体育館での最終決戦
ナカナカ? ここは強力して一緒に隠れよう!
「そうか……そうだな!」
「危機の時こそ、冷静に分析して楽観的に行動するものだ。それ以外に勝利への道はない」
「む、無論だ! 私がこんなくらいで落ち込むものか、ジンチェンコ」
気丈なゾッコンLOVEに、にこりと笑いかけるジンチェンコだった。
「そうだよ! 金冴さんも、本気で世界を滅ぼすつもりじゃないし、『あの箱より“禁忌型ミノタウロス”の方が恐ろしい』、みたいに言ってたはず。何か攻略方があるんだよ!」
僕はそう言った。
「城ケ崎、何か“解説”できないか? あれについて。この戦いで、城ケ崎のスキルもレベルアップしてるんじゃないかな?」
「なるほどね…ボンにしては一理ある。けれど、私の“解説”はある程度、対象に近づかないといけない。最低でも1m範囲内に!」
彼女は言う。
ククレアは、「私が城ケ崎さんのための血路を開きます! ゾッコンLOVEさん、ローレンス琥珀さんは、他を守って! キャワキャワさんの“早歩き”も無理はしないで! 敵の攻撃力も上がっています!」
そう叫び、光のオーラで自分の身を包んで敵陣に殺到していく。
ククレアの神官棍棒の破壊力は凄まじいの一言で、当たった瞬間屈強なホブゴブリンやゴブリンチャンピオンは弾け飛ぶ。
さらに、ゾッコンLOVEの魔道矢も勢いを増し、三本一気に放った矢がグリフォンの翼と喉と眼を同時に貫いていた!
落下するグリフォンを、ローレンス琥珀は細身流剣でさらに頭部を貫いて留めを刺す。ローレンス琥珀の足も、自分の回復魔法で回復させているようだ。
「キャワッハハハ! ナカナカは影で隠れてなさい!」
キャワキャワは“早歩き・螺旋の動き”で敵を釘付けにしている。
「ああ……姉さんも無理するなよ」
ナカナカは瓦礫に隠れながらも、少し気弱な声だ。
「ナカナカ? どうしたんだ!? 戦闘力が無い僕らは、もっと隠れていないと!」
僕もヨワイコをかばいながら、そう言う。
「僕ら? かばうんじゃねえ! ボンの癖に!」
「ええ?」
「知ってるよ。お前は、多分“臆病者の臆者”なんだろ。その伝説の剣がお前を選んだんだ…俺は、姉さんが心配なのに、隠れてるだけでなあんもできねえ……分かってるんだよ!
俺は最弱六皇の中で、ほんとになんの取り柄もねえ! ただメチャメチャ遅いだけのパンチを打つだけで、それもこういう本物の魔獣相手じゃなんの役にも立たねえ!」
「ナカナカ…」
「俺だってバカじゃねえ……本当になんもできねえ俺が“六皇”の中に入れるはずがねえんだ、姉さんのコネで入れて貰ったんだよ。姉さんはそうは言わねえけど、そうに違いねえよ!」
ナカナカは悔しそうだ。
「ボンさん、ナカナカ!? 何を話しているんです!? そんな場所では危ない! もっと隠れてください!」
ククレアもそう言いながら、城ケ崎をかばいながら箱に近づいていく。
「へっ、お前はこの戦いが終わったら恋人のできあがりだ、チクショウめ」
拗ねたようなナカナカ。
「んもー、馬鹿ボン並に馬鹿なナカナカねえ。あんたが何もできないなんて、国中みんなが知ってますです!」
ヨワイコは言う。
「それでも、馬鹿ボンみたいに自分にできることを頑張ってれば、いつか認められるんですう。そんな事も分からないなんてナカナカのものねえ」
「何い?」
「貴方は貴方にできることしかできないんだから、それだけやってればいいんですう! って昔お姉ちゃんがそう言ってました!」
ヨワイコは自信たっぷりだ。
「俺にできること?」
「そうだよ、ナカナカ! 君は“トロトロパンチ”があるじゃんか! あれは威力だけは物凄く高いんだ! トロトロパンチの準備をしておこうよ!」
「あんなもんの準備……」
「別に使う機会がなくてもいいじゃんか! 準備だけしとこう!」
「…弱っちいのに、なんか明るいヤツだな」
ナカナカはぐるぐると肩を回し始めた。
そして、ついに返り血まみれのククレアは、“黒とダークの箱”までたどり着いた。
「城ケ崎さん!」
「ええ! “解説……強!」
城ケ崎の眼が銀色に少し光っている。スキルが覚醒しているのだ!
