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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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 キスのこと? 蒼真先生のこと? 昼間、嵐山さんと楽間さんの二人と昼食を取ったこと?

 授業中もノートの端っこにグルグルと円を描き、集中力が散漫する。なぜ、こんなに考えてしまうのか。もっと単純な男だったら、気にしなかったのかな。


 ――今、一番に考えないといけないことは、何か。それが重要だ。


 僕は授業を聞きながらも、ノートの余ったページに頭の中で考えた内容を書きなぐる。頭の中で考えているだけでは、パズルのピースが散漫になっている状態で解くのと同じだ。ある程度、位置が特定できれば解くのも簡単になる。

 その作業で見つけた、重要なピース。それは、僕が香奈さんを好きなのかどうか。それがはっきりしていないのが問題だ。


 少し前まで、僕は複雑な気持ちだった。星野さんが好きで、香奈さんは仲のいい友達という感じだった。それなのに、いきなり同じ人だと知って好きの気持ちと友達の気持ちが混ざり合っている。

 香奈さんとは友達でいたかった。その時は、好きな人がいたから。

 今でも、僕は星野さんが好きなのかもしれない。だからこそ、この状況で香奈さんが好きだと言ってしまっていいのか、わからない。

 どうしても、喉に魚の骨が引っかかったような気がする。


 ――なんで僕は星野さんが好きになったんだろう……。


 もう、三年近く前の気持ちで思い出すのが難しい。一目惚れにしても、何かしらあるんじゃないか。そんなことを考えていたら、授業が終わり、放課後になっていた。


 皆がいなくなったら、香奈さんに話しかけよう。今の気持ちをどうにか聞いてもらおう。そんな風に思っていたけれど、三〇分もすると教室の中にいるのは僕だけだった。


「あ、あれ、香奈さん、どこに行ったんだろう」


 彼女は僕と同じで部活にまだ入っていなかった。いつも、放課後は残っていたはずだ。なのに、今日はいない。


「携帯電話で連絡を取ろうか。い、いや、何か用事があるのかもしれない。そもそも、香奈さんが確実に残るなんていう甘い考えが間違っていたんだ」


 一人しかいない教室は、あまりにもだだっ広く、無性に涼しく感じた。

 隣に彼女がいて、勉強していた日々が遠い昔のよう。

 高校生は百年時代の日本でたった三年しかない。全体の三パーセント。そのうちの一日など全体から見たら米粒のようなものだ。その一日のたった一時間、二時間、なんならたった一分でも思い出になってしまったら、人の心に一生残り続ける。


 好きな子と二人切りになれた、手を繋いだ、キスした、そんな一瞬が何年も先の自分も覚えている。勉強したことはすぐに忘れてしまうのに。人の記録媒体は偏りが酷いな。


「香奈さんがいないと、なんか寂しいな……」


 女々しすぎて、奥歯を噛む。好きという気持ちよりも、別の何かが心に巣くっているようだ。

 シャープペンを握っているのに、携帯電話が気になって仕方がない。やはり携帯電話は魔物だ。僕の心を簡単にかき乱してくる。


「連絡……してみようかな。でも、なんて送ればいいんだろ」


 携帯電話を手に取り、文字を打っては消し、また打っては消し。踏ん切りがつかない。

 でも、今のこのもやもやとした気持ちを彼女に聞いてもらえたら。


 ――もしかしたら、ちゃんと好きになれるのかもしれない。


 僕が連絡しようと思っていると、逆に香奈さんの方から電話がかかってきた。携帯電話を落としそうになりながらも握りしめる。

 出るか、出ないか。一瞬迷った。でも、せっかく連絡してくれたのだから、出ないわけにはいかない。

 カッターシャツを引っ張り、軽く腕まくりしてから通話ボタンを押す。


「も、もしもし……。えっと、どうかしたの?」

「ちょっとね。今、時間は大丈夫?」

「うん、相変わらず教室で勉強しているけど……」

「なら、体育教官室に来てくれる。直接聞いたほうが速いと思ってさ」


 僕は香奈さんに呼ばれ、新体育館にある体育教官室に小走りで向かう。

 体育教官室の前に香奈さんと蒼真先生の姿が見えた。まさか蒼真先生もいるとは思っておらず、たたらを踏む。

 どうして、蒼真先生がいるのか理解できない。二人の仲が良さそうな姿を見せられるのもごめんだ。ただ、すでに時遅し。

 香奈さんが僕の存在に気づき、手を振っている。


「優くん、早く早くっ。なに、突っ立ってるのー?」

「優くん……? 妙に親しげだな。香奈にしては珍しい」


 蒼真先生の威圧感ある鋭い視線が僕に向けられる。香奈さんが僕の名前を呼んだだけで機嫌を悪くするなど、やはり彼女と何かしら繋がりがある相手なのだろうか。


「こ、こんにちは……」

「声が小さい。男ならもっとはっきりしろ。それでも元柔道部か?」


 蒼真先生は腕を組み、非常に高圧的。弱者を見下ろす強者の風格。どこか、先生と生徒が話している雰囲気ではない。


「こ、こんにちはっ!」


 蒼真先生の言いようにムカッとした僕は、新体育館一杯に広がる大声を出した。対応が子供っぽ過ぎて、叫んだあと後悔する。

 蒼真先生は満足したのか「こんにちは」とさっきの僕と同じくらいの声で返事してきた。

 感情が表情に出ないよう出来る限り、笑顔を作る。どれだけできていたかわからないが、口もとは軽く痙攣していた。


「えっと、簡潔に言うと今、柔道部は新入部員を絶賛歓迎中らしいの。私が知り合いに元柔道部がいるって言ったら、食いついちゃって……」


 香奈さんは申し訳なさそうに事情を説明してきた。


「蒼真先生が優くんの中学生時代の大会成績を見て、興味を持ったんだって」

「大会に全敗した僕にどんな興味を……」

「大会の映像を見た限り、お前は初戦で敗退するような奴ではないと思った。だが、負けている。いつも負けに行っているように見える」

「ぼ、僕はどの試合も本気でしたよ。それでも、相手の方が強かったから負けるんです」

「映像を見る限り、黒帯だったということは昇段試験には受かっているのだろう。試験で勝てて試合で勝てないのはおかしいだろう」

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