失点サッカー②
監督は、
「なあーにをワケの分からんイチャモンをつけてんだ、お前は?」
「えええ?」
「ボンさん、人の名前にツッコむのは失礼ですよ!?」
「ククレアさんまで!?」
そして、キャワキャワが見かねて、
「さあ、その闘争心はボールにぶつけて! ピッチ外での争いなんて、要らないわ!」
と目を輝かせながら言った。
キャワキャワは普段は保育士で、こういう青春ものが好きである。
「はいっ、キャイーンさん!」
ククレアはキャワキャワを尊敬の目で見ている。
「サッカーをしていれば、ぶつかり合いは必死よ! けど、その中でもスポーツマンシップを持って臨むことこそサッカーなんじゃないかな!?」
キャワキャワは力説する。
「フ……確かに、下らぬ闘争を避けることも強者か……」
とゾッコンLOVEも続き、
「少しはいいことを言いますです、恐竜のお姉さん」
とヨワイコも言った。
「さあさあ、散って! ハイ、キックオフ!」
ともかくホイッスルだ。
ボンはFWの位置のようだ。
「ヘイヘイ、こっちだ二郎!」
一郎はボールを要求し、高速でドリブルしていく。
それは見事なドリブルとパスワークであった。
一郎のドリブル、二郎のロングボール、そして三郎の華麗なトラップ。
さらにアレクシイ・ジンチェンコが囮となってオフサイドラインをくぐってくる。
「こんなの、プロ級だ! 止めようがない!」
ボンは慌てていた。この逆世界では駄目な人の方が強いはずなのに……
「いいぞ、お前らの代でワールドカップ優勝だ!」
監督は嬉しそうだ。
「この兄弟はサッカーが上手いよ!」
ボンは叫ぶ。
「あたりめえよ!」
一郎は怒鳴る。
「俺たちは、親父からサッカーを叩きこまれてるんだ!」
二郎がロングボールで展開する。
さらに囮となったアレクシイ・ジンチェンコがDFのヨワイコの裏をすり抜ける。
「く……さっきから、アレクシイ・ジンチェンコの裏抜けが、物凄く上手い……!」
城ケ崎は唸っている。
「いけ! ジンチェンコ!」
二郎の糸を引くようなスルーパスが通った!
「うわあああっ、駄目だあっ!」
僕は大慌てでアレクシイ・ジンチェンコの前に滑り込んだ。
彼は素早くシュートを放った。それは物凄いスピードでボンの膝に当たり、大きくリバウンドして七兄弟チームのゴールへと吸い込まれた。
「へっ!?」
七兄弟は、
「やったぞ! 早くも失点!!」
みんなで喜んでいる。
「七兄弟チーム! 早くも失点です!」
キャワキャワが叫ぶ。
「うおおお! こっちにはジンチェンコがいるぜ! オウンゴール王のジンチェンコだ!」
「こっから十失点だ!!」
と七兄弟は盛り上がっているようだ。
「本当に失点する方が勝つの!?」
ボンは呻いた。
「ボンさん、この逆世界では当然でしょう? さあ、私たちも失点しますよ!」
ククレアは腕をまくっているようだ。
(ここが逆世界だってことを忘れちゃいけない……)
ボンは改めてそう思った。
「ようし、ここは私が失点してみせますですのよ!」
とヨワイコが言った。
「サッカーならやったことはあります! さあ、私のパスに合わせて!」
ヨワイコは勢いよくパスを繰り出す。
ゾッコンLOVEは、ボールを受けてかなりの足さばきでドリブルを始める。
「流石は、ゾッコンLOVEさんだ!」
ボンはその後を追いかける。
しかし、川渕三郎とセブンヘイブンがその前に立ちはだかる。
「ヘイヘイ!」
「俺たちを甘く見るなあ! 週八でサッカーやってるんだぜ!?」
セブンヘイブンが襲い掛かる。
その瞳にゾッコンLOVEは、くるりと反転して逆方向にドリブルを開始した。
「何イ!?」
セブンヘイブンは唸った。
城ケ崎は
「そうか、そもそも失点サッカーなんだから、自分で自陣ゴールに突進すればいいだけ……! 流石に頭のキレるその瞳にゾッコンLOVEね!」
ククレアも、
「名付けて、“裏切りドリブル”!」
と唸っていた。
「卑怯だぞお! 正々堂々とオウンゴールしやがれ!」
監督が怒鳴る。
「負けた方が勝ち! それがこの世界のルールだ! 我に続け!」
相変わらず勇ましい、その瞳にゾッコンLOVEだ。
彼女の名前がごく普通だったら、もっと勇ましく映るのかなとボンは思う。
「失点上等! 意には染まぬが、この逆世界の仲間のためなら、オウンゴールを決めよう!」
二郎、三郎の守備をかいくぐるドリブル!




