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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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 昨日の夕食、今日の朝食を食べておらず、お腹が減っているはずなのに空腹感がない。それなのに吐き気がする。

 酷い病に侵されてしまったような状況。もともと痩せているのに、さらに痩せこけてしまう。


 まさか、好きな人に嫌われるのがこれほど堪えるとは。世界の何もかもが灰色に見える。長年紡がれてきた音楽という芸術も雑音に聞こえる。水すら不味く感じる。

 支えがぽっきりと折れてしまった苗木のように、自力で起き上がれそうもない。このまま、枯れて朽ちて、跡形もなく消えてしまいそうだ。

 もう、どうしたらいいのかわからない。ここまで嫌われてしまったら、取り返しがつかないのではないか。


 結局、土曜日の午前中は何もできなかった。ただ、携帯電話が夕方ごろに鳴り、弱々しい手つきで掴み上げる。

 液晶画面に映っていたのは陽翔くんからのメッセージだった。


「今日、越の湯に行かね?」


 友達からの久しぶりのメッセージ。それを見たら、血が通っていないのではないかと思っていた体が少し動かせるようになった。「行く」とメッセージを返すと、夜七時に現地集合することに。


 ベッドから起き上がると、まず軽く食べ物を胃に入れる。水も飲む。ふら付いていた視界が定まるようになった。

 今の時期、もう半そで短パンで過ごせてしまうので、クローゼットから適当に引っ張り出してきた服を身に着ける。服装とか気にする余裕はない。


 昨日まで無意識に使いまくっていた自転車の漕ぎ方がぎこちなく、何度かペダルを踏み外す。安全確認だけは怠らず、いつもの二から三倍近く時間をかけて目的地にやってきた。

 木崎通りにある『越の湯』。温泉ではなくスーパー銭湯という枠組みに入る風呂屋だ。

 入口近くに福井工業大学付属高等学校の青い体操服姿に加え、大きめのエナメルバックを肩に掛けた見知った者を見つける。

 彼の表情は今の僕からしても、大分やつれて見えた。


「久しぶりだな……」

「う、うん、久しぶりだね……」


 ざっと二カ月間会っていなかっただけ。それでも、もう何年も会っていなかった知り合いのような雰囲気。正直、違和感の方が強かった。

 あの、元気が取柄といっても過言じゃなかった陽翔くんに元気の欠片もない状況だったから。


 僕は下着類を入れたトートバッグを持ち、彼と一緒に『越の湯』の建物に入る。お風呂特有の石鹸の香りが涼しい風に乗って漂う。

 靴をロッカーに入れ、券売機で券を買った。受付に見せたら、男湯の懸け布がある方にゾンビのような足取りで歩いていく。

 もう、左手にある休憩スペースで阪神タイガーズの試合を観戦しているお爺さんたちの方が、活力があり元気に見えた。

 陽翔くんはタイガーズファンだったはずだが、中学時代と同じ熱気は感じられない。


 仕事終わりの人達が来ている手前、人数は多め。多くの者が疲れ切っているように見える。仕事が大変なんだろうなとすぐにわかってしまう。そう考えると、夜遅いのに毎日元気よく家に帰ってくる父親は体力お化けなのだろうか。その遺伝子が僕に流れているとは思えない。


 ここまで、僕と陽翔くんに真面な会話がなかった。話したいことは沢山あるのに、どう切り出していいかわからない。

 すっぽんぽんになった後、手ぬぐい一枚持って、陽翔くんはほぼ無意識のうちに体重計に乗っていた。頭をぐいっと後ろにそらし、たじろいで両手の拳をぎゅっと胸に押し当てる。

 軽く過呼吸気味になっており、やはり顔色が悪い。風邪を引いているわけではなさそうだが、自分の体重を見てから挙動不審になっていた。給水機で水を飲んでもらい、とりあえず落ち着かせる。


「は、ははっ、やっべ、やっべぇ……、また、一キロ減ってるわ……、また、先輩たちに……」

「お、落ちついて、陽翔くん。深呼吸、深呼吸しよう」


 誰かに構っている余裕など僕にもない。でも、放っては置けない。椅子に座って、とりあえず休憩。まだ、お湯にも使っていないのに。


「ごめん、ちょっと取り乱した……」

「ううん、気にしないで。ここは深夜一時まで開いているから」


 落ち着いた陽翔くんと風呂場に入る。先に体を洗って、綺麗にした後、一番広い風呂に浸かった。体に暖かいお湯が染みわたる。

 久しぶりの大きなお風呂。部活終わりに入ると最高だったのだけれど、同じように感じられない。ただ広いだけのお風呂だ。

 それでも、隣にいる陽翔くんは血の巡りが良くなったから、顔色が良くなったように見えた。彼はお風呂が気持ちいと感じているのかもしれない。


「寮の風呂に入るよりもずっと気楽だわ……。ほんと、ことあるごとに先輩たちがいびってくるから、落ち着けねえのなんのって」


 部活内での年功序列が厳しいようだ。中学三年だと、先輩呼びされていたけれど、高校一年生になれば一番の下っ端に早戻り。そういう日本の教育機関の体勢だから仕方ないんだけれど、環境が変わると一気に変わってしまう子供も少なくない。

 その影響で、虐めや不登校が増えているという記事を読んだ覚えがある……。小学校から中学校の変化は小さいけれど、高校生のハードルが非常に高い。何なら、その上に大学まであると、生粋の陽キャくらいじゃなければ環境に適応できないのではなかろうか。


 お風呂であまりペラペラしゃべると周りに迷惑がかかる。必要最低限の会話にとどめ、サウナに入った。まだ、なにがいいのかわからない……。いつか、良さがわかる時が来るのだろうか。

 全身が温まりポカポカすると、心が軽くなったような気がした。


 お風呂場を出た後、体をバスタオルで拭く。清潔な下着を履いて、着てきた服をそのまま着た。ガラス瓶ではなくなってしまった牛乳を飲み、乾いた喉を潤す。


「ラーメンを食いに行こうぜ」

「良いね。今日は何も食べてなかったから、お腹が空いたよ」


 近くの八番ラーメンにやってきた。彼は敦賀駅の駐輪場に自分の自転車を置いておいたらしく、二カ月ぶりに利用している。あまり褒められたことではないけれど、用意がいいやつだ。


 僕は味噌ラーメン単品、陽翔くんは味噌バターラーメンに餃子二人前、チャーハン二人前、非常に多い……。


「食って体重を増やさねえと、監督や先輩にどやされるんだ……。減っていたとばれたときにわ、もう、吐くまで食わされて死にかけた」

「そ、それは……、きっついね」


 やはり強豪校というだけあり、練習のレベルが高く、毎日過酷な日々を過ごしているらしい。

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