ケッチャク!!
キャワキャワは、その着ぐるみの状態でさらにスピードのある早歩きに変わった。
「姉さん、早歩きをマックスにして、つまづいて転ぶつもりダア! いくらボンでも姉さんのあの敗北ムーヴメントの前では、勝つしかねえ!」
ナカナカは叫ぶ。
ボンはしかし、ちょうどキャワキャワの早歩きする路上に、ふらついて倒れようとしていた。
(う……これじゃキャワキャワにぶつかる)
ボンは、頭をふらつかせ、ちょうどキャワキャワの早歩きする腹にぶつかった!
「ぐはあっ!!」
ボンは着ぐるみの腹に押され、そして樹の根っこに頭をぶつけていた。
「馬鹿な! なんというドジっぷり!? これはもはやスキルじゃなく、生まれつきのただのドジっ子!?」
キャワキャワは驚愕の叫び。
ボンは空を見上げていた。
「やっぱり、僕は誰にも勝てないのか……」
こうして勢い込んでも、着ぐるみの女子にまでボロ負けする有様だ。
しかし、ククレアは満面の笑顔で駆け寄ってきて、
「お見事!! それまでです……! ボンさん、あなたはキャワキャワさんにも負けたのです! 見事なドジさと負けっぷりです!!」
ククレアはボンを抱きかかえた。
「へ……?」
「こんな弱い人は外にはいません!」
城ケ崎も、
「ふうっ、これが“臆者”の真の実力ってこと……? あのキャワキャワに一蹴されて、青天だなんて……これじゃ、私も認めるしかないわよね」
少し興奮して、頬を上気させているようだ。
キャワキャワは愕然としていた。
「わ、私が勝った……? あの完璧に計算した敗北ムーヴメントから……?」
「姉さん、やっぱりヤツは最弱だ!」
「まだよ……まだ、今からあの木の根っこで転べばいいだけよ!」
キャワキャワはムキになったように駆け出していく。
しかし、ナカナカはそれを抱き留める。
「もう、よしてくれ! 姉さん!」
ナカナカは姉の肩を掴む。
「何をいうの、ナカナカ!?」
「俺は、そもそも姉さんが転ぶ所なんて見たくねえんだ! 姉さんは、本当は木の根っこなんかで転んだりする人じゃねえ」
ナカナカはそう叫んだ。
「ぐ……いつも甘い子ね、ナカナカ!」
「もう無理だ! 姉さん、ここはひとまず、ウルウル様に報告だあ!」
「くうっ、覚えていなさい、ボン! このキャワキャワに敗北した美酒に酔いしれるのも今の内よ!」
キャワキャワはさっさと歩き初めていた。
「ほら、あんたまた靴紐がほどけかかってるじゃない、馬鹿なんだから!」
ナカナカの世話を焼きながら、山道を降りていくようだ。
「やりました……! ボンさんはこれで、最弱六公の一人までを退けたのです……!
私は分かっていましたよ……ボンさんより弱い人なんていないって・・!」
ククレアは嬉しそうだ。
「フっ、私もあんたを少しは認めてあげてもいいわ……! ここまでの弱さなら」
ボンは今までのことを計算し始めた。
「そうか……! 僕にも分かりました!」
ボンは何かを閃いた様子だ。
「どうしたんです?」
ククレアは首を傾げる。
「この逆世界は……駄目駄目な人の方が褒められて称えられるんだ! そして、勝負は全て負けた側が勝ちとされている……! そういうことだね!?」
今までの疑問の点と線が繋がった……!
「な……? ボンさん? あなた……」
「ボン、キミは……」
ククレアと城ケ崎は揃って、
「「遅すぎる! 気づくのが遅すぎます!」」
と言った。
「なんという鈍さと判断の遅さ……やはり、“臆者”とはあなたのこと……!」
ククレアの称えるその眼は、伝説の勇者を見守るような誉れに溢れている。
「そこを褒めるの!?」
「もちろんです! なんせ、逆世界ですから」
ククレアは自信たっぷりだ。
(けど……僕は本当は強くなりたい……できればククレアさんみたいに)
ボンは心中でそう思っていたのだった。
ボンは空を見上げた




