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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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 テストの本番一週間前を、テスト週間と呼ぶ。この間は、どの部活も活動できない。

 自主練は可能だが、ほとんどの生徒が勉強をこなす。部活動の中には、部活の生徒で集まり一部屋を貸し切って勉強会を開く教師もいる。

どうも、部活の生徒が赤点を取り、追試になると部活に影響があるからだそう……。

 放課後の部活一色ムードが一八〇度変わり、教室、図書室、各所の自習スペース、生徒指導室の横にある自習質が勉強の意欲のある者で埋まる。最も効率が悪いのは教室。友達を喋っている間に、放課後が終わって「あぁー、何もやってなーい!」が、お決まりの文句。


「あぁ~、全然わっかんなーいっ!」


 嵐山さんの悲痛の叫びが、教室に響く。ここ、文理進学科の者たちは勉強できる者が多いからか、集中できる場所を求めて校舎に放浪の旅に出ており、教室は穴場だった。


「うるせえなぁ。肺活量あり過ぎて、声がデカい。胸はねえ癖に」

「胸はないは余計でしょ。私だって、肺活量より、胸の量を多くしたいよっ」


 嵐山さんは机をバンバン叩く。突発的に発生した嵐になっている。少しでも触れれば傷が尽きそうな荒れ具合だ。問題がわからないイライラと、楽間さんの毒攻撃により、憔悴している。


「歩ちゃん、吠えても、問題は解けないよー。ほら、手取り足取り教えてあげるから」


 香奈さんはおそらくわざと大きな胸を嵐山さんの後頭部に押し付けるようにして抱き着く。彼女の学力は本物。されど、口ではなく態度でおちょくってくる高等テクニック。

 嵐山さんは完全にテーブルに突っ伏した。


「うえぇーん、みんなして私をいじめてくるぅー。神村くん、慰めてぇー」

「あ、ああ、よしよし。一緒に頑張ろう」

「うえぇ、嘘泣きムーブまでかますのかよ……、痛い女め」

「……う、うえぇーん。ぜ、ぜんぜんわからなーい」


 香奈さんが外人かと思うほど下手な日本語で言う。外人なら日本語上手ですね、とほめたくなるほど。


「全部解けているでしょうが」


 香奈さんのノートを覗き見る楽間さんがジト目で睨む。「頭いいマウントか、この野郎」と言わんばかりに鋭い視線。


「なにがわからないの?」

「神村くんの気持ち……」


 空気が固まる。僕と嵐山さん、楽間さんの時が止まったようだった。


「な、なんちゃって~。もう、みんな、固まらないでよ。当たり前やないかーいって、突っ込むくらい明るくいこうじゃないの!」


 一人で乗り突っ込みし始めた香奈さんを見て、冷え切った空気は溶かされる。

 いきなり、言われてとまどった。あの状況で、真面に返答できる男はいるだろうか。


 香奈さんと嵐山さん、楽間さんが視線をぶつけあわせると、今度は妙に空気が熱くなった気がする。

 その後、嵐山さんと楽間さんから勉強を教えてとせがまれ、香奈さんからは勝負を挑まれる。他の者のテスト勉強と比べると、大分にぎやかだった……。


 テスト週間の金曜日。嵐山さんと二人で勉強会する約束を果たす日が来た。

 放課後、嵐山さんと教室を出ようとすると背後から香奈さんが話かけてきた。


「あれ、今日はもう帰るの?」

「えっと、今日は前々から嵐山さんと二人で勉強会するって約束していて」

「二人で勉強会。ふぅーん……、学校じゃなくてわざわざ別のところで勉強会するんだ。二人で」


 香奈さんの口調がいつもよりとげとげしい。何か、悪いこと言ったかな?


