その瞳にゾッコンLOVE②
ゾッコンLOVE!
「なんせ“億者”になれば、借金しほうだい、破産し放題ですからねえ」
「最悪じゃないか!」
「そう、最悪の存在が“億者”……この国中の憧れです」
ククレアはうっとりとしている。
「ボンさんこそ、ふさわしい……!」
「僕はそんなのイヤだ!」
城ケ崎は、
「フン、今更おじけづいた……? それでは“七柱”にもなれないわね」
とピンクの髪を揺らしている。
「さあさあ、まずは競技一回戦……・! 総勢、千人も集まったこの“気弱な運動会”……! まず、一回戦の『だるまさんが自立した』で勝負しましょう!!」
キャワキャワはそう言った。
「うおおお! いきなり、大人気の『だるまさんが、自立した』かよ!」
「競技人口100万人の超ゲームだ!」
いつも通りの盛り上げ役の二人が叫ぶ。
キャワキャワは、
「さあ、あのダルマ妖精を見て!」
すると、グラウンドの一番端っこに、ダルマの形の妖精が寝転んでいる。
「んもおー、宿題できないし、どんどんポッチャリしてくるし、全部お前らのせいだぞお!? こんなに僕がぽっちゃりして、責任取れよお!?」
ダルマは寝転んでポテチを食べながら、そう言ってくる。
「みんな、ルールは簡単! ダルマが『自立』するまでの間、ダッシュ! けど、自立した瞬間に動いた人は失格~! ダルマにタッチしたら、そのグループはクリアよ! 四人一組でのグループで、一人でもタッチすればクリア! これが『ダルマさんが自立した』よ」
キャワキャワは説明する。
「自立した、っていうのはどういう事?」
ボンは首を傾げる。
「やってみれば、すぐに分かります!」
ククレアはダッシュの態勢になった。
ダルマの巨大妖精は、
「んもおお! 宿題なんて、僕にできるワケないでしょお!? 君たちがさっさとやっておいてよね! ぷんぷん!」
と少し怒っているようだ。
「さあ、行きますよー、みんな!」
キャワキャワはメガホンで怒鳴る。
(自立したって言っても、どういう状態なのか……)
ボンはともかくスタートラインに立った。
「さあさあ、グループを作ってください」
キャワキャワは言う。
「えっと、僕とククレア、そして城ケ崎さんと……」
もう一人必要だ。
「ダルマに注目だ……全ての所作に命が懸かっていると思え」
それは、銀髪の少女だった。
片目だけが見えるような憂いのある髪型。
「あ、僕らのパーティに加わりませんか?」
ボンはそう言った。
「……いいだろう。誰かの背を守ることも、強くなることと同義か」
憂いの美少女は言った。
「ボンさん、その人が……? さっき、ボンさんが言っていた強い人?」
ククレアは聞くが、
「そうだよ、物凄く強いんだ! きっと頼りになるよ!」
城ケ崎も、
「“七柱候補”の中でも最弱と称される‥‥‥あなたが仲間にね。それは心強い」
え? ボンは耳を疑った。
「城ケ崎さん、今なんて? この人は逆世界でもとんでもなく強いんだよ!? ねえ?」
ボンの言葉に、憂いの美少女は沈黙している。
「ほ、ほら! 沈黙したままで、いかにも強そうじゃないか! ここのお間抜けキャラとは違うんだよ!」
銀髪の美少女は、
「違いとは所詮、他人が決める相対的なもの……しかし、それに左右されるのもまた、人らしさ、と言えるか」
「ほら! いかにもアニメの強者っぽい台詞! ねえ?」
「……フっ」
ククレアは少し訝りながら、
「ところで、銀髪のお方。失礼ですがお名前は……? 私たちは転入生ですので。私はククレアといい、こちらは“最弱”のボンさんです」
「名など無用。私はこの弓矢に人生を捧げた、ただそれだけの者……」
「ほら! やっぱり強いんだ! ……けど、やっぱり名前が分からないと」
「フっ」
「いやいや、『フっ』じゃなく、お名前を……?」
しかし、憂いの銀髪の美少女は、何故かまごまごとしている。
「どうしたんです?」
「あのう、それがサ。名前は言いたくないの、ゴメン」
あれ? 何故か照れている……?
「そりゃ、言いたくないでしょうね……別名を“月の巫女”……最年少で“七柱”になったのも、そのあまりの名前の弱さそう加減からですものねえ」
城ケ崎はニイと笑う。
「……うるさいわね」
「ねえ? 『その瞳にゾッコンLOVE』さん?」
え……?
今、なんと言った……?
馬鹿な‥‥‥そんなはずがない!
そんなことがあるはずがない! そんな変な名前の人間がいるはずがない!
「名など、所詮は血が半分繋がった他人がつけたに過ぎぬ!」
そ、そうだ‥‥‥この銀髪の人は物凄く頼りになるはずの!
「けれど、この世界では大いに実力に関係あるわ。その瞳にゾッコンLOVEさん。ほーんと、弱そうないい名前で羨ましいわあ」
「クウっ!」
すると、その瞳にゾッコンLOVEは、ばっとマントを翻した。
「その通りだ! みんな、私のことはどうか……『瞳』とか『LOVEさん』とか呼んでくれ! いくらこの逆世界でも、限度がある! 頼む!」
「なあ!? その瞳にゾッコンLOVE……? それがあなたの名前!?」
ククレアは口を両手で覆う。
「ぐっ!」
ふるふると、恥ずかし気に肩を震わせる、その瞳にゾッコンLOVE。
「僕は、あなたはきっと強くて賢いラノベのキャラだと思っていたのに……?」
しかし、ククレアは
「なんてヘンテコな名前! ボンさんとも競える程の駄目さ加減……? 、普段の凛々しい振る舞いとも相まって、絶妙な恰好悪さです! その瞳にゾッコンLOVEさん!」
「ええい、やめろお! そんなに私の名を呼ぶなア!」
その瞳にゾッコンLOVEは、叫んでいた。
「くっ! 私は、この名前にした両親を一生恨むぞ! 本当は私は弓矢の達人なんだ! それが、この名前のせいで“虚弱七柱候補”みたいな所に入れられて……!」
「いいお名前じゃないですか! 絶妙に古くて恰好悪く、最弱の名前です!」
ククレアはそう言う。




