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泣き虫とお姫様


あれからアカネと会うことを恐れたアリエルは

ハルカと共にホテルに泊まり込んでいた。


アリエルはずっと塞ぎ込んでしまっている。


「アリエル様......少しでも食べてください......」


ハルカがつきっきり。


アカネにはしばらくホテルにいるとは


ハルカがメッセージは送っているものの


そのアカネからは既読スルー。


「早く謝りに行きましょうアリエル様......」


「......ぐすん......怖いですわ......」


「アリエル様......」


「謝って......もし、アカネに

許してもらえなかったらと思うと

怖くて会いに行けないのですわ......」


「大丈夫ですよ......きっと許してくれます......」


謝っても許してくれなかったら

もう、どうしようもない、詰みなのだ。

アリエルはそう考えると

謝りに行くことが出来ないでいた。



「アカネはどこぞのわけのわからない

アリー達を無償で助けてくれましたわ......。

ただ、困ってる人を助けただけだなんて

アカネは言いましたが、やはり、あれは愛。

あれこそ愛だと思いますの......」


「......うんうん。そうでございますね」


「それなのにアリーは

アカネを応援しているような素振りをしておいて、

結局自分の遊びたい欲を優先してしまい

酷いことを言ってしまいましたわ......」


「アカネ様を好きと思っての言葉のあやで

ございます。謝ればわかって頂けます......」


「好きと愛は違いますのよ......」


「......アリエル様......そんなことはございません。

私はきっと、【好き】を超えたその向こうに

【愛】はあると思っています。

間違えてなどおりません。愛を知るための今は

途中なだけであります......」


「......うう!ハルカ......」


こんな泣き崩れたアリエル様は初めて。


ハルカはなんとかアリエルを元気づけようと


試みるがなかなか立ち直ってはくれない。


「不老不死のアリーは至高の存在。

永遠を生きるアリーにとって、

人間やすぐ死ぬ生物など、

下等な生き物でしかないと

思っていましたわ......」


「......アリエル様」


「違いましたのよ......

永遠を生きるアリーには

永遠にたどり着けないことがあるのです」


「そんな、アリエル様は至高の存在でございます

それは間違いありません......!」


「ダメなのですよハルカ......。

アリーは所詮

無限に出てくる食べ放題のお肉。

無料で見れる動画や漫画。

たくさんいる婚約者候補のひとりなのです。


食べ放題にはないメニューや

課金したプレミアムコンテンツ。

本当に大事な好きな人。

それらには勝てないのです」


「......アリエル様」


「永遠こそ至高だと思っていましたが

今を懸命に生きる

限りある命や時に対して

全力で取り組む輝きには

アリーは永遠に勝てないのですわ......」


「アリエル様はもう、時間の大切さと

命の尊さに気づいております......。

だって、ご自身で仰っていたではありませんか。

クリスマス限定の価値を。

もう、アカネ様と一緒に居れるクリスマスは

二度と来ないのだと......」


「......うう、ハルカ......!」


「だから大丈夫でございます。

謝りに行きましょうアリエル様......」


「......うう!うわぁぁぁ......!!」















ーーークリスマス当日。



アカネはレイナとオーディション会場に来ていた。


あれから例の2人はずっとホテルで寝泊まりして

家には帰ってきていない。


悪いことしちゃったな......。

ちゃんと二人でクリスマス限定イベントに

行ってくれているのかな......。


応募者は約100人。

合格は2人。

メディアでも注目を集めている舞台。


「アカネ。脇役は貴女の得意分野でしょう......?

私と二人で役を勝ち取るわよ!」


「レイナこそ落ちないでよね!」


「笑わせないでちょうだい?今まで1度でも

私に勝てたことなどないくせに!」


「今日で必ず超えてみせるわ!」



そんな会場には一際目立つ人だかりがあった。


あれは......?


「元上り坂グループのセンター、キララさんだ!」


「す、すごい!断トツの美女!!」


そこにいたのはトップアイドルグループで

常にセンターをつとめ、先日卒業して

女優になったという【三千院キララ】の姿が。


私とレイナはその圧倒的な美貌に

押されてしまう。


ただのアイドルじゃない。

出演したドラマ全てが大ヒット。

あの美貌に加え、ダンス、歌唱力、

そして演技に至るまで最高級。


お飾りでもなんでもない。

実力でその地位を築いた本物。


こんな脇役オーディションではない。

間違いなく映画やドラマでも

主演級を張れる存在。

そんな三千院キララが

このオーディションに参加していたのだ。




「......ちょうどいいじゃない。

アレに勝てば誰も文句は言わないわ」


「ドラマと舞台は違うってこと、

わからせてやるわよ......!」





オーディションは1次、2次審査の2回。


どちらもサブキャストのセリフ、演技、歌と踊りを

評価してもらいそのまま今日合格者2人を決める。


控え室からお手洗いに出かけた私。


「絶対!絶対合格してみせる!!」


洗面所の鏡に向かって気合いを入れる。


今までにない集中力で迎えたこの日この時。


私にはもう、結果を出すしかないんだ......!




そんな


お手洗いから戻ろうとした私の前に


見慣れた2人が現れる。


「......え!なんでここに!!」


「アカネ様。こっそり侵入したので

手短に一言だけ。さぁアリエル様!」


ハルカに連れてこられたのであろう

そのアリエルの顔は

散々泣き腫らした眼に

涙を滲ませながらも

芯のある面持ちで

じっと私を見つめている。

への字口に鼻の穴がふごふご広がっていて

絶世の美女が見る影もない。


(アリエル様......早く謝ってください......!!)


何も言わないアリエル。


少しの沈黙......


そして


「......なんて顔してるのよアリー

美人が台無しよ......」


その私の一言でアリエルは

涙を止めることができなくなってしまった。


「......ぐすん......うう......アカネ!!」


やっと口を開いたアリエル。


「アリーは......!!謝ってあげませんわ!!」


(ええええアリエル様〜!?)


横でハルカが目をひん剥いている。


「アリーは事実を言ったまで!!

この至高の存在であるアリーを

本気で謝らせたいのなら!


アカネ!!

今日!!

......絶対に合格してきなさい!

そしたら謝って差し上げますわ!!」


大泣きしながらタンカを切ってきた

その精霊姫を見て


私はプッと吹き出してしまう。


ニヤリと笑みを浮かべ一言返す。




「......上等だよ。土下座させてやるからね!」






いつもと逆で


ハルカが、


そんな私たちを見て


やれやれという表情をみせていた。








さぁ


まさに舞台は整った......!


運命の


オーディションがはじまる......!!












読んでいただきありがとうございます!


もし少しでも面白いな、

続きが気になるなと

思っていただけましたら

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