまりないんだ。
そうか......
だからか......
自分のこの2人への行動理由が
なんとなくわかってしまった。
親心か......
私は
なんだか照れくさくなってしまい
2人をまとめて抱きしめてしまった。
「あ、アカネ様?」
「アカネ?ど、どうしましたの?」
「ん〜なんでもないよ!
2人によしよししてあげたいだけ♪」
「アカネは甘えん坊ですわね。
早く大人になりなさい?」
「アカネ様の貧相な体では
骨が当たって痛いでやんす」
「......」
......
......
「うるせえええええ!!!」
ぎゃぁぁぁ!!
キャァア!!
四足歩行で駆け出すうさ耳メイドを
追いかける私。
なんだかお馴染みの光景になってしまった。
ふふ。
もう......
楽しいな♪
何よこいつら。
可愛いじゃない♪
夢に向かって一生懸命やってたはず。
でも少しだけ立ち止まって
今を大事にしてみる。
すると
何か違う景色が見えることも
あるのかもしれない。
そんなことを少し
思ってしまった
このたった1度の
夏の海の思い出......
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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