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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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 僕が引いた数字は四番。外側の一番前だ。先生たちが使う、鉄製の大きな机が目の前にあり、おそらく二、三番目に運の悪い席だ。

 香奈さんは一つも動いておらず、前と同じ場所。僕がいた場所に別の男子がいる。彼女の隣に座った男子が、なぜか勝ち誇った顔しているように見えるのは気のせいだろうか。


「あれー、もしかして四番って神村くん?」


 机ごと大移動した後、隣にやってきたのはツインテールを揺らしながら、えっちらおっちらと机を動かしている嵐山さんだった。

 木製の床板二枚分ほどの距離間。床に机の位置を指定するビニールテープが張られており、そこに机の角を合わせる。すると、以前のように机が綺麗にそろう。


「一ヶ月間、よろしくねー」

「は、はい。よろしくお願いします」

「神村くん、隣の席が香奈ちゃんじゃなくなって緊張しているの? 表情が硬いよー」


 嵐山さんは小さな手を頬に当て、笑って見せる。愛想の良さが、徹底されていた。

 香奈さん相手だと緊張して喋られなかったが、嵐山さんが相手だと問題なく会話出来た。ときおり、もといた席に視線を向けると、頬杖着いた香奈さんの視線とぶつかる。

 頬が膨らみ、目尻が垂れ下がり、表情がむっすーとしているように見えた。


「あれあれー、まじか。同じ班じゃん」


 僕の背後に楽間さんがやってきた。前髪がヘアピンで軽く止められており、顔がいつもよりすっきりして見える。邪魔なら切ればいいのに……と思うのは男子の考え方か。


「ひひひっ、これで背後からちょっかい出し放題だな」


 机に突っ伏し、気怠そうな彼女はシャープペンの頭で肩甲骨付近を突いてくる。暇をつぶすための玩具にされてしまいそうだ。

 前の席になると黒板に近くなり、板書が見えやすくなった。でも、香奈さんがいる場所は顔を背後に向けないと見えず、どういう状況か確認しようと思っても授業中だと先生の目があって難しい。


 英語の授業が始まり、「隣の人と英文を交互に読みましょう」と先生が言う。僕はスラスラ読めるけど、隣の嵐山さんはちょっと苦戦気味。ときどき、ローマ字読みで「アイ・ハブ・ア~」と引っ掛かりながら呟き、顔を顰めながらフクロウのように首を傾けていく。それが逆に可愛く思えてしまう。


 高校生になり、一ヶ月。大学受験までに覚えなければいけない英単語の数は三千を超え、中学の時以上に難しい構文や文章量が増え、内容の質は比べるまでもなく上がっている。

 勉強の手をぬけば、置いて行かれるのも仕方がない。ここは普通科ではなく、進学科ゆえに進むスピードも速く、一度躓けばずっと置いて行かれる。


「うぅ、私、英語が得意なはずだったんだけどな……」


 嵐山さんは教科書に書かれた英文にスラッシュを入れ、読みやすさと意味をわかりやすくしている。部活も振るわず、勉強も遅れ始め、高校生活の洗礼を受けているようだった。


 僕は部活動に入っていないおかげか、周りよりも勉強についていけた。まあ、部活に入っていないからこそ、勉強だけはと思ってイノコリ勉強した甲斐はあった。部活に入ってしまったら、下校時間まで勉強できなくなる。

 ヘロヘロになった後、家に帰って勉強する気が起きるだろうか。普通の部活ならまだしも、柔道部はブラックだ。身も心もすり減って家に帰ったころには、勉強どころではないかもしれない。


 勉強の仕方とか、嵐山さんに教えたところでウザがられるだけだろう。勉強できる時間があるなら、自分も出来ると唇を絞った表情からにじみ出ている。部活が悪いとまではいわないが、心の中で何を思っているかわからない。


「部活動に入っていると勉強する時間が減っちゃうから、部活で精一杯頑張っている人は大変だよね。勉強も同じくらい頑張るよう言われるんだから」

「ほんとだよ。もう、部活で頑張っている人は宿題なしとか、特別処置を施してほしい」


 実際、一度の宿題に意味はほとんどない。

 先生たちが生徒たちを評価するために提出するように強制させている。もちろん、テストの結果が悪ければ宿題の提出の有無で、成績を決められるけど、部活に力を入れている者からすれば宿題の時間が惜しいのではないだろうか。


 勉強する者は、自然に勉強するし、しない者は宿題を提出するだけでその後は基本的にやらない。それで学力がつくわけがなかった。

 もちろん、テスト期間だけで頭がよくなるわけがないから、日ごろの勉強が欠かせないんだけれど、宿題は各自の自主勉というふうにするのが一番効率的だと思う。

 ノート一ページ、なんなら一行だけでも、宿題は提出したことにして、各自の努力を見てもらいたい。

 答えを見ながら解いた宿題に意味はないと誰もがわかっている。先生もそうだろう。でも、答えを見るしかない状況だってある。さぼりは論外だが、部活の疲労だとか、風邪とか、苦手分野とか、もっと学生に寄り添った教育方法はないのだろうか……。


「ねえ、神村くん、この文はどういう意味?」


 英文の和訳をこなしていたら、嵐山さんがノートに指さしながら訊いてくる。携帯電話で翻訳すればすぐにわかるけれど、授業中は使えない。電子辞書や紙の辞書で調べるのも面倒臭い。なら、わかる人に聞いたほうが速いという話になる。だが、勉強は自分で調べないと頭に入らない。


「文法とこの英単語がわかれば、意味が理解できるよ」


 回りくどいけれど勉強の道は楽できないのだ。

 嵐山さんは僕に言われた通り、単語を調べ、文法も理解した。すると、謎を解き終えた少年のような顔になり「わかったっ!」と声をあげる。

 一挙手一投足がちょこちょこしており、チワワが元気よく走っているようで可愛らしい。

 英語の時間が終わると、数学の授業がやってくる。


 嵐山さんの口から煙が出ているように見えた。数学に苦手意識を持っている者は多く、爆速で進んだり、受験に出てくる可能性が低い箇所はさわりだけで、すっ飛ばされたりする。その影響で進み具合が半端ない。

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