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キャワっ? 激しいククレア

嘘つきを許さないククレア

城ケ崎はそう言う。

「けれど、着ぐるみ魔王イイコイイコに負けねば、世界は発展していってしまいます……!」

 ククレアは続ける。

「そうだわ、ボンさん。ボンさんは今、どれくらいの弱さなんでしょうか……? スキルボールならそれも図れるはず……」

「一度、ボンくんの弱さを測ってみましょうね!」

 キャワーはそう言い、スキルボールを手にした。

「ボンくんはあまりの弱さだし、ひょっとするとお姉さんよりも弱いかもなあ」

 ボンは再びスキルボールを手に取った。

「さあスキルボール、ボンくんの今現在の“最弱ランキング”は?」

 キャワーはそう言った。

 すると

『―ボンの最弱ランキングは、現在7位。等級でもX級弱者で、極めて優秀です』

とスキルボールは言った。

 キャワーは、

「X級!? そんなまさか…!? それじゃ、イイコイイコ様の身も危うい……?

あの最弱のイイコイイコ様でさえ、このままでは勝ってしまうかも……?」

 恐怖におののきながら、キャワーはそう言った。

「あのキャワーさん? どうかしましたか? ボンさんが弱くて、どうして困るんですか?」

 ククレアは不審げにそう聞く。城ケ崎も、

「それに『イイコイイコ様』って……キャワーさん……?」

 不穏な視線を送る。

「く…」

 キャワーは狼狽えたように顔をしかめ、不意に笑顔になった。

「キャワッハハハハ! まんまと騙されたわね! ここまでのようね……! 着ぐるみ魔王に仇を成す者たちよ!」

 キャワーは急に身を翻えし、可愛らしく前回りで一回転して転がってから距離を取った。

「ああっ、キャワーさんが前回りを……? なんという可愛らしいフォーム!! 少し丸っこい体型だから、物凄い回転だわ!」

 ククレアは呻いていた。

 その間も、キャワキャワはぐるぐると前回りを続ける。

「ククレアさん、落ち着いて聞いてくれ! キャワーさんは、キャワーさんじゃない!」

 ボンはそう言った。

「ええ!? どういうこと!?」

「彼女の名は、恐らくはキャワキャワ! キャワーと偽名を使って、俺たちの中に潜入していたんだ!」

 ボンの台詞に、城ケ崎は

「そんなまさか!? けれど、確かに『キャワキャワ』という名前を、『キャワー』に変えれば、私たちはすぐに気づかない! これは盲点だったわ!」

「よく考えてみるんだ! キャワキャワの特徴、それは、恐竜の着ぐるみで親切なお姉さんである、とのこと……残念ながら、キャワーさんの特徴とソックリだ!」

「そんな、キャワーさんが!?」

 ククレアはショックを受けたように膝をついていた。

「恐るべし、キャワキャワ……! 流石は“潜入”の着ぐるみ魔物といったとこかしら?」

城ケ崎も、手をポキポキと鳴らして臨戦態勢に入っているようだ。

 キャワーは、さらにぐるぐると前回りを続けている。

 いや、かなり前回りをしている。

 ここは山道だ。それなりの坂を上ってきたばかりである。

 キャワーの前回りは止まる気配がない。

「あの、キャワキャワ? いくらなんでも前回りしすぎじゃ……」

 キャワキャワは、


「オッホホホ! 止まらない、とかそんなんじゃないわよ! 勘違いしないでよね! 止まらないってことではないの! か、勘違いしないでよ!」

「止まらないんでしょ……?」

 ボンは冷静にそう言う。

 坂道なので、かなり前転に勢いがついている。

「姉さん、ストップだ!」

 そこに、ナカナカが現れてどうにかキャワキャワを制した。

 恐竜の着ぐるみのキャワキャワは、ナカナカにぶつかってから「もう、あんたこそ大丈夫なの!?」とナカナカを心配してから、えっほえっほと坂道を駆け上がってきたようだ。

「姉さんは体型が丸いんだから、そうすぐに前回りをするなよ」

「私は丸くはないわ! ナカナカ、あんたは家に戻ってなさい! ああもう、すぐに靴紐がほどけてるんだから」

 キャワキャワ、ナカナカの靴紐を丁寧に結び直してやってからフウと一息ついてから、

「キャワッハハハ! まんまと私の変装に騙されていたようね!」

とビシリとボンたちに指を突きつけた。

「酷いです! よくも騙してくれましたね……! 私は、『素敵な指導教官だなあ』と思って、後でお手紙でも書こうと思ったのに!」

「キャワッハハハ! 騙される方が悪いのよ」

「というより、もう事実上の『運命の教官』で、ここからキャワーさんとの人生の共同作業で頑張っていこうとしていたのに!」

「キャワハっ……そこまで……?」

 キャワキャワは少し狼狽える。

「なんなら、この後で王宮に呼んでパジャマパーティーまでしようと思ってたのに、サイテーです! 人を騙すなんて、サイテーよ! 幻滅です!」

 ククレアは厳しく攻め立てる。


「ごめんなさいね……そこまで思ってくれていたなんて……」

 キャワキャワは胸が痛んでいる様子だ。

(噂通り、随分とデリケートな心の人のようだ……)

 ボンはそう考えていた。

「おい、よせよククレア!」

 ナカナカが慌てて仲裁に入る。

「キャワキャワ姉さんは、本当は凄く優しくて“潜入”みたいなのはほんとはガラじゃねえんだ! そこまで責めないでやってくれ!」

 ナカナカは慰めるが、

 キャワキャワはぽろぽろと涙をこぼしていた……

「ご、ごめんなさいね……私も仕事で潜入するたびに思うの……もうこんな仕事止めて、ナカナカと一緒に農家を継ごうかなって……人様を騙すなんて、よくない仕事だって分かってはいるけど……やっぱり、私お金が欲しいから…ナカナカに良い服を買ってあげたいし」

「姉さん、泣かないでくれ!」

 しかし、ククレアは

「悪いと思ったのであれば、すぐに辞めるべきです! それは盗人の理屈です!」

と容赦しない。

(ククレアさんは、思い込みがかなり激しいし、これはそうそう収拾がつかないぞ……)

 ボンは焦っていた。

「ねえククレア。そこまで責めなくても……キャワキャワも着ぐるみ魔王の仕事でやったことで……」

 城ケ崎までもが、泣き崩れるキャワキャワをかばおうとするが、

「騙すなんてサイテーです!」

とククレアは収まらないようだ。

「くうっ! ご、ごめんね……私ったら、なんてことを……!」

「姉さん、立ち直るんだ! ともかく、ボンを止めないと!」


「う……そうよね、グッスン……これも着ぐるみ魔王イイコイイコ様のためよね……!」

「そうだ、カムバック姉さん!」

「よし……!」

 ボンも、

「そう気にすることはありません。お互いに立場が違えば、行動も変わるんですから」と励ました。

「そ、そうよね……! ボンくんはいいこと言うわね!」

「姉さん、まずは一戦やってからだ!」

と、ナカナカ。

「そ、そうよね私も仕事でやっていることだし……」

 キャワキャワはどうにか気力を取り戻し、再び、

「キャワッハハハハ! 見事に引っかかったようね、ボンとそのお仲間さんたち! この“潜入”のキャワキャワにね!」

と言った。


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