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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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 そんな中、嵐山さんはふと神妙な顔で俯く。


「私、中間テストが終わったら、部活を辞めようと思う。要領が悪いから、勉強と部活、一緒にこなせない。部活を続けても、何の意味があるかわからない。どうせやめるなら、早めにやめた方がいいかなって」

「そ、そうなんだ……」


 ただの僕のわがままだけれどやめてほしくはなかった。この前見た、彼女の涙は嘘じゃない。歯を食いしばって、なにくそって気持ちであがいて、見返してやるという意思を感じた。

 見ている方は楽だけれど、当の本人は相当辛いと思う。部活をやめたくて仕方がなくなるほど、追い詰められてしまっているのか……。


「嵐山さんが吹奏楽部に入ったきっかけって何なの?」

「きっかけは、小学校の友達がみんな、吹奏楽部に入るって言ったから……かな」

「じゃあ、吹奏楽部の好きな所は?」

「好きな所? えぇー」


 顎に手を当て、長いこと考えていた。なかなか出てこない。


「わっかんない。なにが好きで、吹奏楽部やってんだろう……。中学までは凄く楽しかったと思うんだけど、高校の吹奏楽部に入ってから全然楽しくなくてさ」


 苦笑いしながら頬を掻く。笑っているのに、雰囲気は暗い。

 その話を聞きながら、僕は何となくシンパシーを感じた。部活の話ではないけれど、同じなのに同じではない者を見て、頭が混乱してしまう話。


「嵐山さんの気持ち、よくわかるよ。僕も、似たような経験をつい最近までしていたんだ。同じなのに、同じじゃない……。凄くもどかしい気持ち」


 彼女は僕の話を少し俯きながら聞いていた。でも、小さく頷く。


「嵐山さんが見ていたのは吹奏楽部の楽しい面。でも、今見ているのは、きっと吹奏楽部の辛い面なんだ」


 僕は自分の経験を踏まえ、口下手ながら精一杯話す。


「印象が強すぎて、そこにしか目がいっていないのかも。でも、余裕が出てきたら、ふっと見たことのある面を思い出すときがある。辞めることは簡単だけど、今じゃなくてもいいんじゃないかな。嵐山さんは、誰が見ても頑張っているよ。凄い。凄い頑張っている」


 後頭部を掻きながら、慣れない話をペラペラと……。不意に伸びていた手が彼女の背中を撫でていた。彼女からのボディータッチが多かった影響かもしれない。


「う、うぅう、やっぱり神村くんは沼男だよぉ……」

「そ、それって褒められているのかな……」


 珈琲を飲み終え、そろそろ帰ろうと思っていたころ、携帯電話が震える。香奈さんからのメッセージだった。


「やっぱり神村くんも口だけの男なんだね……」


 僕と嵐山さんが横並びでパフェを食べ合うシーンが写真で送られてきた。

 近くで子どもがガラス製のコップを不意に落としてしまう。

 甲高い音が天井の高い店内に響いた。コップが割れ、ガラスの破片と水、氷が床に広がる。コップはもう使い物にならない。


「ちょ、ちょっと、ごめん」


 僕は千円札をテーブルに置いておき、店内を出る。送られてきた写真の角度を見たが、そこにもういなかった。なら、外に出てしまったのだろう。いつの間に、香奈さんが入店して出て行ったのかわからなかった。

 外で辺りを見渡し、香奈さんを探す。

 見覚えのある自転車が駐輪場に置かれていた。香奈さんの自転車だ。道路側、駐車場側と見て回ると裏手にある松島中央公園の方にとぼとぼと歩いていく人影を見つける。

 一度振り返ると、ぐずった子供のような顔で僕と目が合った。彼女はすぐに走り出し、公園の中に入っていく。


「香奈さん、待って」


 僕は周りに気を付けながら逃げる彼女を追う。全力で逃げるから、こっちも全力で走るほかない。運動が苦手な彼女と、比較的動ける僕の差は数秒で埋まる。

 何も遊具がなく、ただただ、だだっ広い公園の中央で彼女の手首を掴んだ。


「香奈さん、さっきの写真、あれは誤解なんだ。嵐山さんとは、ほんとに勉強会していただけで」

「は、放して。触らないで!」


 僕は力が入り過ぎていた手を放す。どうにかして、誤解を解きたい。自分の気持ちをわかってもらうには、直接伝えるほか方法がなかった。


「こんなところで言うのもなんだけど、僕は星野さんも、香奈さんもどっちも好きだ。別物に見えていたけど、最近、やっと自分の気持ちに気づけたんだ」

「……嘘」

「嘘じゃない。僕は本気だよ……」

「良いように言って、外ずらがいい糞男みたいな発言、やめてよ……。男なんて、可愛い子が寄ってくれば所かまわず手を出すんでしょ。どうせ、神村くんも私のお父さんみたいに、いろんな女をはべらせて……、大切な人を泣かせるんだ」


 今までに見た覚えもないくらい、弱々しい背中だった。そこが、星野さんと被る……。一人で抱え込まないでほしい。どうして辛いのか話してほしい。支えてあげたくなる。そんな、言葉が頭に浮かんだけれど、言葉よりも先に体が動いていた。


 弱々しい背中を支えるように背後から抱き着いてしまう。


「僕は香奈さんが好きだ」


 声が軽く震えた。正直な気持ちを伝えたつもりだ。だが、どうにもこうにも、本心を言ったところでちゃんと伝わってくれるわけじゃないらしい。

 咄嗟に離れられたあと、鋭い平手打ちが左頬に打ち込まれる。強烈すぎて、顎が砕けるかと思った。


「好きだから何っ。そんなあいまいな言葉を言われたって、これっぽっちも嬉しくない。神村くんの気持ち……、全然わからないっ!」


 香奈さんは険しい顔で泣いていた。僕の横を通り過ぎていき、公園から出て行く。

 僕は彼女の平手打ちが強烈すぎて、動けずにいた。地面に力なく、座り込んでしまう。


「あぁ……、情けない」


 女の子を泣かせてしまうなど、男の恥じもいい所。どうやら僕の行動全てが香奈さんの地雷を踏み抜いていたようだ。完全に嫌われてしまったな……。

 地面に倒れ込み、薄暗くなっていく空を見上げる。世界が滲んでいき、腕で目を覆った。


 僕はその後、どうしたのかあまり覚えていない。嵐山さんから連絡を貰って合流し、彼女を送ってから家に帰ったと思う。

 香奈さんに連絡しようと思っても、ラインやインスタグラムはブロックされていた。電話をかけてもつながらない。おそらく迷惑電話に登録されている。


 土日が開けたらテストだというのに、頭が回らない。ベッドの上から一歩も動けない。

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