「私、香奈ちゃんよりも頭が悪いから、マンツーマンで教えてもらいたいなって思って」

「なら、私とマンツーマンで勉強し合う? 神村くんより、成績を上げられる自信があるけど」

「い、いやぁ、香奈ちゃんはスパルタだろうから、遠慮しておこうかなぁ。い、いこ、神村くん!」


 嵐山さんは僕の手を取ると、香奈さんから逃げるように走り出した。思ったよりも力強くて、引っ張られる。


「嵐山さん、香奈さんも一緒なら、二倍、教えられると思うんだけど」

「二人から詰め込まれたら頭がパンクしちゃうよ!」


 生徒玄関まで、僕たちは手をつないだままだった。下駄箱に来てようやく握り合っていた状況を知覚し、さっと手を放し合う。


「あ、あはは……、咄嗟だったから、つい」


 今日は珍しくツインテールではない。髪を下ろしたストレート。手で散らばった長い髪を耳に掛けると、いつもより大人っぽく見える。

 嵐山さんは徒歩で登校しているらしく、自転車は持って来ていないそうだ。


「か、神村くんの後ろに乗せてもらおっかなー」

「二人乗りは危ないから、僕の自転車に乗って良いよ。僕は走るから」


 嵐山さんの目が点になった気がする。


「ま、神村くんだから仕方ないよねー。女心の欠片もわかっていない感じが、神村くんクオリティーって感じ」

「あれ、……ものすごくけなされてる?」


 自転車に乗った嵐山さんを追って、走る。サドルが高いままになっているから、立ち漕ぎっぽくなっている。ちょっと強い風が吹くとスカートが浮かび、下着が見えそうになった。肩ひもの長いリュックを背負っていれば重しとなってスカートを押さえてくれるのに、ギリギリ届いていない……。

 前を見ないで走るのも危ないし、自転車よりも早く走れるわけがないから、必然的に僕が後ろになってしまう訳で。


 目的地の喫茶店に来るまで、数回パンチラを経験し、心臓に悪い思いをした。見えそうになったら毎回、視線を反らしたので許してほしい。

 喫茶店に到着。平日でも人気なチェーン店だが、空いている時間帯だった。


「お好きな席へどうぞ」


 僕は二人席に座ろうとするが、グイッと引っ張られて座ったのは四人席。面と向かってではなく、横並びで座る羽目に。


「こっちの方がテーブルが広いし、勉強しやすいでしょ」

「ま、まあ、確かに……」


 ――でも、わざわざ横並びになる必要はなかったのでは。というか、今日は何か一段と距離が近い気がする。


 肩と肩が完全に当たり、ボディータッチがやけに多い。制汗剤か、トリートメント、柔軟剤かわからないが、男とは違う優しい甘い香りが漂ってくる。


 ジュースではなく珈琲を頼み、ちゃんと勉強。二時間みっちりやり込む。最後、出題範囲から問題を出すと、これまでの勉強の成果か、問題の正答率が上がっていた。


「勉強のご褒美にパフェたべよー」


 頑張ったのなら、いいでしょうということで、彼女はチョコレートとイチゴのパフェを頼んだ。思っていたよりも大きい。小柄な彼女の胃に入るのかと心配になった。


「はい、カマンベールチーズっ!」


 ぎゅっと抱き寄せられると、パフェと一緒にツーショットを撮られる。あまりの早業。さすが女子高生といったところか。


「じゃあ、今日のお礼ということで、はい、あーん」


 細長いスプーンで具を掬い、僕に食べさせようとしてくる。いただいてもいいのかと思いながら、これ以上待つとアイスが溶けてスプーンから落ちかねない……。ありがたくいただいた。


「美味しい……。わけてくれてありがとう」

「どういたしまして~」


 嵐山さんはスプーンで具を再度掬うと、頬を少々赤らめ、間をおいて食べる。何とも幸せそうな顔。よっぽど甘い食べ物が好きなようだ。

 パフェを食べている間、この前の電話の続きみたいな他愛ない会話が繰り返される。


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