タイトル未定2026/08/18 13:31
ククレアは慌てて、
「城ケ崎さん!? 今はのんびりと解説している場合じゃありませんよ! このままでは勝ってしまう…!? いえ、その前にローレンス琥珀さんが大怪我を」
しかし、城ケ崎は真剣な表情での解説を続ける。
「色々と言いながらも、ゾッコンLOVEのことが気になってしょうがない……ローレンス琥珀にとっての必敗パターンがこの“落馬”ということかしら?」
「城ケ崎さん…? 一体何を?」
のんびりと解説しているのか、とククレアは不思議に思っていた。
ローレンス琥珀は今にも頭を床に打ち付けそうになっている。
「いいえ、お姉ちゃん……城ケ崎さんをよく見てください」
ヨワイコはどこか誇らしげである。
「凍てつく雷鳴家……御四家にも匹敵する駄目家系……さらに、青春アオハル甘酸っぱい騎士団の団長までも務めるローレンスの最初の一手が、まさかの『落馬』……これは初見勝ちで、誰でも勝ってしまうわね……しかし」
ニイ、と城ケ崎は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「それは私のスキル……『スローな解説にしてくれ(スロー・ブギスピーチ)』が無ければの話よ!」
驚愕に目を見開いているのは、落馬中のローレンス琥珀だ。
「馬鹿な!? まだ落馬しない? と、いうより全体的にスローモーションの動き!?」
見ていたキャワキャワは、
「そういえば、私が戦った時も、何故か城ケ崎が解説し始めるとみんなやたらゆっくりに」
思い出したように言った。
ヨワイコはにんまりと笑い、
「城ケ崎さんのスキル『スローな解説にしてくれ』は、アニメや漫画の時、いきなり『解説役』がしゃべりはじめると、まるで時間が止まった時のようになる現象……それをそのまま再現できるという、凄いスキルなんです!」
と言った。
まるで、自分の師匠を崇めるようだ。
ボンも、「そういえば……僕がキャワキャワと戦った時も……」
と思い出し始める。
『早歩き』の技を使ったにしては、全体的にみんなスローモーションになっていたような気がする。
「くうっ、バカな!」
ローレンス琥珀は、髪の毛がわずかに凹むくらいの速度で床に落ちた。
本当は気絶して失神KOで負けるつもりだったはずが……
「これでもボンが来る前は、臆者の候補筆頭だったのよ。舐めないでよね」
ばさり、とピンクの髪をかきあげる。
「姉上……大丈夫だったか?」
ゾッコンLOVEが心配げに近寄る。
「あら、LOVEちゃん。お姉ちゃんがそんなに心配だった?」
少し嬉しそうなローレンス琥珀。
「ば、バカなことを! 姉上がひょっとして頭をぶつけて失神してしまうかも、元々妹バカだったのに、さらに妹バカになるかも……とかそんな心配は何もない!」
ゾッコンLOVEは心の声が丸出しの台詞を言った。
「流石だな、城ケ崎! 僕がキャワキャワさんと戦った時も、陰でサポートしてくれていたんだな!」
ボンは感心していた。
この逆世界は、文字通り負けた方が勝ちになり、借金が多ければ多い程褒められるヘンテコな国だ。
だが、実際人々が持っているスキルや魔法は、駄目なようでやっぱり中世ファンタジー世界のようにスゴイんだ。
「第一回戦は、私の敗北……つまり次のステージに行けるわね?」
城ケ崎はにこりと笑った。
しかし、滅多に口を開かないジンチェンコが、
「まだだ! ローレンス琥珀の目はまだ死のうとしている!」
と怒鳴った。
ローレンス琥珀は、無傷で馬から降りたが、すかさず愛馬の後ろに回り込んだ。
「城ケ崎さん、やはり……あなたは甘い! はるか天頂にあるアマアマ共和国の黄色い砂糖菓子のように!」
そう怒鳴った。
馬は極めて臆病な生き物だ。ボイスパーカッションの達人であるローレンス琥珀は、シンバルの音を口から出した。
「ブルヒヒイイイイイン!」
馬は後ろ脚を思い切り蹴った。
城ケ崎は叫ぶ。
「死因の一位は蚊が伝染するマラリアで、二位は馬に蹴られることよ! ローレンス琥珀でその差が縮まってしまう!」
その解説の間も、スローモーションである。
「姉上!」
ゾッコンLOVEは、叫び、さらに自分の姉を助けるために飛んだ。
「ゾッコンLOVE!?」
城ケ崎は驚いていた。
スローモーションの光景の中で、ゾッコンLOVEは憎しみながらの愛を全て込めて、ローレンス琥珀を抱きかかえて、馬の後ろ蹴りからなんとか脱出した。
スローモーションとはいえ、馬の後ろ蹴りの殺傷力は凄まじい。
「姉上! なんで避けなかった!?」
ゾッコンLOVEは怒鳴る。
解説!!




