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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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「星野さん、携帯電話をマナーモードにした?」

「ああ、そうだそうだ。忘れてたよ」


 トートバッグから携帯電話を取り出すと、どこか香奈さんの使っている品に似ている気がした。香奈さんは学校で携帯電話をほとんど使わないから、たまにしか見ないけれどアイフォンで、ピンク色っぽいスマホケースに入れていた気がする。彼女も同じだった。

 加えて、フェイスアイディーでホーム画面に移動すると、僕と香奈さんのツーショットが見えた気がする。

 野坂山の頂上で撮った写真だ。

 気がするというのは、液晶画面が光った瞬間に星野さんが自分の胸に携帯電話を押し当てたから、よく見えなかった。本当に一瞬だった。

 星野さんの顔が僕の方に向き、視線が気持ちいくらい完璧にあう。


「も、もう、優くん、女の子のホーム画面は覗いちゃ駄目だよ」

「み、見てないです、見てないです」


 じーっと、疑われているような視線を向けられながらも、彼女は携帯電話の側面についたサイレントスイッチを押し、マナーモードにした。どこか、使い慣れていない雰囲気があって、彼女も高校生から持ち出した口だろうかと勘繰ってしまう。

 映画が始まると、外部の音が阻害された空間でキャラクターの声や自然の音が質のいい巨大なスピーカーから流れてくる。

 大画面、ヌルヌル動く映像、可愛らしいキャラクター達の織り成す一本のドラマが僕たちを楽しませ、ハラハラさせ、涙を誘う。

 星野さんの手にぎゅっと力が入ったり、力が抜けたり、を繰り返しているとなんか、変な気分になってきたりもする……。


 終盤が迫ってくればもう、涙で視界が見えなくなるくらい涙腺が緩んでいた。エチケットのハンカチとポケットティッシュを持ってきておいてよかった。

 隣から、ずびずびと鼻をすすり、息するのも少し苦しそうな星野さんがいる。暗い中、バックに手を突っ込んでティッシュを探そうにも難しいだろう。そう思い、僕は彼女にポケットティッシュを手渡した。少しすると、彼女が寄ってくる。


「……ありがとう」


 周りに気遣った小さな声が、左耳を擽ってきた。綿棒で内部をそっと撫でられたような感覚。涙がちょっと引っ込んでしまうくらいぞわぞわした。

 映画の主題歌がエンドロールで流れ終わると、来年の次回予告が始まる。いつも思うが、毎年次の映画が決まっている状況は凄い。さすが国民的アニメだ。


 真っ暗だった状況から、天使が舞い降りたように暖色の光が広がり、日常が戻ってくる。左手を見ると、未だに握り合ったままだった。


「うぅ、今年もよかったー」


 星野さんの目尻に涙の跡ができていた。ナチュラルメイクだが、沢山泣いた影響で目尻辺りが軽くぼやけているように見えなくもない。

 僕はポケットティッシュを取り、彼女の目尻を軽く押さえた。


「これで良しっと。うん、可愛い」

「ちょ、ちょっと……、メイクを直してくる」


 星野さんはゴミをトレイに入れて直ぐに立ち上がった。別に、化粧が崩れていたように見えなかったけれど。まあ、自分で見ないと安心できないか。


 僕もゴミをトレイに入れる。落ちていたポップコーンを拾い、紙パックに入れておいた。シネマ六を出ると、店員さんがゴミ入れの横に立ってありがとうございましたとあいさつしてくる。

 ゴミを捨て、トレイを重ねたらトイレを済ませ、手を洗う。大きな鏡で、顔に気になる場所がないか調べ、問題なく退出。トイレの近くにあるシート置き場に立った。


 携帯電話がなかった時代、人はどうやって待ち時間を潰していたんだろうか。

 僕は携帯電話……、ではなく受け取った薄い漫画を開く。映画がより楽しめた気がした。

 五分くらいでさっきよりも可愛くなったように見える星野さんが戻ってくる。


「優くんのおかげで、あんまり崩れてなかったよ。ありがとう」

「どういたしまして。ほんと、さっき以上に可愛くなっていますよ」

「も、もうっ、そういうのは、もっとオブラートに包んで言うもんでしょっ!」


 星野さんは僕の肩をでしでしと軽く殴ってくる。


「いいことなら、わざわざオブラートに包む必要がないと思いますけど? さっき以上に可愛くなっているのは事実ですから」

「あぁ、もうっ~、そういうことをほとんど話した覚えがない相手にいうかな、普通っ!」


 星野さんは薄暗い道でも頬が赤らんでいるのがわかった。じだんだを踏むほど何かしら内側で暴れている様子。

 僕もそこで、息を飲んだ。確かにまだ、星野さんとちゃんと会話したのは今日が初めてだと思い出した。


 香奈さんから自然でいればいいよと言われていたが、ちょっと自然になり過ぎてしまった。

 でも、ここで謝ったらなんか変な空気になりそうだ。星野さんが可愛いのは事実だ。愛想笑いで誤魔化そう。


「あ、あはは……。いやぁ、凄い自然体だったからつい」


 僕たちは映画館の端に置かれたグッズコーナーでちょっとした小物を見て回る。もう、ドラえもんのグッズはほとんど売り切れていた。


 現在の時刻は午後三時一五分ごろ。ちょっとゲームセンターを見ていたら、ドラえもんの景品が置かれたユーフォ―キャッチャーを発見。今年の映画仕様になっており、星野さんの視線が異様に熱く注がれている。三本クレーンで、技術などほとんど必要ない確率機。


「ちょっとやってみるよ」


 僕の性格上、おそらくクレーンゲームは非常に相性が悪い。取れなければ負けという雰囲気が苦手だ。だから、最初に宣言しておく。


「五百円で取れなかったら僕の負けだ」

「いいね、逃げ道を作っておくのも戦いにおいて重要だよ」


 星野さんの表情が、やはり香奈さんと被る。グーサインして笑っているところとか、なんかそのまんまな気がした。

 投入口に五百円入れて、六回プレイ。落ちるのはわかっているが、持ち上がってくれると気持ちが上がるもんである。


 ドラえもんの頭が大きいため、重力によって先に頭から落ちる。ポンッと跳ねて、プラスチックの板に足が引っかかった。二人して「おおっ!」と声を上げ、視線が合うと軽く笑う。


 再度頭を狙い、三本のアームがおっぺけぺーな音楽と共に動き、どこかにワープしそうな音と共に落下。ぬいぐるみの頭を掴むと、グーッと持ち上げる。途中で放すが、滑り台を滑るようにぬいぐるみの重心が穴の方に向かい、軽い音共に落ちた。

 クレーンゲーム機から心のこもっていない「おめでとうー!」という機械音声が流れる。


「勝った……」

「そこは、取れたでしょ」


 星野さんに軽く突っ込まれながら、景品を手に取り、彼女に手渡した。


「いいの?」

「もちろん。最初から取れたら星野さんにあげるつもりだったからさ」

「あ、ありがとう。えっと、結構ほしかったの」

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