「これは“シン・古代遺物”の中でも危険度が高い。裏側に日光を当てることで、恐るべきモンスターを召喚していく。しかし、反面……そうか! 表の面! つまり、逆方向から日光を当てれば、すぐに消えるのよ! だから、金冴たちは、完全な密閉空間にしたんだわ!」
城ケ崎の言う通り。体育館の一階は窓ガラスをコンクリートで固められている。
「ナイスよ、城ケ崎さん! じゃあ、反対側のあの窓ガラスを……」
次の瞬間、“黒とダークの箱”からは、銀色に光る大型の騎士が生み出されていた。
それはゴブリンキング程の巨大さではないが、今までのモンスターとは明らかに違い、全身を銀の甲冑で覆い、盾と剣も魔力を帯びて淡く光っている。
「ゴブリン・パラディナイト! 邪悪なゴブリンが、聖騎士の力を得たものです! 光魔法を使い、極めて強力!」
ククレアは殺到し、神官棍棒を叩きつけるが、敵な難なく大盾で受け止めて素早く剣を突き出す。ククレアは空中をひらりと回転して躱すが、着地した右足には赤い線。そこから鮮血が飛び散る。
「ククレアさん!」
僕は悲鳴を上げた!
「ボンさん、構わないで! それより背後の壁を壊して! コイツは、私でないと相手が務まりません! 全身に魔力耐性があり、ゾッコンLOVEさんの魔道弓は不利! 強力な光魔法を駆使してきます! 私が食い止めます! みんなで壁を壊して! 日の光を!」
ククレアも額からかなりの汗を流している。ほとんどの強敵をずっとククレアが倒しているし、一人で攻撃も回復も、付与魔法も全てをやっているのだ。
超天才であるククレアでも、ここまで疲労困憊ではゴブリン・パラディナイトには苦戦するようだ。
銀甲冑を着こんだ敵は、今までのモンスターとは違い王道の剣技を使うようでククレアもその太刀筋を裁くのがやっとのようだ。
ゴブリン・パラディナイトはその口から、高いが不気味な声を発した。
「我が血の血よ、聖と邪よ何のために死ぬのか? 川が死ぬなら、何故海は生きるのだ」
それは一見崇高な、しかし邪悪に満ちた呪文だった。
持っている銀の大盾から、巨大なグリフォンが現れ、それもまた不気味に光る銀色に覆われていた。
ゾッコンLOVEは素早く魔道弓から五本の矢を速射するが、銀のグリフォンは優雅に空を舞いながら口から火炎を吐き出した。魔道矢は完全に相殺された。
「くっ、手強い!」
ゾッコンLOVEは呻くが、彼女もずっと戦いっぱなしだ。魔力が少し落ちているのかもしれない。
「LOVEちゃん、だから通常武器も覚えなさいと言ってたでしょう?」
ローレンス琥珀は、背中から長弓を取り出し矢をつがえて素早く射る。その矢の速度は、ゾッコンLOVEのそれを上回り、銀のグリフォンの翼に刺さった。銀のグリフォンは「ギGYAON!」と叫んでから、しばらく空中を滑空する。
ローレンス琥珀は微笑した。
「ドルルルルル、ドダン! どうした諸君! 今こそ“七柱”の力を証明せよ! ジャジャーン!」
「姉上! ボスパーカッションで、遊んでいる場合か?」
「ボイパや掛け声には、意識高揚の効果がある! れっきとした戦闘技だ。特に命がけの戦いの時にはな!」
ボン、俺はお前とは違うんだ!
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