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食べ放題とお姫様



まだ私が10歳の時でした。


突然の交通事故で両親を亡くした私は


親戚も少なかったため、


独り住んでいた祖母に引き取られた。


私は悲しみのあまり塞ぎ込んでしまい


いつまでたっても泣き止むことはなく


なかなか立ち直ることができないでいた。


祖母はそんな私を見かねて


ミュージカルに連れていってくれた。


私は大好きだった【アニー】と同じように


両親と離れてしまったが、それでも


明日に向かって誰よりも元気に前向きに歩く


そのアニーの姿に


自分の境遇を重ね、立ち直ることができた。


私が憧れの舞台女優を目指すようになることは


必然であり、祖母もそんな私を応援してくれた。


しかし、そんな祖母も私が大学に入る頃に他界。


私はまた、塞ぎ込んでしまい、


役者を目指すものの、鳴かず飛ばずの状態で


今もオーディションに受かることはなかった。


それでもまたアニーの影響で


前を向いて歩こうと


諦めずに進もうと


改めて思うことができた。


いつまでも悲しんでいてはダメだ。


両親と祖母は私が役者になることを


応援してくれた。


そして、今も


私を応援してくれる人が出来たのだ。


この2人とは期間限定のお付き合い。


春までしか一緒にいれない。


両親や祖母と同じく


別れる時が来る。




この不思議な2人は


私から愛を知ろうと日々努力をしている。


私が愛を教える?


恋人も出来たことのない私が?


愛とは


私にとっての愛とは......


両親や祖母は間違いなく私を愛してくれていたし


私も両親と祖母を愛していた。


愛する者を失った私は


塞ぎ込んでしまい、


人を愛することを恐れた。


こんな悲しい思いをするのならば


最初から愛さなければいい。


私は大学で


仲の良い恋人も友達も作れず


上辺だけのサークルの仲間が数人いるくらい。


そう。


私は人を愛することに






......怯えているのだ。







⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆




「アカネ!いい焼肉店を見つけましたのよ〜♪」


「アカネ様!なんと!お肉が食べ放題なのです!」


「......ああ。焼肉【牛きんぐ】ね。

普通に有名チェーン店だし......」


ある程度のお金を手にした2人は


毎日のように焼肉屋に通っていた。


胃もたれを知らない若い2人は

すごい量の肉を食べるので

どうやら食べ放題の焼肉屋に魅了されたようだ。



ジュージュー♪


「最高ですわ♪食べ放題♪」


「ドリンクも飲み放題です〜♪」


原理はよくわからないが


半分精霊であるこの2人は


いくら食べても太らないらしい。


さすがに付き合ってられん。




「いいね、2人は。人間は太るのよ〜......」


「まぁ......人間は不便ですわね?」


「無限に食べていいといっているのに

制限するとはなんと愚かなのでしょう?」


「焼肉食べ放題飲み放題とは永遠の命を持つ

アリーにまさにふさわしいですわね♪」


「私は焼肉定食で充分よ......」


「なんと!自ら食べる制限をかけるとは

人間とはなんて未熟なのでしょう」


「はいはい、私は永遠に生きないし、

肉も無限に食べられませんよ」


「おーほっほっほ♪情けないですわねアカネ!

やはりアリーこそ至高の存在ですわ♪」


「......拗らせ泣き虫ツンデレ女」


「ハルカ!それはムカつく!」


「ぎゃぁぁ!!」


偉そうなアリエルと


毒舌ハルカは相変らずだけど


私たちは3人で仲良く冬を迎えようとしていた。


すでにこの2人には感謝をしている。


しかし


私はこの2人を


愛することが


出来るのだろうか......


きっと


臆病な私は


また失うことを恐れて


愛することはできないのではないか?


私の中にある


何かしらの壁。


あの人は


仕事が愛だと説いた。


私の中で


何か


乗り越えなければいけない


大きな壁があることは間違いないのだけど、


それが明確に何なのか


はたしてどう乗り越えればいいのかは


わからないまま......。




うさ耳を引っ張って懲らしめた私は


ケラケラ笑っている2人とともに


帰路についていた。


「アカネ!クリスマスはお出かけしましょう」


「うんいいよ〜」


「やったやった♪どこ行きますか〜?」


「ハルカ!どこかいい所探しましょう♪」


クリスマスには女3人で


イチャイチャ旅に出ることになりそうだ。


ん?イチャイチャ?


いやいや


私は何を言ってるんだか......





「旅行ですわ〜♪」


「アニメの聖地巡礼はいかがですか?」


「ハルカあんたホントに

どんどんオタク化していってるね?」


「てぇてぇ!てぇてぇ!」


「......クスクス」


「いいよ?行き先は2人で決めな〜」


「アリーの素晴らしいお出かけプランを

楽しみにしていてくださいまし♪」


「......ふふ。楽しみにしておくわ」


「アカネ様をまたぴーぴー泣かせてやります」


「いちいち一言多いのよハルカ〜!」


「ぎゃぁぁぁ!!」


家の近くの公園で


いつもの追いかけっこを始める私たちを


12月の少し寒い風が


後を追うように吹いていた......。













読んでいただきありがとうございます!


もし少しでも面白いな、

続きが気になるなと

思っていただけましたら

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