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失点サッカー②

スカっ

その銀髪に触れることもできないままで、二郎と三郎は抜き去られていく。

いや、その瞳にゾッコンLOVEは、どんな名前でも最高に恰好いい!

「さあ、ボン! 決めろ!」

 スルーパスが通った。


 後はボンが決めるだけ! GKは味方のヨワイコなのだ。

 これでオウンゴールが決まらぬはずがない。

『スキル発動・めまい』

 な?

 くらん、と視界がぼやける。

 スカ。シュートは空振り。

 二郎がボールをカットしてしまった。

「そこで空振りとは、駄目なだけはあるな、ボンよう! しかし、この失点サッカーは俺たちのものさ!」

 二郎と三郎でパス交換をしていく。

「ぐ……みんな、ごめん!」

 僕はオウンゴールすらできないのか。

「くじけないで、ボンさん! ボンさんが、とんでもなくどうしようもない駄目な人ってことは分かっています! 私はそんなボンさんを信じているんです!」


 ククレアの励ましも、かなり堪える。

「ボン! さあ、あんたもクヨクヨしていると、すぐに結婚してあげますのよ!? 男なんだから、シャンとしなさい!」

 ヨワイコも励ましてくれているようだ。

「そう言ってる間に、またもジンチェンコが来ているよ! 奴らももう、自陣のゴールを狙うつもりだ!」

 城ケ崎が唸る。言った通り、アレクシイ・ジンチェンコは素早いオフザボールの裏抜けから、巧みに自陣のゴールへと向かっているようだ。

 後はGKの川渕三郎を抜いて決めるだけだ。

「へっ、ジンチェンコがオウンゴールを外すはずがねえ!」

一郎が威勢よく言った。

「奴はチームでも随一のテクニシャン……! 二失点目ももらったぜ!」

 このままじゃ、失点し続けるだけだ!


 ジンチェンコはクライフターンで、川渕三郎をかわした!

「危ない! これでは、またも失点……?」

 ククレアが叫んだ、瞬間だった。

「孤独の鳥居よ! その翼は何ゆえに白き闇か!? ジャンプ!」

 その瞳にゾッコンLOVEの言葉。

 それは、魔法の詠唱。


 それは光でできた弓矢。

 彼女が弦を引き絞って放つと、その矢は一直線に飛び、サッカーボールに突き刺さり、アレクシイ・ジンチェンコはキックを空振りした。

「この失点サッカーでは、魔法使用はOKだったな? この魔道弓も」


 その瞳にゾッコンLOVEの銀髪の奥で、瞳がキラリと光る。

「やるねえ、銀髪娘」

 ジンチェンコは初めて薄く笑った。

 城ケ崎がボールをカットし、後退させていく。

 後ろへ後ろへ、ぐんぐんとドリブルし、さらにボンへのパス。

「ボン! ジンチェンコがすぐに迫っている! きっちり失点しなさい!」

 ボンは後ろへとドリブルしていった。

 しかし、GKのヨワイコがいる。

「もしや、ボンさんはヨワイコのGKでも失敗してしまうのでは?」

 ククレアは汗を浮かべた。

 ヨワイコは目を閉じて、

「これをやるしかなさそうね。あまりの安易さ故に、使うのをためらわれていたけれど……」

とつぶやき、なんとゴールマウスの横に飛び出して大きく手を広げた。

 城ケ崎は、

「ナア!? ヨワイコちゃん、まさかのゴールマウスの外でのゴールキーパー!? ドッキリ八百長でしか見かけない、壮絶おバカ!?」

 ヨワイコはニイと笑い、

「馬鹿のボン! いくらあんたでも、これなら失点できるでしょ!?」

と叫んだ。

 ボンは全てを集中し、ボールをキックした。

 キャワキャワも、

「おおーっと!? これは完全に無人の味方ゴールに一直線かあ!?」


 しかし、その瞬間にあり得ないことが起きた。

 スキルボールが輝いて、

『新スキル発動・膝抜け』

としゃべった。

(完全に無人のゴール! 距離は五メートル! いくら僕でもこれなら!)

 しかし。

 カクン。と、いきなり膝が抜けた!

「あ……? 膝が!?」


 ボンはカクンと抜ける膝を堪えきれない。

「な!? ここで新スキルが?」

「ボンさんのスキルは強力すぎます!」

 城ケ崎とククレアは両手で顔を覆った。

「この馬鹿ボン! どこまでダメなの?!」

 ヨワイコもボンのあまりのダメっぷりに悲鳴を上げている。

「これまでか? もうアレクシイ・ジンチェンコ選手が追いついてきている。なんというスタミナなの!?」

 ククレアが言う通り、アレクシイ・ジンチェンコはすでにルーズボールに追いつきそうだ。

「へっ、こっちのジンチェンコを舐めるな!」

「ジンチェンコは俺たち六人分の実力だ!」

と一郎と二郎。

 ボールは、ジンチェンコの足元に向かう。


 かに思えた。

「うぐ……・おおおお!」

 ボンは叫んでいた。

(僕は逃げない!)

(たとえどれだけの駄目さでも)

(もう逃げない!)

「もう、逃げない!」

 ボンは膝がカックンと抜けたはずの状態で、ダイビングヘッドでボールに襲い掛かる!

 ジンチェンコは、

「何イ!?」

と驚愕に叫んでいた。

「うおおおお!」

 ボンは壮絶ヘディングをボールに当てた!

「フっ、気迫だけは認めるが……」

 しかし、アレクシイ・ジンチェンコは軽やかなフェイントでそれをかわす。


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