お姉さんからの授業
「はーい、今日は雇われてきました。武術演習の教官、キャワーでえす! 今日は、お姉さんも、こんなに立派な生徒さんたちと遊べてワクワクしちゃうなー。はーい、挨拶が重要なので、もう一度―。ほらほら、男の子のボンくん」
「はい、いや…?」
ボンは驚いていた。
(名前がキャワー!?)
(しかも、着ぐるみを着て……)
(そんなまさか!?)
そんなバカげたほど、単純な展開があるはずがない!
「もう一度いくよー、こーんにーちはー!」
ボンは恥ずかしそうに「こんにちはー」と言った。
「いいね! さあ、今日はなんと、お姉さんと一緒に武術、山岳、そしてスキルアップまで学んでいきましょうねー!」
「へーえ、キャワーさん。スキルアップまでやってくれるの? 助かるわあ、私も自分の『弓矢の弦のほつれ』のスキルをそろそろアップさせたかったから」
城ケ崎はそう言う。
「もっちろん、お姉さんに任せれば、どんどん弱くなれるわ! けど、強さや弱さよりも重要なこと……それは、みんながお父さんとお母さんの言う事を聞くいい子な事だぞお?」
キャワーは、指でボンたちを指しながら、にんまりと笑う。
「はいっ、キャワーさん! 本当に素敵な教官で嬉しいです!」
ククレアは喜んでいるようだ。
「いやククレアさん、城ケ崎さん、この人が間違いなく着ぐるみ魔王軍の……」
ボンはたどたどしく言うが、
「ほら、ボン。何を言ってるの?」
城ケ崎もククレアもキャワーを信用しきっているようだ。
「さあてと、その前にボンくん。君はまだ『スキル』を持ってないようねえ。早速、君に固有スキルをプレゼントしましょう」
「えっ、僕の固有スキル…?」
「ええ、さあこの『スキルボール』を持って」
スキルって、かなり重要なんじゃないのか?
それも、固有スキル……
キャワーは、青白く光り輝くボールを取り出し、ボンに握らせた。
「これで、君の固有のスキルを授かることができるわ! さあ、念じて! 君のスキルを!」
僕のスキル?
「固有スキルとは、格個人だけが天から授かったスキルのこと……! 君の一生を左右するような重要なものよ! さあ、念じて!」
僕だけの固有スキル。そんなものを授かる事ができるのか……
『ボン、十六歳。転生者。これより、逆世界における、あなたのスキルを決定します』
スキルボールは唐突にしゃべりだした。
「うわっ?」
『離さないで、ボン。さあ、逆世界を生き抜くためのあなたの固有スキル……』
スキルボールは語り続ける。
『決まったわ』
スキルボールからの光のオーラで体を包み込まれる!
『決定、まずあなたの【四十肩】のスキルが【四十肩・強】へと進化しました』
えええ?
四十肩はスキルなの……?
そして、五十肩への変化って……
「スゴイわ! ボンさん……ただでさえ、腕が上がらないあなたが、さらに腕が上がらなくなってしまい、なんて駄目駄目なの!?」
ククレアは驚いている。
「くうっ、思ったよりも強力な駄目スキルね……」
キャワーも呻いているようだ。
「えっ、キャワーさん、どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないわ! スゴイじゃない、ボンくん! 【五十肩】なんて、そうそう出ないわよ!」
「はあ…」
スキルボールは、
『さらに、【めまい・強】の固有スキルを得ました。あなたは、重要な戦いの時、非常に強いめまいに悩まされることでしょう』
こんなの、外れスキルばっかりじゃないか!?
キャワーは、
「んな!? 固有スキルが二つ…? しかも、両方とんでもないダメさ加減……?」
キャワーはさらに驚いているようだ。
「へーえ、やっぱり伝説の“臆者”候補とまで言われるだけはあるわね。いきなり【五十肩】に【めまい・強】だなんて、これじゃあ普通のゴブリンにもすぐに負けてしまう程の弱さ!」
城ケ崎はどこか戦慄を覚えているようだ。
「フン! 認めてあげるわ、あなたを“億者”の候補としてね……!」
「いやあ、こんなに外れスキルじゃあどうしようもないよ……」
やれやれ、折角異世界に来たというのに、僕はやっぱり駄目人間のままなのか?
『さらに、ボン。あなたには、【駄目スキル覚醒】のスキル与えられます』
スキルボールが言う。
「まだ、あるの!?」
キャワーは驚愕していた。
「そんな、スキルボールさん! この壮絶ダメなボンさんに、これ以上どんなスキルを?」
ククレアは狼狽えながら聞くが、
『簡単に言うと、ボンは次々に“駄目スキル”が覚醒していくということです。それに応じて、ステータスなども下がっていきます。まず、ボンのステータスを見ると、
レベル10
HP 20 MP 15 力 11 すばやさ 12 わざ 8 メンタル 7
という風にダメな感じに整っていますが、スキルアップするたびに、どんどんと下がっていくし、さらなる固有スキルを受け取ることも可能です』
トホホ、こんなの完全に大外れじゃないか……
けど、何もやってないのになんでレベル10なんだ……?
しかし、ククレアは相変わらず“伝説の勇者”を見るような眼でこっちを見て、
「凄いです! 来たばかりでいきなりレベル10!! 私なんて赤ん坊の頃からレベル999で、最近ようやくレベル995まで下がった所だというのに……! 最弱ランキングは当然ずっと圏外よ!」
「ようやくレベル995まで下がった……?」
「やはり、ボンさんは“臆者”! ここまでの外れスキルを引き当てるとは……! 私ももっと頑張ります!」
ククレアは何故かそう言う。
「ここまでのダメっぷりは見たこともない! 私のライバルとして認めてあげましょう!」
城ケ崎もそう言う。
キャワーは少し青ざめた表情で、
「コホン、いやボンくんのスキルは予想以上だったわね……! けれど、ここからがみんなの実習よ! これから、とんでもなく弱いモンスターが出てくるわよお?」
キャワーがそう言う。
「みんなも知ってるわよね? 魔王イイコイイコは、“Z級弱者”とされる世界最弱の着ぐるみ魔王……」
「ええ私にも信じられないわ。Z級弱者だなんて、そこまでの弱さがあるだなんて。
私も苦労に苦労を重ねて、ようやくのG級弱者になれたばかりだというのに……」
城ケ崎は戦慄を覚えたように言った。
「今の世の中に、“Z弱者”はイイコイイコただ一人……そこまでの弱者に負けなければいけない! ほぼ不可能だわ!」
キャワキャワからの親切授業を受けるボン




