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ジャッジャジャジャーン!

いけえっナカナカ!

と、ローレンス琥珀。

「事実、ずっと逆世界にいる私も『何故、負けた方が立派』という世界で武具の練習をしているのか、と不思議になる時もあるのだ。LOVEちゃんなら、もっとそう感じるだろう?」

「姉上……」

「だからこそだ! 意味が分からない、理不尽だらけだからこそ鍛えて戦うのだ! ドルルル、ジャッジャジャジャジャーン!」

 彼女はボイスパーカッションで締めくくった。


「フン!」

 ジンチェンコは瓦礫をどけ、外側をコンクリートで覆われている窓ガラスをキックする。

 窓ガラスは簡単に割れたが、外とコンクリートにはヒビも入らない。

「強化コンクリートか! 俺のキック力では厳しいな。ククレアはゴブリン・パラディナイト、ローレンス琥珀の姉妹は銀のグリフォンだ。後はお前たちだ、ボン、ナカナカ!」

 ジンチェンコは言う。

「僕のこのカタナで、ダメージが行くのかな?」

 少し不安だ。名前からして“今にも折れそうな心とカタナ”である。

「やっちまうしかねえ、いけ。ボン!」

 ナカナカはそう言う。

「よおーし!」僕は強化されたコンクリートに突進し、思い切り斬りつけた。

 パキ―ン、とカタナはさらに折れて破片がさらに金色に輝きながら飛び散る。

「うわあっ、伝説の剣が!」

 僕は、叫んだ。けれどそりゃそうだよ。僕なんかの力で、ジンチェンコでも無理なコンクリートが……

 絶望の淵。死。ククレアさん。僕の脳裏をそうした単語が駆け巡った時だった。

 その声は突然だった。

『―レベルダウンとスキルアップです。ボンはLV7まで下がり、耐久力は上がりましたが他は2ポイント下がりました。さらにY級弱者となり、現在“最弱ランキングで四位です』

 それはキャワキャワのスキルボール。

(こんな時にレベルダウンなんて最悪だ……! Y級弱者で最弱ランキング四位!?)

『―ボンは新スキル・“いきなりスベリバナナ”を覚えました。“いきなりスベリバナナ”を発動します』

 キャワキャワの持つ、スキルボールがしゃべった。

 そして、天からいきなりバナナの皮が無数に降ってきた!

「バナナ、そんなバカな! いや、そんなバナナ!」

「ボンさん、『そんなバカな』で合ってるのに、何故言い直すんです!」

 僕はパニックになり、ククレアから怒られた。

 唖然としていたゴブリン・パラディナイトは少し待ってから歩き始めた。

 所詮はただのバナナじゃないか。聖騎士の力に目覚めた自分がスベルはずがつるん、と綺麗な音と共に美しくゴブリン・パラディナイトは滑って転んだ!

 城ケ崎は、

「“いきなりスベリバナナ”……そうか! 空中からいきなり降ってきたものだけじゃなく、『いきなりどこにでもバナナが出現』これは恐るべきドジっ子スキルよ!」

 と解説。

「そうね! あのドジっ子のボンさんが、いきなりどこにでもスベリバナナ、わきゃあっ」

 ククレアは少し城ケ崎を振り返った瞬間何故か、自分がスベって転んでいることと、足元にいきなりバナナの皮があることに気づいていた!

「どうしてこんな唐突なバナナが! いくらなんでも唐突すぎです!」

 そのククレアに、僕は殺到していた。

「ククレアさん! またパンツです! クマさんのアップリケのパンツが!」

 僕はそのクマさん目掛けて、ククレアのスカートごと抱きしめた。

「ぼ、ボンさん! いい加減にして! 今はパンツどころではありません! あの強化コンクリートを壊すのは!」

「それよりも! 僕はククレアさんのパンツの方が百倍大切です! 誰にも見せません!」

「ああ、恥ずかしい!! けど、ボンさんだと少し嬉しいような…‥‥あああ、こんな台詞が全部恥ずかしい!! 恥ずかしいのに嬉しいけど、恥ずかしいいいい!」

 ククレアは体からピンク色のオーラを放ち始めた!

「まさか、ククレアはこんな時に“嬉し恥ずかし状態”に!? ここまで切羽詰まっていても、ボンにパンツを庇われるだけで、“バトルウェディングドレス”になるなんて、なんという嬉し恥ずかしさ満点の神官なの!?」

 城ケ崎による解説で、ククレアはその頬と同じ桜色のオーラを放って、そしてピンク色のウェディングドレス姿になっていた!

