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お月見とお姫様


9月の半ばといえば

お月見のシーズン。

けれど日本の夏はまだまだ暑い。


夏休み明けの大学では

相変らずいちいち私に絡んでくる

レイナとのやり取りをいつものごとくこなすだけ。


「あんた夏休み何してたのよ」


「ん〜......ほぼバイトかな?」


「......は?マジで?あんた大丈夫?」


「なにが?」


「いやいや。ついにやけにでもなったの?」


「いたって正常よ〜とても楽しい夏休みだったわ」


「あんたのためを思って言ってるのよ!?」


「はいはいご心配ありがと〜」


「なんなの!勝手にしな!?」


レイナは怒ってどこかへ行ってしまった。


さすがに態度悪かったかな......


いや、いいや。


あの子は【友達を心配してる優しい私】

という人を演じているだけ。


違うんだよね。


わかる。


あの子のセリフには


魂が入っていない


私の心に届かないんだもの。


......


あれ?


これどこかで聞いた気がするな?


なんだっけ。







まだまだ暑い9月の夕焼け空を

お月見団子を買って帰宅する。


「ただいまぁ〜お団子買ってきたよ〜」


「アカネ!できましたわ!

これ!見てくださいな!」


「アカネ様〜見てみて!」


「ん〜?

最近何かコソコソしてたけど何をしてたの?」


「アカネ!

お月見ということで、

かぐや姫というお話が

日本にはあるじゃありませんか?」


「うんうん、竹取物語ね。定番の昔話だね?」


「ほら!見てくださいませアリーのこと!」


「......ん?」


「ほら!ハルカも!」


「いつもの2人だけど?」


「もう!感が鈍いわねアカネ!」


「ぴょんぴょんうさうさ♪」


「何よ勿体ぶらないで言いなよ?」


「かぐや姫ってお話!アリーにそっくりでは

ありませんこと?ほら!うさぎもいます!」


「......ああ。」


「月からやってきて

竹から生まれたお姫様は

すぐにすくすく育ち大人の姿に成長。

あまりの美しさに殿方からは求婚の嵐。

しかし、全てを断って月へと帰ってしまう......

月では姫様のお供のうさぎがお餅をついて

ぺったんこ♪ぺったんこ♪」


「うさ耳メイドとのセットは確かに

被ってるね〜。それでそれがどうしたの?」


「アリーもかぐや姫のように

この日本で過ごしていますけど、

春にはまた自分の世界へ帰ってしまう。

でも、かぐや姫は結局いずれは

お別れをする運命のため

日本で何もなせずに終わってしまっています。

なので、そうならないようにアリーは

この日本で生きた証を残すことにしたのですわ!」


「ふむふむ?」


スマホを渡してもう1ヶ月半近くになる。


何かしてるなとは思っていたけど


なにか創作したのかな?


「これですわ!」


【☆アリエルちゃんねる☆】


現代のかぐや姫ことアリエルが

歌って踊ってみんなを楽しませるコンテンツ。


「マジか!配信始めたの!?」


「そうです!敏腕うさ耳マネージャーこと

このハルカの手にかかればアリエル様の

チャンネルは即大バズり間違いなしなのである!」


また変なキャラになっているハルカのことは

ほっておいてチャンネルを確認する。


アリエルとハルカが文字通り

歌ってみたや踊ってみたを配信するチャンネル。

このお月見シーズンに合わせて

今日配信をスタートさせたみたい。

すでに動画は10個ほど作ってあるようだ。


「へーよく撮れてるじゃない!」


「アカネをびっくりさせようと思って

内緒にしていましたのよ♪」


「そかそか♪いいじゃない、

たしかにこれなら

この日本でアリエルとハルカが生きた証を

残すことができるね♪」


音楽配信チャンネルを始めてしまった2人。


「でも2人はこんなに顔だして大丈夫なの?」


「どうせ春までの限定ですからね〜」


「何も問題ありませんわ」


まぁこの2人のビジュアルなら少し

人気は出るかもしれないけれど

騒ぎになるほどのことはないか......


「うんうん......収益化とかできたらいいね♪

その時はお祝いに焼肉に行こう♪」


「焼肉うひょー♪」


ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶハルカ。


「世界の歌姫であるお母様の血を受け継いだ

アリーにかかれば即大バズ間違いなしですわ♪」


ふふふ。


楽しそうでよきよき。


スマホをちゃんと実のある使い方をしてくれた

ようで渡した甲斐があったってもんだよ。


「せっかくなので1曲オリジナルを作曲しますわ」


「へぇ!いいね♪」


「それを作ってアリエル様は無事にこの

日本での課題とともに卒業というシナリオです♪」


「目標が出来たのはいいことね♪

私も応援するわ。頑張ってみなさいよ♪」


わいわい

やんややんや。


楽しそうな2人を見て

私も頑張らなきゃなと

来月ある演劇オーディションに

向けて準備を始める。


そんな簡単にバズれば誰も苦労はしないさ。

現実はそんなに甘くないと

2人も実感することだろう。


私は私のやれることを

1つずつしっかりやって行こう......。











そりゃそうよ。


まさかよ。





翌日に


たったの1日で


総再生回数100万回を超えた


アリエルちゃんねるという


大バズり化け物チャンネルが


誕生することなんて


私が予測できるわけないじゃん......














読んでいただきありがとうございます!


もし少しでも面白いな、

続きが気になるなと

思っていただけましたら

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