ゾッコンLOVE③
LOVEちゃん!!
「お前らの世界だとそうだろうが、私は腕に自信があるんだ! 私は名家に拾われたのはいいが『この世界では弱者になるべき』と、ワケの分からんことを言われて、こんな恥ずかしい名前に……! 折角、現世でアーチェリーを鍛えていて、こっちでもアーチャーになれて、かつ割と美形で銀髪になれたと思っていた……だから、“それっぽい感じの振る舞い”をしていたのに、親の馬鹿ネームのせいで台無しだ!」
ボンは、
「え? すると、その瞳にゾッコンLOVEさんは、この世界じゃない所から……?」
「まあ、そうだ。待てよ、最弱のボン……すると、まさかキミもなのか?」
その瞳にゾッコンLOVEの目が輝いた。
「お二人とも、随分と仲良しなんですね。ボンさんも、ずっとその瞳にゾッコンLOVEさんのことばかり……!」
何故かむっとしたようなククレアがそこにはいた。
「え? ククレアさん、怒っている?」
「そんなにその瞳にゾッコンLOVEさんにゾッコンなら、ずっとその瞳にゾッコンLOVEさんといればいいじゃないですか! かなりのゾッコンのようですね!」
「ま、まさかのツンデレ? いや、可愛いけど、僕は別にその瞳にゾッコンLOVEさんに、そこまでゾッコンじゃないよ! ただ……」
「『そこまで』ということは、やはり少しはゾッコンのようですね!」
すると、その瞳にゾッコンLOVEは、
「ええい、私の名をそんなに呼ぶなあ! ゾッコンゾッコンというな! せめて、『瞳』と呼んでくれ! なんなら『LOVE』でもギリギリ認める! しかし、『その瞳にゾッコンLOVE』というフルネームだけは止めろオ!!」
と叫んだ。
ボンはがっくりとして、
(まあ、この逆世界だものな……)
と考えていた。
「じゃあ、なんて呼べばいいのかな?」
ボンが聞くと、
「子供の頃の友達は『瞳ちゃん』とか『LOVEちゃん』とか呼んでくれてたな」
「そっか……じゃあ『LOVEさん』かな」
ボンはそう言った。
ククレアも続き、
「ええ、いかにも『ゾッコンLOVEさん』という感じがしますわ!」
と言った。
その瞳にゾッコンLOVEは、
「ううむ、そうか? できれば瞳の方がいいんだが、まあLOVEでもいいだろう」
「じゃあ、ゾッコンLOVEさん! 僕らとパーティを組んでください」
ボンは言う。
「だからその『ゾッコンを入れるなと言うんだ! というかできれば『瞳』の方が……』
ククレアさんは微笑して、
「何を言うんです!? いかにも『ゾッコンLOVEさん』という感じじゃないですか! ねえ、ボンさん」
「言われてみると、今更『ゾッコン』を取っても、『ゾッコLOVEさん』らしくないし」
ヨワイコも、
「そうだよ。親がつけてくれた名前に失礼だよ、ゾッコンLOVEさん」
という。
その瞳にゾッコンLOVEはフルフルと肩を震わせながら、
「ええい、じゃあもう好きにしろ! なんとでも呼べ! 私は“億者”になり、この世界を変えて見せるぞ……!」
決意を新たにし、普段通りの自信に満ち溢れたその瞳にゾッコンLOVEは瞳の輝きを取り戻したようだ。
「さあー、スタートラインについてえ! みんなあ! 用意はいいかな? ゲームの趣旨、覚えてるよね?」
キャワキャワがそう言った。
「位置について、よーい……」
キャワキャワは
「ドン!」
と言い、さらにおもちゃの銃を空中に撃った。
ダルマは、
「あーあ、眠たいけど毛布が無いから寝れないよ。ほんとに全部、君らのせいだよ? あーあ、お母さんもまだ来ないし、僕一人でできるわけないでしょお?」
と寝転んでいる。
「おーっと、ダルマ君はまるで自立できません! さあさあ、みんな急ぐのよ!」
ボンも走り始めた。一斉に、グラウンドを五百人が走り始める。
すると、その瞳にゾッコンLOVEは、後ろを振り返りながら、
「混沌の夜は必ず明ける! かの妖精を手にするのは我らだ!」
と勇ましく言った。
(さっきの展開の後で、なんていう強メンタルだ!)
とボンは驚愕していた。
「す、凄い、その瞳にゾッコンLOVEさん……その名前にして、なんという堂々とした振る舞い……!」
ククレアは唸っていた。
「あーあ、寝転んでいても楽しくないなあ……そろそろ、少しは自立しようっかなあ」
ダルマはそう言う。
「さて、歯磨きしようっかな」
ダルマ妖精がそう言って立ち上がった瞬間、
「はい、止まれー!!」
天から、きらきらと降り注ぐ小さなダルマ。
ダッシュしていた参加者は、次々に止められていく。
「はい、ダールマさんが自立した! 自立してないのに走ってちゃ、ダメじゃない!」
ダルマ妖精は拗ねているようだ。
キャワキャワは、
「はい、ダルマが自立した瞬間に走っちゃった人は、アウト!」
ボンは、
「こんな、『自立』みたいな概念的なもの、分かりようがない!」
と怒鳴っていた。
「そこを見定めるゲームです! さあさあ、頑張ってダルマ妖精にタッチするのよ。今ので、半数くらいがリタイアしたわね! さあ、ダルマ妖精に注目して!」
キャワキャワがメガホンで叫ぶ。
ダルマはまた、ゴロンと寝転がって、
「んもー、やっぱり歯磨き粉が無い! お母さん、買っておかないと駄目じゃんか!」
と怒っているようだ。
「どうやら、ダルマさんが怒ってたり、ちゃんと自分で歯を磨いたりする時を見抜く必要があるようです」
ククレアがそう言う。
「みな、蒼穹の丘へと向かうぞ!」
その瞳にゾッコンLOVEは叫び、ダルマへと向かって駆け出す。
「そうだね! 今がチャンスだ!」
ボンも必死で駆けていく。
「んもおお、みんなでもっと僕にタッチしないと駄目じゃん! 何をやってるんだい!?」
ダルマ妖精は拗ねているが、いきなり立ち上がった。
「わあっ、みんなストップだ!」
ボンは急停止し、ククレアを抱き留めた。