「お姉ちゃん! これで無敵だよ! あんな奴、瞬殺よ!」

 ヨワイコは喝采をあげる。

「そうだけど、ボンさん。いい加減でスカートを放してください! これでは戦えません!」

 しかし僕は、

「大丈夫だよ。コンクリートを壊すだけでいいんだから!」

「ええ、だから敵を倒してから私が……」

「もっと手っ取り早い仲間がいるよ」

「ええ?」

「ナカナカ! そのトロトロパンチだ! 今こそ、自分の遅さと強さを信じるんだ!」

 僕は言い放った。

「な、何を言ってんだあ? ボン、ジンチェンコでも無理なのに、俺のトロトロパンチが?」

「いや、僕は今までかなりのバトルをしてきたけど、本当に失神したのはナカナカのパンチだけだよ! 蚊が12匹も何故か止まってる手首、きっと前より威力が上がってるんだ!」

「そんなこと言われても……!」


「この敵もグリフォンも降ってくるバナナでずっとスベってるだけだ! 恐らくククレアさんも、すぐに転んでしまうし、何よりパンツ……いや、やはり危険だよ。ククレアさんも疲労している!」

「やっぱりお前、ククレアのパンツを独り占めしたいだけだろうが!」

「そ、それは‥‥‥少しあるけど、少しだ! ナカナカ、さあ打つんだ! その蚊がもう何故か十五匹に増えてるパンチを信じるんだ!」

ナカナカは、少し震える手首を見た。

「お、俺でいいのか? 普通は主役のお前が!」

「じゃあ今からナカナカが主役になればいい!! 僕と同じで動かないコンクリートだ!」

 ボンは叫ぶ。

 絶対の自信がある。ナカナカがコンクリートなんかに負けるはずがない!

「ふりゃああああ! トロトロパーンチ!!」

 ナカナカは必殺技を放った! もう蚊だけでなく、何故か蝶も止まっている、その遅すぎる腕! 

「当たれええ! 俺のトロトロパンチ! もう大分しゃべってるけど、まだ肘が伸びきってないという遅さだぜえ! こんなもん動かないコンクリートとボン以外に当たるはずがねえ!」

 叫ぶナカナカに、

「そうよ、ナカナカ! あんたは遅いのだけが取り柄ですう! 威力は文句なし!」

「やれナカナカ。お前はあのボンが認めたんだ!」

と、ヨワイコとジンチェンコ。

「キャワッハハ、さっきから何を迷ってるの? ナカナカ」

 螺旋の“早歩き”を続け、しばしばバナナで転ぶキャワキャワ、

「あんたは勘違いしてない? あんたは紛れもない“六皇”で、私のコネなんかじゃない。何より、この私の弟なのよ! 自信を持ちなさい!」

「ああ、姉さん! もう少しだ…けど、なんか変だなあ。こういう『みんなからの応援で力を発揮』って、普通はボンの役割なんじゃないのか?」

 ナカナカはまだ訝りながら、肘を伸ばす。コンクリートまでは後5センチだ!

 銀グリフォンが、火炎の息を吐きかけてくるのを、なんとかローレンス琥珀の防護魔法で防ぐ。


「ナカナカ、何度言わせるんだい?」

 ボンは笑った。

「主役も脇役もない! そして僕とナカナカは友達の仲間なんだよ! さあ、みんなを助けてくれ! 逆世界で唯一、僕を失神KOさせたトロトロパンチで!!」

「な、仲間? 着ぐるみ魔王軍の俺が……! そうか、そうだよな! 姉さんの仲間っていうなら、俺の友達だ!!」

 あまりに遅すぎて美しい蝶が5匹止まっているその拳が、強化コンクリートに当たった! 亀裂が走り、一気に砕け散るコンクリート。そこから夕陽が差し込んできた!

「ぐるっがガギャGYAAAA!!」

 ゴブリン・パラディナイトはおぞましい叫びで消滅していく。さらに“黒とダークの箱”も夕日が当たった瞬間、中央が持ちこたえられないように、まるで万物が離散するように、木っ端微塵に砕け散った! そこからの暗黒のオーラはとんでもない勢いで“二階の天井”を貫いた! そして、三階の校長用のプールだとか、トレーニング用器具だとかプラネタリウムだとかが、煌めく星のように降ってきて。

「ボンさん、危ない!」

 ククレアの声を聴きながら、僕の視界は暗転していた。



トロトロパーンチ!

★☆☆彡

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